差異 差違 違い 使い分け 意味

「差異」と「差違」は、どちらも「さい」と読める漢字です。

両者は同じ意味の語として扱ってよいのでしょうか?それとも使い分けを要する語なのでしょうか?

今回は、「差異」と「差違」の違いや使い分けを解説しました。

差異・差違の違い

 

最初に、「さい」の意味を辞書で引いてみます。

【差異/差違(さい)】

他のものと異なる点。ものとものの違い。差。「両者の能力になんら―はない」

出典:デジタル大辞泉(小学館)

「差異」と「差違」は、上記のように辞書では統一して表記されています。

意味としては「他のものと異なる点・物と物の違い」を表したものです。一言で「」と言い換えても構いません。

例えば、2個のりんごを並べた時に、そのりんごの大きさに差があれば「差異(差違)がある」と言います。

逆に、2個のりんごに何ら異なる点がなければ「差異(差違)はない」と言います。

では、「差異」と「差違」は、いわゆる「同語異表記」と呼ばれる関係で、単なる表記のゆれとみてよいのでしょうか?

実は「さい」の漢字の表記に関しては、国語辞典や漢和辞典によって一定の傾向があります。

そのため、過去の辞典の表記から比較をしていきたいと思います。

国語辞典での両者の比較

 

まず、過去における86種の国語辞典を見てみると、「差異」と「差違」については次のような統計が出ています。

差異」と「差違」も共に不採録のもの・・・・・・3種

差異」と「差違」を別項で採録しているもの・・・29種

差異・差違」を併記しているもの・・・・・・・・30種

差異」だけのもの・・・・・・・・・・・・・・・21種

差違」だけのもの・・・・・・・・・・・・・・・3種

【国語辞典 計86種より】

見て分かるように、最も多いのが「差異・差違」を併記しているもので全86種の内30種です。

次に多いのが「差異」と「差違」を別項で採録しているものですが、これは語釈が同じものと解釈していると考えて問題ありません。

また、「差異」だけしか表記していないものが21種もあります。対して、「差違」だけのものは3種しかありません。

漢和辞典での両者の比較

 

次に、「漢和辞典」での表記も確認してみます。

「漢和辞典」では、全22種の種類において次のような統計結果が出ています。

差異」と「差違」も共に不採録のもの・・・・・・2種

差異」と「差違」を別項で採録しているもの・・・15種

(うち、「差違」で「差異に同じ。」などとするもの・・・4種)

差異・差違」を併記しているもの・・・・・・・・2種

差異」だけのもの・・・・・・・・・・・・・・・3種

差違」だけのもの・・・・・・・・・・・・・・・0種

【漢和辞典 計22種より】

「漢和辞典」の場合は、「差異・差違」を別項で採録しているものが計22種のうち15種と多いです。

次に多いのが「差異」だけのものですが、全体に対する数としては少なく3種となっています。そして、「差違」だけのものは1つもありません。

語釈を異にするものでも、そのほとんどは「差異」に対して「(他のものと)ことなること」とし、「差違」に対しては「(他のものと)違うこと」などとしているものがほとんどです。

すなわち、両者を比較して明確に異なった語釈を施しているものは存在しないということです。

これは漢和辞典だけではなく国語辞典の場合も同様の傾向にあります。

なお、「差異」と「差違」を併記しているものは国語辞典だと30種と紹介しましたが、戦前のものは1種しかなく、29種は戦後のものです。そして、漢和辞典の2種は両者とも近年発行のものです。

以上の事から考えますと、過去の「国語辞典」及び「漢和辞典」においては「差異・差違」を併記するかもしくは「差異」が優先的に表記されているということが分かるかと思われます。

新聞・報道界での使い分け

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新聞やテレビなどの報道業界では、一般に「差異」を採用して使うことが多いです。

これは毎日新聞、朝日新聞、産経新聞、読売新聞、NHKなどの各報道機関のルールに従ったものです。

各報道機関では、「差違」を使わずに「差異」に統一して用いる傾向にあります。

これは文字を使う側の混乱を避けるためと、漢字を統一することにより読者に簡潔に情報を与えるためだと考えられます。

唯一の例外として、『大阪毎日新聞スタイルブック』では「差違」の方を採用していますが、他の報道機関ではすべて「差異」を採用しています。

したがって、一般的に使う際にも「さい」の場合は「差異」とするのが適切という結論になります。

もちろん、「差違」の方を使っても必ずしも間違いというわけではありません。

冒頭でも紹介したように、現在の多くの辞書では【差異/差違】と両者を統一して表記しています。

そのため、「差違」という漢字を排除・否定することはできないのです。

しかしながら、一般にこのような表記の仕方の場合、辞書においては「左側(先頭)の文字(この場合だと差異)の方を優先的に使う」という暗黙のルールがあります。

よって、「差異」と「差違」のどちらを使うか?と問われればやはり「差異」の方を使うのが無難ということになります。

まとめ

 

以上、本記事のまとめとなります。

差異・差違」=他のものと異なる点・物と物の違い・差

違い」=意味自体に違いはほぼない。「差異」は「ことなること」なのに対し、「差違」は「違うこと」。

使い分け」=原則として「差異」を使う。(辞典及び報道機関では「差異」が主に採用されているため。)

「差違」の方を使っても誤りではありませんが、一般的には「差異」の方を使うことが多いです。もしもどちらを使うか迷った場合は、「差異」の方を使うようにしてください。