捨象 意味 わかりやすく 簡単に 対義語 反対語

「捨象」という言葉は、主に現代文の重要単語として登場します。ただ、どのような意味を持つのか分かりにくいと感じる人も多いと思われます。

そこで、今回は「捨象」の意味を具体例を交えてなるべく簡単に分かりやすく解説しました。後半では「類義語」や「対義語」「英語訳」などにも触れています。

捨象の意味・読み方

 

まずは、基本的な意味と読み方からです。

【捨象(しゃしょう)】

事物または表象からある要素・側面・性質を抽象するとき、他の要素・側面・性質を度外視すること。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

概念を抽象する際に、抽出された諸表象以外の表象を考察の対象から切り捨てること。

出典:三省堂 大辞林

上記、2つの辞書から引用しました。

捨象」は「しゃしょう」と読みます。「しゃぞう」とは読まないので注意してください。

意味は「概念からある要素を抽象するとき、他の要素を切り捨てること」です。

「概念(がいねん)」とは「大まかな意味や内容」のこと、そして、「抽象(ちゅうしょう)」とは「共通要素を見つけてまとめる(一般化する)こと」を意味します。

つまり、「捨象」とは「大まかな意味のある言葉から共通要素を見つけてまとめる時に、切り捨てること」を表すのです。

分かりにくいと感じる人は、今の段階では「切り捨てること」と同じ意味だと考えて問題ありません。

では、これらの説明を踏まえた上で「捨象」の意味をさらに詳しく解説したいと思います。

捨象を図で簡単に

 

「捨象」という言葉は、「抽象」とセットで覚えると分かりやすいです。

次の図は、上に行けば行くほど抽象化(ちゅうしょうか)されており、下に行けば行くほど具体化(ぐたいか)されていると言えます。

抽象的 意味 わかりやすく 対義語 例文

「抽象化」とは「具体的な姿や形が取り除かれている状態」、一方で、「具体化」とは「目に見えるような具体的な姿や形がある状態」を意味します。

右下の犬を例にしてみましょう。Aさんはポチを、Bさんは小春を、Cさんはタロウを飼っていました。

Aさんにとって、「ポチ」は「小さくて」「人懐っこくて」「食いしん坊」という具体的な性質を持った存在です。

ところが、そんな「ポチ」を「犬」と呼んだとき、「ポチ」を抽象化したことになります。なぜなら、隣に住んでいる「小春」も「タロウ」も同じ「犬」と呼べるからです。

このように、同じ性質を持つもの同士の共通点(この場合は犬)を抜き出して、一つの意味としてまとめることを「抽象」と呼ぶのです。

ここで大事なポイントは、抽象するときは必ず他の性質は切り捨てられるということです。

先ほどの図だと、「ポチ」を「犬」と呼んだ瞬間に、「小さくて」「人懐っこくて」「食いしん坊」といった性質は切り捨てられます。この「ポチの性質を切り捨てること」を「捨象」と呼ぶのです。

つまり、「捨象」というのは「具体的な形や特徴を切り捨てること」とも言えるわけです。

「捨象」というのは、「抽象」と同時に行われます。理由は簡単で、共通要素を抜き出すときは必ずそれ以外の性質を一緒に切り捨てないと、意味としてまとめることができないからです。

捨象の類義語

捨象 抽象  類義語 言い換え 同義語

「捨象」は、次のような類義語で言い換えることができます。

  • 切り捨てる
  • 切り抜く
  • 取り除く
  • 排除する
  • 選別する
  • 概括化
  • 普遍化
  • 抽象化

基本的な言葉のイメージとしては、「切り捨てる・排除する」といった意味になります。そこから派生して、「概括化」「普遍化」なども広い意味で類義語と言えるでしょう。

「概括化」とは「大まかな意味としてまとめること」、そして「普遍化」とは「特殊なものを捨てて、共通なものを取り出すこと」を指します。

どちらも意味を取り出してまとめることですが、「まとめること」=「捨てること」でもあります。そのため、類義語と呼べるのです。

なお、「捨象」と全く同じ意味の言葉、すなわち「同義語」と呼べる言葉は残念ながらありません。

捨象の対義語

 

逆に、「捨象」の「対義語」としては次のような言葉が挙げられます。

具体化」=物事に具体的な姿や形を持たせること。

対象化」=抽象的な概念を物理的なものとして表すこと。

上記2つの言葉は、先ほどの図で言うと、下へ下へと行く行為を表しています。すなわち、言葉に対して具体的な姿や形がある状態にさせるということです。

一方で、「捨象」や「抽象」というのは、逆に上へ上へと行く行為を表しています。上へ行く行為なので、「具体化」や「対象化」は「捨象」の反対語となるわけです。

捨象の英語訳

 

「捨象」は、英語だと次のように言います。

abstraction(捨象)」

「abstraction」には「抽象・抽象化」などの訳もあります。

英語では、「捨象」と「抽象」は同じ英単語として使われます。両者は結局は同じことを裏側から言っているだけなので、英語圏では特に意識して使い分けがされていません。

例文だと、以下のような言い方となります。

It is important to raise the abstraction level.(捨象するレベルを上げることが重要だ。)

He analyzed the abstraction mechanism.(彼は捨象するメカニズムを解析した。)

その他の単語では、「elimination(除去)」「delete(削除)」などを使うことも可能です。「捨象」を簡潔に言うと「除去」や「削除」を指すため、このような英単語も使うことができます。

捨象の使い方・例文

 

最後に、「捨象」の使い方を実際の例文で確認しておきましょう。

  1. ニャン太の「黒い」「爪が長い」「大人しい」という性質を捨象すると、「猫」ということになる。
  2. 犬・猫・牛から共通事項を抽象し、それ以外を捨象することにより、「ほ乳類」という一般化した言葉となる。
  3. 捨象抽象を別の視点から見た言葉である。取り出された性質に注目すれば抽象、捨てられた性質に注目すれば捨象となる。
  4. 物理学者は、実験結果の中から一つを抽象し、他を捨象することにより普遍的な法則を発見するものだ。
  5. 不必要な部分が捨象されることにより、今回の問題の本質は非常に分かりやすくなったと言えるだろう。
  6. 青森産のりんご、酸っぱいりんご、青いりんご、虫にかじられたりんごなど、世の中には多種多様のりんごがあるが、それらの特徴の全てを捨象するとおよそ「りんご」と呼ばれるものになる。

 

上記のように、「捨象」という言葉は「抽象」とセットで使われることが多いです。

もちろん、単体で使われることもありますが、同じ文章内のテーマとしては「捨象」が出てくると、ほとんどの確率で「抽象」も使われると考えていいです。

したがって、両者を混同しないようにどちらの意味も正確に理解しておく必要があります。その際には、「概念」や「観念」の意味も合わせて覚えてくと読解が楽になるでしょう。

まとめ

 

以上、本記事のまとめとなります。

捨象」=概念からある要素を抽象するとき、他の要素を切り捨てること。

類義語」=「切り捨てる・排除する・概括化・普遍化・抽象化」など。

対義語」=「具体化・対象化」など。

英語訳」=「abstraction」「elimination」「delete」

「捨象」という言葉自体は、それほど難しい内容を表しているわけではありません。ポイントは文字だけでなく図解でイメージしておくこと、そして「抽象」も合わせて覚えておくことだと言えるでしょう。