政治や経済のニュースなどで、「弾力的」という言葉をよく聞きます。
「弾力的な運用をする」「弾力的に対応する」
ただ、具体的にどのような意味を持つのかが分かりにくいです。そこで今回は、「弾力的」の意味や使い方・類語・反対語などを詳しく解説しました。
弾力的の意味
まず、「弾力的」を辞書で引くと次のように書かれています。
【弾力的(だんりょくてき)】
⇒状況に応じて柔軟に対応するさま。
出典:三省堂 大辞林
「弾力的」とは「その時の状況に応じて、柔軟に対応するさま」という意味です。
よく使われるのが、次のような言い方です。
日銀は今月の方針として、弾力的な運営をすることを発表した。
上記の一文は、経済新聞などでよく使われる文言です。
日銀というのは日本の中央銀行ですから、日々、経済の動向をチェックしながら行動しています。
- 今月は景気が良さそうなので、国債の購入額を減らそう。
- 逆に来月は景気が悪そうなので、国債の購入額を増やそう。
つまり、その時の景気の状況に応じてお金の運用方針を変えているのです。
「弾力的」というのはこのように、事情や状況を考えながら柔軟に行動する様子を表す言葉ということです。
「弾」という字は、「弾力性のあるボール」「弾力性のある食べ物」などの表現があるように、「自由自在に姿・形が変化する」という意味があります。
したがって、その場の状況により自由自在に対応するさまを「弾力的」と言うのです。
弾力的の使い方
「弾力的」という言葉は、経済や金融以外の場面でもよく使われています。
以下に代表的な使い方を3つ挙げました。
弾力的な対応
「弾力的な対応」とは簡単に言うと「柔軟な対応」という意味です。「臨機応変」と言い換えてもよいでしょう。
この場合は、日常生活からビジネスまで様々な場面で使うことができます。
例えば、仕事でミスをしないようにしたり、人間関係でトラブルが起こらないようにしたりする場面で、「弾力的に対応する」といった言い方をします。
弾力的な転入
「弾力的な転入」とは「柔軟に転入をすること」だと考えればよいです。この言い方は、東日本大震災が起こった当時よく使われました。
被災地からの生徒が他県の学校に転入する際、学校側が「柔軟に生徒を受け入れる」という意味でこの表現を使ったわけです。
通常の校則だと、「一定数以上の転入は、受け入れない」というルールがあります。しかし、そういった形式的なことは排除して、柔軟に転入手続きを行ったということです。
弾力的労働時間制度
「弾力的労働時間制度」とは「労働時間を自由自在に変える制度」のことです。
通常の労働時間というのは、厚生労働省により、「1日8時間・週40時間まで」と決められています。
しかし、そうではなく、各企業によって「柔軟に」そして「自在に」労働時間を変えていこうという制度のことです。
労働時間を固定的に決めるのではなく、柔軟に変更していく制度なので、「弾力的労働時間制度」と言います。
弾力的の類義語・対義語
「弾力的」の「類義語」は以下の通りです。
- 状況次第で
- 条件次第で
- 場合によっては
- 場面によっては
- ケースバイケースで
- フレキシブルな
- その場に応じて
- 時と場合に応じて
- 柔軟に
- 臨機応変に
- 変化しながら
どれも「状況次第で対応を変えるさま」を表した言葉となります。
中でも、「柔軟に」と「臨機応変に」はほぼ同じ意味の言葉だと言えます。したがって、この2つは「弾力的」の「同義語」と言ってもいいでしょう。
逆に、「対義語」としては以下のような言葉が挙げられます。
- 非弾力的
- 融通の利かない
- 頭の固い
- 凝り固まった
- 固定的な
- 頑迷な
- 生真面目な
- 杓子定規の
- 機転が利かない
- 柔軟性に欠ける
反対語は、「その場の状況に全く合わせられない様子」を表した言葉となります。
どれも非常にネガティブな要素を含んだ言葉ですが、この中では「融通の利かない」が使いやすいです。
「融通の利かない」は、日常会話でもよく使われる表現です。一方で、形式的な文書・堅い文書などでは、「非弾力的」を使うことが多いです。
弾力的の英語訳
「弾力的」は、英語だと次のような言い方があります。
「flexible(柔軟性のある・融通の利く)」
「pliant(柔軟な・やわらかい)」
「elastic(融通性のある・弾力のある)」
「pliable(しなやかな・融通の利く)」
4つとも「柔軟性」を表した単語ですが、この中では「flexible」が一番使いやすいと言えるでしょう。
例文だと、以下のような言い方です。
She is a flexible character.(彼女は融通の利く性格である。)
His response was very flexible.(彼の対応はとても柔軟性があった。)
念のため他の単語も解説しておくと、「pliant」は木や枝などの物質に使うことが多いです。また、「elastic」は「ゴム」などの伸縮性のあるものに使います。
最後の「pliable」は物質だけでなく人に対しても使えますが、少し堅いニュアンスがあるのでできれば口語では避けた方が無難です。
弾力的の例文
最後に、「弾力的」を使った具体的な例文を紹介しておきます。
- 政府は今後の首脳会談に向けて、弾力的対応を行った。
- 日銀の黒田総裁は、今後のETF購入について弾力的な運用を行うと明言した。
- 今後は需要と供給を見ながら、弾力的に食品の価格を上げていくつもりです。
- 来年の経済指標だが、グラフを見ると弾力的な需要曲線となりそうだ。
- 特許庁によると、今後は弾力的に情報を追加していく予定です。
- 保育の現場では、現在、弾力的運用が行われているようだ。
「弾力的」という言葉は、基本的に政治や経済に対して使われます。特に、経済に対して使うことが多いと言えます。
「経済」は、言ってみれば生き物と同じです。毎日目まぐるしく動く情勢の中で、政府や日銀はその都度状況に応じて政策を決めています。
もしもそんな場合に、頭が固くて融通性の利かない政策だと国民から批判を受けることになってしまいます。そのため、「柔軟に」「臨機応変に」という意味で「弾力的」を使っているわけです。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「弾力的に」=その時の状況に応じて、柔軟に対応する様子。
「類義語」=「柔軟に・臨機応変に・状況に応じて・変化しながら」など。
「対義語」=「非弾力的・柔軟性がない・融通の利かない・機転の利かない」など。
「英語訳」=「flexible」「pliant」「elastic」「pliable」
「弾力的」という言葉は、普段はあまり使わないかもしれません。しかし、社会人になればよく目にする言葉なので、この機会にぜひ使い方を覚えておきましょう。