『贅沢を取り戻す』は、國分功一郎による文章です。教科書・現代の国語にも収録されています。
ただ、本文を読むとその内容が分かりにくい部分もあります。そこで今回は、『贅沢を取り戻す』のあらすじや要約、語句の意味などを解説しました。
『贅沢を取り戻す』のあらすじ
本文は、内容により5つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。
①贅沢は不必要なものに出費することと関わっているため、しばしば非難される。だが、必要なものが必要な分しかないのはあやうい状態である。必要を超えた贅沢が許されてこそ、人は豊かさを感じる。必要を超えてモノを受け取る贅沢つまり浪費は、満足をもたらし、どこかでストップする。
②ところが、消費はストップしない。消費はモノではなく、記号や観念を対象にしているからだ。記号や観念の受け取りには限界がない。だから消費は終わらない。
③消費と浪費の違いは明白だ。浪費は目の前にあるモノを受け取るが、消費はモノに付与された意味・観念を受け取る。消費者は満足を求めて消費するが、意味や観念は満足をもたらさないので、更に消費する。こうして、消費と不満足との悪循環が生まれる。消費社会の問題点は贅沢ではなく、むしろ贅沢が奪われることである。必要なのは、贅沢を取り戻すことだ。
④贅沢を取り戻すには、モノを享受し、楽しむことができなければならない。楽しむという能力は自然に身につくことではなく、教育による訓練の結果、獲得される能力である。そうしたさまざまな楽しむための訓練は、日常的に行われている。
⑤だが、消費社会はモノを楽しむ浪費家をつくるための訓練の機会を奪っている。そのため、楽しむという行為には革命的な意義がある。楽しむための訓練を積むことで、消費と不満足の悪循環のサイクルから脱することができ、今の消費社会が変わる可能性があるのだ。
『贅沢を取り戻す』の要約&本文解説
本文を理解する上でまず、「浪費」と「消費」の違いを理解することが重要となります。
「浪費」とは、目の前にあるモノを受け取ることなのに対し、「消費」は、モノに付与された意味・観念を受け取ることだと筆者は定義しています。
例えば、腹一杯、食べたいものを食べることは「浪費」です。一方で、”新しくモデルチェンジした”という意味や記号を持つ携帯電話を買うことは「消費」です。
そして筆者は、「消費」ではなく「浪費」こそが豊かさであり、人類には必要であると述べています。
なぜなら、「浪費」は、満足をもたらしてどこかでストップするのに対し、「消費」には限界や満足がないからです。
「消費」による意味や観念は、満足をもたらさないので、さらに消費することになります。
この繰り返しにより、消費と不満足の悪循環が生じ、現代ではむしろ贅沢が奪われていると筆者は問題視しているのです。
ではどうすればよいのか?という話ですが、それについては、第四段落以降に書かれています。
筆者は、奪われた贅沢を取り戻すためには、モノを享受し、楽しむことのできる訓練が必要だと述べています。
私たちが楽しむ訓練を積むことにより、今の消費社会を革命的に変える可能性があると筆者は考えているのです。
『贅沢を取り戻す』の意味調べノート
【贅沢(ぜいたく)】⇒必要な程度をこえて、金銭や物などを使うこと。
【豪勢(ごうせい)】⇒この上なくぜいたくで立派なさま。
【しばしば】⇒頻繁に。しきりに。
【事足りる(ことたりる)】⇒十分である。用が足りる。
【十二分(じゅうにぶん)】⇒十分すぎるほどたっぷりとある。「十分」の強調表現。
【崩す(くずす)】⇒整った状態を乱す。保たれていたものがそうではなくなる。
【アクシデント】⇒思いがけない出来事。事故。災難。
【排する(はいする)】⇒邪魔なものやマイナス要素を退ける。
【余分(よぶん)】⇒必要な分より多いこと。
【浪費(ろうひ)】⇒お金や時間、物などを無駄に費やすこと。
【他(ほか)ならない】⇒まさに~である。
【享受(きょうじゅ)】⇒受け入れて、味わい楽しむこと。
【消費(しょうひ)】⇒欲しいものを得るために、お金やサービス、時間などを使って減らすこと。
【記号(きごう)】⇒ある意味や内容を指し示すもの。
【観念(かんねん)】⇒ある物事についての考えや意識。
【腹八分(はらはちぶ)】⇒満腹の少し手前で食べるのをやめること。
【宣伝(せんでん)】⇒そのものやそのものの良さを、大衆に広く伝え知らせること。
【殺到(さっとう)】⇒多くの人や物が一斉に押し寄せること。
【延々と(えんえんと)】⇒非常に長く続くさま。いつまでも。
【モデルチェンジ】⇒製品のデザインや性能、型などを変えること。
【明白(めいはく)】⇒明らかではっきりしていること。
【悪循環(あくじゅんかん)】⇒二つの物事が影響し合って、どんどん悪い状態になっていくこと。
【投棄(とうき)】⇒不要なものとして捨てること。
【莫大(ばくだい)】⇒程度や数量がきわめて大きいさま。
【糾弾(きゅうだん)】⇒罪や責任を問いただし、非難すること。
【とめどない】⇒とまることなく、次から次へと現れ出る。
【渦(うず)】⇒物事がめまぐるしく動いて入り乱れている状態。
【念頭に置く(ねんとうにおく)】⇒常に心にかける。いつも忘れないでいる。
【素養(そよう)】⇒日頃の修練によって身についた、教養や技術。
【繊細(せんさい)】⇒きめが細かく優美なさま。
【焦燥感(しょうそうかん)】⇒あせっていらだつ気持ち。
【苛む(さいなむ)】⇒苦しめ、悩ます。
【革命的(かくめいてき)】⇒それまでの状態を全く違うものに変えるさま。
【秘める(ひめる)】⇒内部にもつ。
『贅沢を取り戻す』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①ゼイタクな生活をする。
②自由をキョウジュする。
③注文がサットウする。
④バクダイな財産をもつ。
⑤センサイな味を楽しむ。
まとめ
今回は『贅沢を取り戻す』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。