『私時代のデモクラシー』は、教科書・現代文に取り上げられている文章です。そのため、定期テストなどにも出題されています。
ただ、本文を読むと筆者の主張が伝わりにくいと感じる人も多いと思われます。そこで今回は、『私時代のデモクラシー』のあらすじや要約、テスト問題などをわかりやすく解説しました。
『私時代のデモクラシー』のあらすじ
本文は、行空きにより3つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。
①現代の洗練された市場では、「自分らしさ」が商品化されている。消費者の「自分らしさ」意識を満足させるための商品が、次から次へと生み出されている。だが、<私>が<私>であること、<私>らしくあることは、現代において、とても魅力のあることであると同時に、少々つらいことなのかもしれない。
②「近代」は、伝統の拘束や人間関係から個人を解放すること、宗教から人間を解放すること、という目標を達成した。そのプロジェクトが成功したからこそ、その効果が自分自身に跳ね返り、「近代」そのものが新たな段階に達するようになった。
③いまや、社会関係は一人ひとりの<私>が自覚的につくっていかなければならなくなった。人々がものごとを決める際は、絶対的な価値基準やモデルとすべき人やものはなくなり、すべてを<私>が決めなければならない。<私>が時代の焦点となっていることが、独特の難しさを生み出しているのは間違いない。いまの時代において、<私たち>を形成することは、ますます難しくなっているのだ。
『私時代のデモクラシー』の要約&本文解説
私たちが住む現代は、個人に焦点が当てられています。近代に入り、人々は伝統や家柄、宗教といったものから解放され、一人ひとりが<私>というものを自ら作っていくようになりました。
その結果、現代では一人ひとりが強い自意識やアイデンティティを持つのが当たり前の時代になったのです。
ところが、このような<私>が時代の焦点となっていることは、独特の難しさを生み出しているのだと筆者は主張します。
例えば、デモクラシーについての問題です。デモクラシーとは、日本語で「民主主義」という意味ですが、本文中では、<私>ではなく<私たち>の力によって生み出していくものだと説明されています。
例えば、環境問題や格差の問題、年金の問題などは<私>一人では解決することができません。多くの当事者が関わり、個人ではなく多数の力を合わせて解決する必要があります。
このような、<私>ではなく<私たち>を形成して、ともに意志をつくりあげ、その力によって生み出していく必要のあるものは、<私>が焦点になることで、実現することが難しくなっているのが現状です。
個人を重視する近代的な考え方、民主主義的な考え方は、今の私たちにとってはごく当たり前のものです。しかし、<私>個人が焦点となっている今の時代では、逆に<私たち>を形成することが難しくなっているということです。
『私時代のデモクラシー』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①商品をセンデンする。
②メンミツな調査。
③時間にコウソクされる。
④コンインを解消する。
⑤コドクに耐える。
⑥宗教からカイホウされる。
⑦ミリョクのある人柄。
次の内、本文の内容を表したものとして適切でないものを選びなさい。
(ア)「近代」の目標は、これまで人々を縛り付けてきた伝統の拘束や人間関係から個人を解放すること、そして宗教から個人を解放することであった。
(イ)伝統的な社会における「聖なるもの」は、人々の畏れるべき対象であると同時に、人々にあるべき姿、進むべき道を示してくれるものであった。
(ウ)いまや、人は自分が他人と同じように扱われるだけでは納得できず、自分が他人と同程度に特別な存在として扱われることを求めるようになった。
(エ)<私たち>とは誰のことなのかがはっきりしている現代においては、問題ごとにその当事者となる<私たち>の意志で解決していく必要がある。
まとめ
以上、今回は『私時代のデモクラシー』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。なお、本文中の重要語句については以下の記事でまとめています。