通知 通達 違い 通告 告示 省庁は

特定の相手へ知らせることを、「通知」や「通達」あるいは「通告」などと言います。

これらの言葉は厚生労働省や文部科学省など、国からの知らせを表す際にも使われています。ただ、どれも似たような意味をしているため使い分けが難しいです。

そこで本記事では、「通知・通達・通告」の違いをわかりやすく解説しました。

通知の意味を詳しく

 

まずは、「通知」の意味からです。

【通知(つうち)】

告げ知らせること。また、その知らせ。「総会の日時を通知する」

出典:デジタル大辞泉(小学館)

通知」は、辞書だと「告げ知らせること」と記述されています。

「告げ知らせる」とは「伝えて分からせる・広く触れて知らせる」などの意味です。主に、公の立場からの知らせを指すことが多いです。

【例】

  • 合格の通知が届く
  • クラス会の通知が来た。

ただ、場合によっては個人が知らせるようなときにも用いられます。

  • メールで明日の事項を通知する。
  • 退院が決まったらご通知ください。

「通知」は、上から下へ知らせるというよりは、「特定の誰かへ知らせる」もしくは「不特定多数へ知らせる」という意味が強い言葉です。

この言葉自体には、命令や指示などの強制力はありません。あくまで、「相手へ知らせること・分からせること」が目的の言葉となります。

通達の意味を詳しく

 

次に、「通達」の意味です。

【通達(つうたつ)】

告げ知らせること。特に、行政官庁がその所掌事務について、所管の機関や職員に文書で通知すること。また、その文書。古くは通牒 (つうちょう)。「通達を出す」「厚生労働省通達」

出典:デジタル大辞泉(小学館)

通達」とは「上の機関が下の機関へ告げ知らせること」を意味します。

特に、行政官庁が文書によって所轄の機関に対して指示や命令を出す際に使われます。

例えば、文部科学省から文化庁への指示、県庁から市役所への命令などといったものが「通達」に当てはまります。

その他、「人事通達」「社長通達」などのように、民間の企業が下の部署へ指示を出す際にも使われます。

いずれにせよ、共通しているのは、「上から下へ指示がいく」ということです。「通達」は、上の組織が下の組織に対して「〇〇をしなさい」と指示を出すことです。

したがって、当然のことですが、下の組織はその指示に従わなければいけません。先ほど紹介した「通知」よりも強制力のある言葉が「通達」ということになります。

通告の意味を詳しく

 

続いて、「通告」の意味です。

【通告(つうこく)】

相手方に決定事項や意向などを告げ知らせること。特に、文書などで正式に告げ知らせること。「解雇を通告する」「強制執行を通告する」

出典:デジタル大辞泉(小学館)

通告」とは「相手方に決定事項や意向などを告げ知らせること」を意味します。

主に特定の相手に対して公的な文書で決定事項を知らせるようなときに使われます。例えば、「戦力外通告」「解雇通告」などの用例です。

「戦力外通告」は、プロ野球選手などが球団から戦力外であることを決定事項として告げられることを意味します。

また、「解雇通告」も会社側が何か不祥事を起こした社員に対して「解雇すること」を決定事項として知らせることを意味します。

このように、あらかじめ決められた事柄を特定の誰かに告げ知らせることを「通告」と言うのです。

「通告」は確実に相手に伝わるように書面などの文書で伝達することが多いです。

そして、書面の内容はもうすでに決まってしまったことなので、通告を受けた相手はそれに従うしかありません。

そのため、基本的に通告した内容に反論したり、変更したりといったことはできないことになります。

通知・通達・通告の違い

通知 通達 通告 違い 使い分け

以上の解説を踏まえますと、それぞれの違いは次のように定義できます。

通知」=上下関係なく特定の関係者や不特定多数へ知らせること。

通達」=上から下へ指示を出すこと。特に行政官庁が所管の機関へ指示すること。

通告」=特定の相手へ公的に決定事項を告げ知らせること。

通知」は、公もしくは個人が特定の関係者へ知らせることです。事前に相手に知らせるという意味合いが強く、基本的に強制力はありません。

この時に、送る側と送られる側の上下関係は指定されないのが最大の特徴です。したがって、公から個人へ、個人から個人へなど様々な対象が含まれることとなります。広い意味では、「メールの通知」「ラインの通知」などもこれに該当します。

対して、「通達」は、上の機関が下の機関へ指示や命令を出すことです。命令なので強制力のあるものとなり、原則として従わなければいけません。

「通達」は「送る側が上」、「送られる側が下」とはっきりと上下関係が指定されます。行政機関や会社などの組織は、上が下の組織に対して指示を出すことによって成り立っています。

もしもその指示に従わなければ、当然、組織としての運営を行うことはできません。そのため、上から下へ半ば命令的に指示を出すような形で強制力を持っているのです。

最後の「通告」ですが、「通告」は公から個人もしくは団体に対して決定事項を告げることです。

「通告」は、特定の相手に公的な文書で知らせるような時に使い、「通知」より一方的、命令的な要素が強い言葉となります。

そのため、「通告」は「通達」と同様に強制力も持っています。ただ、「通達」とは異なり、行政機関から所轄の機関に指示を出すような使い方はしません。

「通告」は組織内での命令というよりは、公から個人または公から他の団体などに対して、何かをさせることを目的に知らせる際に使います。

そして、大事なのは「決定事項」ということです。つまり、もう決まっている事柄を「○○してください」などのように書面で知らせることを「通告」と言うわけです。

通知・通達・通告の例文

 

最後に、それぞれの使い方を例文で紹介しておきます。

【通知の使い方】

  1. 先月受験した大学から、ようやく合格の通知が届いた。
  2. スマートフォンの通知機能をすべてオフに設定しておく。
  3. 市役所から所得税の還付手続きに関する通知書が届いた。
  4. 残念ながら、第一志望の企業から採用の通知が来ることはなかった。
  5. 結婚式の日時、場所、内容などが事前に関係者へ通知された。

【通達の使い方】

  1. 文部科学省による通達で、学校教育法の一部が改正されることとなった。
  2. 環境省から各機関へ土壌汚染対策法についての通達が送られてきた。
  3. 総務省消防庁のホームページで、通知・通達集の一覧を確認する。
  4. 会社から人事異動の通達が来て、営業部へ配属が変更されることとなった。
  5. コロナ禍なので、社員の半数以上がリモートワークになるよう通達された。

【通告の使い方】

  1. 今シーズンの成績不振により、球団から戦力外通告を受けた。
  2. 納税期限を通告する公的な書類が、役所の税務課から届いた。
  3. 脱税していた起業家が、事前の通告なしに資産を差し押さえられたようだ。
  4. 今回の案件については、事後通告となってしまったことをお詫びいたします。
  5. 国税庁から最後の通告を受け、今月末までに必ず納税をするよう命じられた。

 

なお、これらの言葉と関連して「告示」や「告達」が用いられることもあります。

告示」とは「国家や地方公共団体などが、ある事項を広く一般に知らせること」です。また、「告達」とは「役所から民間へ特定の事柄を知らせること」です。

前者は主に政治のイベントなどで、「内閣告示」「選挙日程の告示」などの使われ方をします。対して、後者の方は「監督官庁から告達する」のように役所主導で物事を知らせるようなときに使われます。

本記事のまとめ

 

以上、本記事のまとめです。

通知」=公もしく個人が、特定・不特定多数の相手に知らせること。

通達」=上の機関が下の機関へ指示・命令すること。主に行政官庁が主語となる。

通告」=公から個人もしくは団体に対して、公的に決定事項を知らせること。

「通知」は単に知らせることなので、相手への強制力はありません。一方で、「通達」と「通告」は強制力があります。ただ、「通達」は行政官庁などの上の組織が下に送るという点、「通告」は「決定事項を知らせる」という大きな違いがあります。いずれも前に「通」が付くという共通点はありますが、すべて意味が異なる言葉だと考えて下さい。