天の配剤 天の采配 意味 使い方 類語 英語

「天の配剤」という慣用句があります。

ただ、似たような言い方で「天の采配」が使われることもあります。両方とも「天」という漢字が使われていますが、違いはどこにあるのでしょうか?

本記事では、「天の配剤」の意味や由来、使い方、英語訳などを詳しく解説しました。

天の配剤の意味・読み方

 

まず、この言葉の意味を調べると次のように書かれています。

【天の配剤(てんのはいざい)】

善には善果、悪には天罰というように、天は物事を適切に配するということ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

天は人それぞれに資質や能力、機会などをほどよく配するものであるということ。

出典:三省堂 大辞林

上記、二つの辞書から引用しました。「天の配剤」は「てんのはいざい」と読みます。

意味は、「天は物事を適切に配すること」「天は人に資質・能力・機会などをほどよく配すること」などを表したものです。

例えば、ある日偶然、道端に落ちている財布を拾った人がいたとしましょう。普通であれば、交番に届けるのが当然です。

ところが、その人は交番には届けずに自分のものにしてしまいました。そして後日、その人は不幸ながらも交通事故にあって大けがにあってしまいました。

このような場合に、「彼が事故に遭ったのは天の配剤だ」などと言うわけです。

つまり、「天の配剤」とは善いことをした人には善い事が、悪いことをした人には悪い事が起こるものであるという教訓を示した慣用句ということです。

ここから派生して、「人の資質や能力が上手く配分される」「物事の組み合わせが巧みである」などの意味で使われることもあります。

天の配剤の語源・由来

 

「天の配剤」は、「天」と「配剤」の二つに分けることができる慣用句です。まず、「」とは「空・あめ・天国・自然界・万物の神・支配者」など様々な意味を含んでいます。

仏教では「人間界より上の天上界」、キリスト教では「神がいる天国」のことを指すと言われています。ただ、ここでは一般に言われている、「天上の神」という意味だと考えれば問題ありません。

そして、「配剤」とは簡単に言うと、「薬の配合や調合をすること」です。

元々「配剤」は、二種類以上の薬の成分を組み合わせてそれぞれを混ぜ合わせることを意味していました。この事から、「ちょうどよい具合に組み合わせる」という意味で「配剤」が使われるようになったのです。

現在、この「配剤」は薬に使われることはなく、「天の配剤」という言葉のみで使われるようになっています。

昔から人々は、悪いことをすると罰が当たると信じてきました。日本でも「天罰」などの言葉が使われています。「お天道様が見ているので、悪い事はしていないけない」というセリフも多くの人が聞いたことはあるでしょう。

「天の配剤」とは、そのような「善い事も悪いことも天がちゃんと見ている」という考え方が元になったできた慣用句となります。

天の采配は誤用か?

 

ところで、「天の配剤」と似たような言葉で「天の采配」があります。結論から言いますと、天の采配は誤用です。

「采配(さいはい)」とは、「指揮」や「指図」を意味する言葉で、「監督の采配」などのように用いられています。

この言葉自体は普通に使われているため、何の間違いでもありません。しかし、天上の神が指揮をするというのは、普通に考えればおかしな話です。

そのため、本来の意味を考えれば、「天の采配」が間違いであることは分かるかと思います。「配剤」と「采配」は発音・漢字が似ているため、いつのまにか誤用が広まってしまったのでしょう。

なお、「天の采配」という言葉自体が全く存在しないというわけではありません。昔の時代劇や歴史小説などでは、「天の采配」=「天子が振るう采配」という意味で使われていたこともあります。

ただ、この場合の「天子」というのは、「天皇」や「皇帝」のことを指しています。要は、「天皇や皇帝による軍事面での采配」という意味です。すでに説明した「天上の神」を指しているわけではありません。

天の配剤の類義語

天の配剤 類義語 言い換え

続いて、「天の配剤」の類義語を紹介します。

天の思し召し(てんのおぼしめし)】⇒天の考え・気持ち。「思し召し」とは考えや気持ちを敬っていう語を指す。
天の計らい(てんのはからい)】⇒天の処置や措置。天のとりはからい。「計らい」とは「処置・扱い」という意味。
お天道様が見ている(おてんとうさまがみている)】⇒天地を司るお天道様が見ているということ。「お天道様」=「太陽」という意味もある。
天罰覿面(てんばつてきめん)】⇒悪いことをすれば、天が罰を下すということ。「天罰」は天の下す罰、「覿面」はある事柄の報いがすぐ現れることを意味する。
因果応報(いんがおうほう)】⇒善い行いをすれば善い報いが、悪い行いをすれば悪い報いがあるということ。「因」は原因を表し、「果」は結果を表す。

類義語は「天が物事を決める・天が定めを行う」といった内容の言葉となります。

この中だと、「因果応報」は比較的よく使われる四字熟語です。元は仏教からきた言葉で、人の善い行いと悪い行いの両方に対して使われます。

他には、慣用句以外だと「宿命」「天命」「運命」「定め」などの語も類義語と呼べるでしょう。

天の配剤の英語訳

 

「天の配剤」は、英語だと次のように言います。

the dispensation of Providence

「dispensation」は「分配・分配品・施し物」、「Providence」は「神・天帝」などの意味があります。よって、「神の分配」という意味から、「天の配剤」と訳すことができます。

また、「神の思し召し」という意味ならば、God’s will」という表現も可能です。「God」は「神」、「will」にはその人の「意思」や「考え」という意味があるため、「神の意思」⇒「天の配剤」と訳すことができます。

天の配剤の使い方・例文

 

最後に、「天の配剤」の使い方を例文で紹介しておきます。

  1. 過去に面倒を見ていた弟子が、わざわざ私の元へお礼にやって来た。天の配剤を感じるね。
  2. 話題になっている強盗犯がようやく逮捕されたようだ。やっぱり、世の中は天の配剤である。
  3. 散々人をだまして金儲けをしていた奴が、突然急病で亡くなった。天の配剤の妙を感じるよ。
  4. ずっと昔に出会った彼と偶然再会することになった。その後、結婚することになるとは天の配剤だろう。
  5. あいつは勉強と運動は全くできないが、絵の才能だけはズバ抜けているね。天の配剤としか思えないよ。
  6. 話すことが生まれつき上手な人もいれば、逆に下手な人もいる。これは天の配剤の影響だろう。

 

「天の配剤」は、例文のように「善人には幸福をもたらし、悪人には災いをもたらす」という意味で使うのが基本です。つまり、「福」と「災」を天が的確に与えるということです。

ただし、場面によっては、「天が人の能力や資質をほどよく配分する」という意味で使うこともあります。例文だと、5と6です。

人には生まれつき持っている才能がそれぞれあります。しかし、皆が皆、同様の才能を持っているというわけではありません。勉強ができる人もいれば、スポーツができる人もいます。あるいは話す才能や芸術の才能がある人もいます。

それぞれの才能の調和がとれていることにより、全体として世の中のバランスが保たれていると言えます。このような社会の構造も、天による調合の一種です。よって、人の資質や能力などに関しても「天の配剤」を使うのです。

まとめ

 

以上、本記事のまとめです。

天の配剤」=天は物事を適切に配すること天は人に資質・能力・機会などをほどよく配すること

語源・由来」=天が人の善悪や資質を、薬の配合のように上手く組み合わせることから。

類義語」=「天の思し召し・天の計らい・お天道様が見ている・天罰覿面・因果応報」

英語訳」=「the dispensation of Providence」「God’s will」

「天の配剤」は、人や物事のあり方が適切になっている様子を表す表現です。それはまさに、天の神様がバランスよくなるように上手く配合したものだと言えるでしょう。