「体裁を整える」という言い方を聞いたことがあるでしょうか?
主にビジネスで使われる表現で、文書や報告書などの書類・資料に対して用いられています。また、ビジネス以外にも評論文などで使われることもあります。
ただ、実際にどのような意味を持つのかが分かりにくい表現でもあります。そこで本記事では、「体裁を整える」の意味や類語、別の言い方などを詳しく解説しました。
体裁を整えるの意味・読み方
最初に、この言葉を辞書で引いてみます。
【体裁を整える(ていさいをととのえる)】
⇒外見がよく見えるように繕うさま、内容は差し置いて外面を気にかける様子などを意味する表現。
出典:実用日本語表現辞典
「体裁を整える」は「ていさいをととのえる」と読みます。
「体」という字は、「たい」ではなく「てい」と読むのがポイントです。「体」は「世間体(せけんてい)」などの言葉があるように「てい」と読みます。
「体裁を整える」とは「外見がよく見えるように取り繕うさま・外面を気にかけるさま」などを表したものです。「取り繕う(とりつくろう)」とは、簡単に言うと「見た目を整えること」だと考えて下さい。
例えば、ワードやエクセル、パワーポイントなどを使い資料を作る機会というのは社会人の方であれば多いです。この時に、フォントを見やすいものにしたり、見出しをきれいなデザインにしたりする行為は「体裁を整えること」だと言えます。
その他には、メールであれば読みやすい書体にして改行や赤文字などを使い、全体として整った文章にする行為なども「体裁を整えること」です。
つまり、「体裁を整える」とは「外見をきれいに整える様子」を表す言葉ということになります。「体裁」とは「外からの見た目や様子」という意味です。
体裁を整えるの類義語
続いて、「体裁を整える」の「類義語」を紹介します。
「体裁を整える」を言い換えた語はいくつかありますが、全く同じ意味の言葉(同義語)というのはありません。
例えば、「書式を整える」は文書に対してのみ使います。また、「形を整える」は具体的な形のある物、「外見を整える」は人の見た目に対して使います。
「格好をつける」や「印象をよくする」は、人の言葉や発言などの具体的な形がないもの(イメージ)に対しても使います。
「世間体を繕う」や「見栄を張る」は基本的に悪い意味でしか使いません。例えば、高級車に乗ったり派手な服を着たりといった必要以上に見た目を気にするような場面使います。
「体裁を整える」は良い意味・悪い意味の両方で使うことができ、なおかつ具体的な形がある物とない物を対象とします。
体裁を整えるの対義語
逆に、「対義語」としては次のような言葉が挙げられます。
- 取り繕わない
- 形を整えない
- 書式を整えない
- 世間体を気にしない
- 見た目を整えない
- 外見を気にしない
- 体裁を整えない
- 自然体のままでいる
- 中身を充実させる
- 内容を豊かにする
- 充実度を高める
「対義語」の場合は、基本的に「類義語」の後ろに「~ない」を付けて否定した表現となります。また、そこから派生して「外面ではなく内面を充実する」という意味の語も反対語となります。最後の三つの語が、この意味での表現です。
体裁を整えるの英語訳
「体裁を整える」は、英語だと次のような言い方があります。
①「format」
②「keep up appearances」
③「make a presentable appearance」
①の「format」は「型・構成・書式」などの意味がありますが、ここでは動詞「整える」という意味です。主に文書の書式を整えたり、形式を合わせたりするような時に使われる単語となります。
②の 「keep up」は「保つ・持続する」、「appearance」は「外観・見た目・体裁」という意味です。合わせることで、「見た目を保つ」⇒「体裁を整える」と訳すことができます。
最後の③は直訳すると、「目に見える外観をつくる」という意味です。「presentable」は「見栄えがする・体裁の良い」などの意味を持つ形容詞で、これに「外観」を表す「appearance」が付くことで上記のような意味となります。
例文だと、それぞれ次のような言い方です。
Try to format the word.(ワードの書式を整えるようにして下さい)
He keeps up appearances.(彼は体裁を保つ人間である。)
The building makes a presentable appearance.(その建物は外観が見栄えのするものである。)
体裁を整えるの使い方・例文
最後に、「体裁を整える」の使い方を例文で紹介しておきます。
- Word文書の下書きが終わったので、あとは体裁を整えるだけです。
- ブログの記事は文章のない内容だけでなく、体裁を整えることも重要である。
- 昨日提出した資料だが、もう少し体裁を整えることを意識した方がよかった。
- 就活は第一印象が大事と聞いたので、服装や髪形などの体裁を整えた。
- 企業に良い印象を与えるためにも履歴書の体裁を整えることは行うべきだ。
- 前回送られたレポートは読みにくかったが、今回のものは体裁が整っていた。
- 体裁を整えることは大事だが、見た目や上辺だけにとらわれていてはいけない。
- 彼は人からどう見られているかを気にし、過度に体裁を整えるタイプである。
「体裁を整える」は、主にビジネスシーンで使われる表現です。ビジネスにおいて、ワードやレポート、履歴書などの文書を整える際に使われます。
また、文書だけでなく人の外見や雰囲気、イメージなどに対して使われることもあります。この場合はどちらかというと、外面ばかりを気にする人を否定するようなニュアンスで伝えることが多いです。
外面ばかりを気にしてしまうと、人生においては時にマイナスになってしまうこともあります。特に、文書などのモノではなく、人そのものを対象とするような場合はなおさらです。
そのため、「中身も重要である・内容も重要である」という一種の教訓を込めて否定的な意味で使われるということです。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「体裁を整える」=外見がよく見えるように取り繕うさま・外面を気にかけるさま。
「類義語」=「書式を整える・形を整える・外見を整える・格好を付ける・印象をよくする・世間体を繕う」等。
「対義語」=「取り繕わない・形を整えない・書式を整えない・世間体を気にしな・見た目を整えない」等。
「英語訳」=「format」「keep up appearances」「make a presentable appearance」
体裁を整えることは、場合によってはネガティブな印象を与えてしまうこともあります。しかし、第一印象が良いのは基本的には好ましいことです。ぜひ正しい場面でこの表現を使って頂ければと思います。