他者を理解するということ テスト対策 100要約 200字要約 意味調べノート

『他者を理解するということ』は、鷲田清一による評論文です。高校教科書・現代の国語にも採用されています。

ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくいと感じる部分も多いです。そこで今回は、『他者を理解するということ』のあらすじや要約、意味調べなどをわかりやすく解説しました。

『他者を理解するということ』のあらすじ

 

本文は、四つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①ケアについて考えるとき、人はよく他者の「全人的理解」などという言葉を口にする。しかし、もし「理解」が他人と同じ気持ちになることだとしたら、それは一人の人間には不可能なことだろう。なぜなら、そこには「他者の理解」というものが成り立つ前提である、自他の間の隔たりというものが消去されているからだ。人は一個の全体としてとらえられるほどまとまった存在ではない。

②人は自分のことも自分では「全体」として理解できない。自己というもののまとまった像など、誰も思い描くことはできないのである。自分のことですらそうなのに、他者についてその「全体」を知ることなどできるものだろうか。そして、「他者の理解」ができなければ、看護というものは頓挫してしまうほかないのだろうか、本当に。

③わかる、理解するというのは、感情や意見の一致をみるということではない。むしろ同じことに直面しても、この人はこんなふうに感じるのかというように、自他の間の差異を深く、微細に思い知らされることである。他者の理解においては、自分にはとても了解しがたいその想いを、否定するのではなくそれでも了解しようとすることである。

④理解するとは、合意とか合一といった到着点を目がけるものではない。わからないままに身をさらし合う果てしのないプロセスである。一致よりも不一致、伝達よりも伝達不能、それを思い知ることこそが、理解においては重要な意味を持つ。他者の想いに触れ、それを受け入れることで、自己のうちで何かが変わり、これまでとは違ったふうに自分を感じられるようになる。理解できないからといってこの場から立ち去らないこと、それでもなんとかわかろうとする姿勢が、理解においては一番大切なのだろう。

『他者を理解するということ』の要約&本文解説

 

100字要約他者を理解するとは、相手と同じ気持ちを持つことではなく、違いを認識し、受け入れようとすることである。理解は、合意や共感を目指すものではなく、わからないままに身をさらし合う果てしのないプロセスである。(99文字)
200字要約人は自分自身のことすら完全には理解できないため、他者を全て理解することは不可能である。理解とは相手と同じ気持ちを持つことではなく、違いを深く知ることである。相手の考えを否定せず、わからなくても受け入れようとする姿勢が重要だ。理解とは到着点を目指すものではなく、常に続く過程であり、他者の想いに触れることで自己も変化する。わからないからといって関係を断たず、理解しようと努めることが大切である。(196文字)

この文章では、「他者を理解するとはどういうことか?」というテーマについて筆者が考察しています。

一般的に「他者を理解する」とは、相手の気持ちや考えを完全に分かることのように思われがちですが、筆者はそれは不可能だと指摘します。なぜなら、人は自分自身のことすら完全には理解できないからです。

では、他者を理解することは意味がないのでしょうか?筆者はそうではなく、「理解するとは、相手と同じ考えを持つことではなく、相手の考えが自分とは違うと知ること」だと主張します。

たとえば、友人が失恋して悲しんでいるとき、自分も全く同じ悲しみを感じることはできません。しかし、「自分ならこう思うけれど、この人はこう感じるんだな」と受け止めることが大切ということです。

また、理解とは「ゴールのあるものではなく、ずっと続くプロセス」だとも述べています。わからないことがあっても、わかろうと努力し続ける姿勢が重要です。これは看護や介護の場面でも同じで、患者の気持ちを完全に知ることはできなくても、「この人の感じ方を尊重しようとする姿勢」が大事だということです。

このように、筆者は「他者を理解するとは、完全に共感することではなく、違いを知り、それでも相手を受け入れようとすること」だと主張しています。

『他者を理解するということ』の意味調べノート

 

【率直(そっちょく)】⇒飾り気がなく、正直であること。

【全人的(ぜんじんてき)】⇒人間のあらゆる側面を含むさま。人間を、身体・心理・社会的立場などあらゆる角度から判断するさま。

【具体的(ぐたいてき)】⇒はっきりと形や内容があること。

【不意】⇒予期せず突然起こること。

【天啓(てんけい)】⇒神からの啓示やひらめき。

【共振(きょうしん)】⇒同じ波長を持つものが互いに響き合うこと。

【隔たり(へだたり)】⇒距離や意見の違いによる差。

【要請(ようせい)】⇒必要なこととして強く求めること。

【主体(しゅたい)】⇒自ら考え行動する存在。

【客体(きゃくたい)】⇒主体が認識したり、影響を与えたりする対象。

【局所的(きょくしょてき)】⇒特定の限られた部分に関すること。

【コンプレックス】⇒劣等感や心の中に抱える複雑な感情。

【欲動(よくどう)】⇒本能的な欲求を満たそうとする心の動き。

【たち】⇒生まれ持った性質や傾向。

【判然(はんぜん)】⇒はっきりと分かること。

【性向(せいこう)】⇒人の持つ性格や傾向。

【錯綜(さくそう)】⇒物事が複雑に入り組むこと。

【頓挫(とんざ)】⇒物事が途中で行き詰まること。

【家裁(かさい)】⇒家庭裁判所の略称。

【調停(ちょうてい)】⇒対立する双方の間に入り、和解を促すこと。

【万策尽きる(ばんさくつきる)】⇒あらゆる手段を試したが、方法がなくなること。

【微細(びさい)】⇒極めて小さく細かいこと。

【非対称(ひたいしょう)】⇒左右や上下が対照的でないこと。

【プロセス】⇒物事が進行する過程や手順。

【承認(しょうにん)】⇒認めて許可すること。

【訴訟(そしょう)】⇒裁判所に訴え、法的な判断を求めること。

『他者を理解するということ』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

①悪い考えがデンセンしていく。

②成功には努力がゼンテイとなる。

③最新のイリョウ機器が導入された病院だ。

キョクショ的に物事が起こる。

⑤彼の説明にはナットクができなかった。

解答①伝染 ②前提 ③医療 ④局所 ⑤納得
問題2「全人的」の意味を答えなさい。
解答すべての人格を総合的にとらえ、人間をあらゆる角度から判断するさま。
問題3「そのようなことは一人の人間にはおそらく不可能なことだろう。」とあるが、「不可能なこと」とは何か?
解答他人と同じ気持ちになること。
問題4『「全人的」というのは過酷な要請である。』とあるが、なぜそう言えるのか?
解答人は、自分のことでさえ完結した全体としてとらえられていないのに、まして他者を全体としてとらえることなど不可能であり、実現できないことだから。
問題5「そういう出来事が起こることが大事なのであって、~」とあるが、なぜそう言えるのか?
解答自他の間にある深い差異や、伝達不能なことを痛切に自覚することで、初めて他者の想いを受け入れようと自分自身が変化し、少しでも他者の理解に近づけるから。

まとめ

 

今回は、『他者を理解するということ』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。