『対話の精神』は、平田オリザによる評論文です。教科書・論理国語においても学習します。
ただ、本文を読むとその内容や筆者の主張が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、『対話の精神』のあらすじや要約、意味調べなどを含め簡単に解説しました。
『対話の精神』のあらすじ
本文は、その内容から大きく二つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。
①「会話」とは、価値観や生活習慣などが近く、親しい者同士のおしゃべりである。一方、「対話」とは、あまり親しくない人同士の価値観や情報の交換、あるいは親しくなくても価値観が異なるときに起こるその擦り合わせである。日本には、「わかりあう文化」「察し合う文化」があり、ヨーロッパには「説明し合う」文化があるが、どちらが正しいということはない。「察し合う」というコミュニケーションは世界では少数派だが、日本の子どもたち、若者たちには、日本文化に対する誇りを失わないまま、他者に対して言葉で説明する能力を身につけてもらいたい。
②「対話的な精神」とは、異なる価値観を持った人と出会うことで自分の意見が変わっていくことに、喜びさえ見いだす態度である。ヨーロッパでは、時間内でとことん話し合い、結論を出すことが重要なプロセスとなっている。異なる価値観と出会った時には、物怖じせず、粘り強く共有できる部分を見つけていくことが大事である。新しい発見や出会いの喜びを少しずつ味わっていく以外に、対話の基礎体力を身につける近道はない。
『対話の精神』の要約&本文解説
筆者はまず、日本社会には「対話」という考え方が希薄なのだと述べています。「対話」とは、「親しくない人同士の価値観の交換、あるいは親しい人同士でも価値観をすり合わせようとする行為」のことです。
日本人は、皆で一緒に田植えや草刈り、稲刈りをし、江戸時代には鎖国体制もとってきました。このような歴史的背景もあり、ヨーロッパの「説明し合う文化」とは異なり、日本では「わかりあう文化」「察し合う文化」が発達してきました。
そのため、「対話」という考え方が日本社会にはなじんでいないのではと筆者は分析しています。
その上で筆者は、いちいち説明することが面倒で虚しいと感じたとしても、私たちは他者に向かって説明をしていかなければならないと述べています。
異なる価値観であっても、粘り強く共通点を見つけ、対話を繰り返すことで、新しい発見や出会いの喜びがあります。
その小さな喜びの体験を少しずつ味わっていく以外に、対話の基礎体力を身につける近道はないと筆者は考えているのです。
『対話の精神』の意味調べノート
【劇作家(げきさくか)】⇒演劇の脚本や戯曲を書くことを職業とする人。
【多岐にわたる(たきにわたる)】⇒物事がさまざまな方向や分野に広がっていること。
【戯曲(ぎきょく)】⇒演劇の脚本・台本。
【概念(がいねん)】⇒あるものについての大まかな理解やイメージ。
【培う(つちかう)】⇒養い育てる。
【極端(きょくたん)】⇒普通の程度から大きく外れているさま。
【拍車をかける(はくしゃをかける)】⇒物事の進行を一段とはやめる。
【独特(どくとく)】⇒そのものだけが特別にもっていること。
【烙印を押す(らくいんをおす)】⇒消すことのできない汚名や不名誉な評価を与える。
【均質(きんしつ)】⇒一様であること。 全体が同じような性質であること。
【組織だつ(そしきだつ)】⇒ある秩序や体系のもとに統一される。
【阿吽の呼吸(あうんのこきゅう)】⇒二人以上の人が何かを行うときに、お互いの気持ちや動きがぴったりと合うこと。
【否が応でも(いやがおうでも)】⇒どうしても。なにがなんでも。
【身も蓋もない(みもふたもない)】⇒言葉が直接的すぎて、風情も情緒も感じられない。
【潔し(いさぎよし)】⇒清らかだ。 潔白だ。
【往々にして(おうおうにして)】⇒物事がしばしばあるさま。
【幾多(いくた)】⇒数多く。
【協働(きょうどう)】⇒同じ目的のために、対等の立場で協力して共に働くこと。
【いとわない】⇒ためらわずに行う。嫌がらずに引き受ける。
【卑屈(ひくつ)】⇒必要以上に自分をいやしめるさま。
【尊大(そんだい)】⇒いばって、他人を見下げるような態度をとるさま。
『対話の精神』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①人間の言葉はタキにわたる。
②独自の文化をツチカう。
③社会にコウケンする。
④ネバり強く相手に説明する。
⑤ヒクツな発言をやめる。
まとめ
今回は、『対話の精神』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。