「焦眉の急」という慣用句を聞いたことがあるでしょうか?
主に「焦眉の急を要する」などのように言い、ビジネスで使われることもあります。ただ、具体的な使い方や由来が分かりにくい言葉でもあります。
そこで本記事では、「焦眉の急」の意味や語源、例文、類義語などを含め詳しく解説しました。
焦眉の急の意味・読み方
最初に、読み方と基本的な意味を紹介します。
【焦眉の急(しょうびのきゅう)】
⇒危険がひどく迫っていること。状況が切迫していること。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「焦眉の急」は、「しょうびのきゅう」と読みます。
意味は「危険が目の前に迫っていること・切迫した状況」などを表したものです。
主に個人の危機というよりは社会全体の切迫した危機に対して使われる言葉です。
例えば、日本の少子高齢化は大変深刻な問題だと言われています。今現在でも切迫していますが、将来はさらに少子高齢化が加速する可能性が高いです。
このような問題は、まさに目の前に危険が迫っており避けられない状況を表しています。よって、「焦眉の急である」と言えるわけです。
他には、日本の長引くデフレの問題、原発に変わるエネルギーの開発問題なども同じく「焦眉の急」だと言えます。差し迫った危機やすぐ目の前にある危機であれば、それは「焦眉の急」ということになります。
焦眉の急の語源・由来
「焦眉の急」は、『五灯会元(ごとうえげん)』という書物が由来です。「五灯会元」とは中国南宋代に成立した禅宗の歴史書のことです。
その中の一節に、「禅問答」に関する興味深いエピソードが残されています。※「禅問答(ぜんもんどう)」とは「修行者が疑問を発し、師匠が答えること」です。
ある修行僧が、「切迫する状況とは何か?」と質問した。その時に師匠は、「火が眉(まゆ)を焼くときだ」と答えた。
修行僧はそれを聞き、至極納得したのであった。
とこのような話です。
要するに、「眉毛が焼けるほど目の前に火があるのが、一番追いつめられた状況である」と言ったわけです。この事から、「焦眉の急」は「差し迫った危険」という意味で使われるようになったのです。
確かに、目の近くに火があれば動くこともできませんし、恐怖で身動きがとれないでしょう。「焦眉の急」は、言ってみれば人間の本能によって生まれたことわざなのかもしれません。
焦眉の急の類義語
続いて、「焦眉の急」の類義語を紹介します。
以上が、主な類義語となります。いずれも共通しているのは、「差し迫った状況」「危機」を表す言葉ということです。
「焦眉の急」を覚える上で大事な点は、「切迫(せっぱく)」という言葉です。
「切迫」には「期限がさしせまる」という意味があります。つまり、ただ危険なだけでなく、目の前に危険がさし迫っているような時にこの言葉を使うわけです。
なお、「焦眉の急」は四字熟語だと「焦眉之急」と書くこともあります。これは単に「の」を「之」にしただけなので、意味自体は全く同じ「同義語」と考えて問題ありません。
逆に、「対義語」としては、「不急(ふきゅう)」が挙げられます。
「不急」とは「急いでいない様子」「差し迫っていない様子」という意味です。主に、「不要不急」「不急の物資」などのような使い方をします。
焦眉の急の英語訳
「焦眉の急」は、英語だと次のように言います。
「urgent need」
「urgent」は「緊急の・切迫した」という意味の形容詞、「need」は「必要・需要」などを意味する名詞です。これらを合わせることで、「緊急の必要性」、すなわち「切迫した状況にあること」を表すことができます。
例文だと、以下のような形です。
It is the urgent need of the day.(目下、焦眉の急である。)
焦眉の急の使い方・例文
最後に、「焦眉の急」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 日本経済の長引くデフレは、焦眉の急を要する問題である。
- 社会保障制度の改革は、焦眉の急を告げる時期にまできたと言える。
- 我が国の少子化問題の解決は、焦眉の急であることは間違いないだろう。
- 世界の自然が破壊され、環境問題が悪化しているのはまさしく焦眉の急である。
- もしも大地震が起きてしまった場合、焦眉の急はまず自分の身を守ることだ。
- A社にとっての焦眉の急は、売上に対して受注が追いついていない点だと言える。
- 焦眉の急は、目下、地に落ちたイメージをいかに回復させるかということだ。
「焦眉の急」は、例文のように政治経済や社会情勢などに使うことが多い言葉だと言えます。
特に、現代の社会は個々が抱えている問題が山積みですので、「目の前に迫った危機」という意味でこの言葉が使われやすいです。
また、場合によってはビジネスで使われることもあります。
ビジネスでは、「危機的な状況」というよりは「最優先事項」「まず行うべきこと」といった意味で使われることが多いです。例えば、最後の二つの例文などがそうです。
この場合は、「まず〇〇をすべき」「〇〇を優先しないとまずい」といったニュアンスで用いられています。「焦眉の急」をビジネスで使う際は、このように微妙にニュアンスが異なってくると考えて下さい。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「焦眉の急」=危険が目の前に迫っていること・切迫した状況のこと。
「語源・由来」=眉が火で焼けるほど差し迫った状態。(『五灯会元』の禅問答の逸話から)
「類義語」=「喫緊・急務・火急・至急・緊急事態」
「英語訳」=「urgent need」
「焦眉の急」は、普段の文章というよりは新聞などのニュース記事でよく見られる慣用句です。語源を覚えたからには、ぜひ正しい意味を理解して頂ければと思います。