食の履歴書 200字要約 解説 あらすじ 意味調べノート 漢字

『食の履歴書』は、教科書・現代の国語で学習する文章です。そのため、定期テストの問題にも出題されています。

ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、『食の履歴書』のあらすじや要約、意味調べなどを解説しました。

『食の履歴書』のあらすじ

 

あらすじ

①やなせたかしが書いた童話『アンパンマン』は、現在も子どもたちの人気を集める漫画の一つである。このアンパンマンだが、実は一番初めにやなせが描いたのは、「パンを配る空飛ぶおじさん」という設定だった。最初のアンパンマンは1969年に誕生したが、自分の生活を守ってくれる地味で格好の悪い正義の味方だった。

②このとき、日本は高度経済成長期のさなかで、他人と競争して豊かさを勝ち取ろうとする熱気に満ちていた。「おなかをすかす」ということ自体がしだいに忘れ去られようとしていた時代でもある。アンパンマンは、こうした激変する時代状況の中で、当時流行し始めていた「力」と「武器」で相手を打ち負かす強靭なヒーローに対して感じた、やなせ自身の違和感が、「本当の正義とは何か」を問い直すことで初めて誕生した存在である。アンパンマンは当初は大人たちからは全く共感を得られなかったが、子どもたちからの人気は予想を超えて広がっていった。そして、戦後を代表するアニメキャラクターへと成長した。これは、やなせの人生と食の履歴に刻まれた体験が、アンパンマンを通して新しい時代へと引き継がれていったことを意味している。それらは私たちにはっきりと自覚されているわけではないが、少なくとも、何らかの自己犠牲の上に正義が成り立っていることや、生活を守る大切さというシンプルなメッセージは、アンパンマンを通じて伝わっているような気がする。

③今から百年前、人口が急増したことにより、「胃袋の増大」が始まり、「農村」の胃袋に加えて、「都市」へと流入する胃袋が増えた。外食の機会が整えられ、工場や企業が労働者の胃袋に関与するようになった。次に、戦争によりその胃袋は国家によって管理される一方で、十分に満たされないという苦難を経験した。そして戦後は、食糧難にあえいだが、次第に解消され、高度経済成長期に突入すると、飽食の時代が到来した。たくさんの食べ物の中から何を食べるかを選択でき、満足感を得られるような時代へと移り変わった。一方で、「個食」や「孤食」という現象が見られるようになった。二十一世紀の転換期には、「飽食」の時代から、食べることの意味が失われる「崩食」の時代へと突入した。また、食べ物は合理化、科学化、単純化され、栄養素という言葉や数字に置き換え可能な物質として理解されるようになった。

④私たちは、戦前期と戦後すぐの時代は、空腹を満たすために「胃袋」で食べ、次に戦後になっておいしさを味わず、余裕が出てくると「舌」で食べた。さらに見た目の美しさや珍しさを「目」で食べ、食べ物の成分や機能、栄養などを理解し、選別しながら「頭」で食べる時代へと移り変わってきた。ここに近年の動向を加えると、SNSなどで「他人の目」に食べさせ、「いいね」という承認を得ることで「心」を満たすのが現代という時代に登場した新現象である。それらの現象は、次々に消えては生まれ、生まれては消えてと単線的に移り変わったのではない。多様な食の履歴書を持つ人々が同時代を生きているがゆえに、複雑で重層的な変化を経過してきたのである。つまり、「経験の地層」、「食の履歴書」の膨大な束のようなものがあり、それらが厚みを持って時代を作ってきたのだ。

『食の履歴書』の要約&本文解説

 

200字要約食のあり方は時代ごとに変化し、人々の価値観に影響を与えてきた。戦前・戦後は「胃袋」を満たすことが中心であったが、経済成長とともに味覚を楽しむ「舌」、美しさを重視する「目」、栄養を考える「頭」へと移り変わり、現代ではSNSによる「心」の満足が加わった。これらの変化は単線的ではなく、複雑で重層的な変化を経過しながら積み重なってきた。食の履歴をひもとくことで、社会の変化と人々の生き方が明らかになる。(198文字)

本文は、食の歴史を「食の履歴書」として捉え、時代ごとの食の変化と、それが人々の価値観に与えた影響を考察しています。

具体的には、アンパンマンの例を挙げ、高度経済成長期の「強いヒーロー」への違和感から、「自己犠牲」を伴うヒーローが生まれたことを説明しています。

また、現代の食のあり方として、SNSでの承認欲求にも触れ、食が自己表現やコミュニケーションの手段となっていることを指摘しています。

筆者は、これらの食の変遷を「経験の地層」と呼び、多様な食の履歴を持つ人々が織りなす複雑で重層的な文化であると結論づけています。

結論として、筆者が主張したいことは以下の二点に集約できます。

①食の歴史は、単なる消費行動ではなく、人々の生活、文化、価値観の変遷と深く結びついている。

  • 食は時代を映す鏡であり、各時代の社会状況や人々の意識を反映しています。
  • アンパンマンの例からもわかるように、食は文化や芸術にも影響を与え、人々にメッセージを伝える力を持っています。

②現代の食は、多様な食経験が重なり合い、複雑で重層的な文化を形成している。

  • 過去の食の経験は、現代の食文化の基盤となっています。
  • SNSなどの新たな技術は、食のあり方に新たな側面をもたらし、食文化をさらに多様化させています。

つまり、この文章は、食の歴史を振り返ることで、現代の食文化をより深く理解し、食が持つ文化的意義を再認識することを読者に促していると言えます。

『食の履歴書』の意味調べノート

 

【童話(どうわ)】⇒子ども向けに書かれた物語。

【赴く(おもむく)】⇒ある場所へ向かう。状況に応じて行動する。

【焦土(しょうど)】⇒戦争や災害で焼け野原になった土地。

【激動(げきどう)】⇒社会や状況が激しく変化すること。

【空前(くうぜん)】⇒過去に例がないほどのこと。

【強靭(きょうじん)】⇒強くてしなやかであること。

【~に根ざす(ねざす)】⇒~を基盤として成り立つ。

【履歴(りれき)】⇒これまでの経歴や経験の記録。

【示唆(しさ)】⇒それとなく知らせること。ヒントを与えること。

【飢餓(きが)】⇒極度の食糧不足により飢えること。

【劇的(げきてき)】⇒変化や影響が大きく印象的なさま。

【初頭(しょとう)】⇒ある期間のはじめの頃。

【関与(かんよ)】⇒物事に関係していること。

【~にあえぐ】⇒困難な状況で苦しむ。

【飽食(ほうしょく)】⇒食べ物が豊富にあり、満ち足りていること。

【到来(とうらい)】⇒時期や機会がやってくること。

【選別(せんべつ)】⇒よいものを選び分けること。

【動向(どうこう)】⇒物事の動きや傾向。

【承認(しょうにん)】⇒認めて許可すること。

【執着(しゅうちゃく)】⇒強くこだわって離れられないこと。

【あながち】⇒必ずしも(~とは言えない)。

【単線的(たんせんてき)】⇒単純で一方向に進むようなさま。

【重層的(じゅうそうてき)】⇒複数の層が重なり合っているさま。

『食の履歴書』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

リレキを確認する。

シサを与えた。

カンヨを避ける。

ホウショクの時代。

シュウチャクが強い。

解答①履歴 ②示唆 ③関与 ④飽食 ⑤執着
問題2「アンパンマン」は、やなせたかしのどのような問題意識から生まれたか? 
解答当時流行し始めていた「力」と「武器」で相手を打ち負かす強靭なヒーローに対して、「本当の正義とは何か」を問い直す問題意識。
問題3

「食の履歴」に関する説明として正しいものを次の中から選びなさい。

①戦前から戦後を通じて、食事の重要性は低下し続けている。

②食文化は単線的に変化し、現在は飽食の時代にとどまっている。

③戦後、食事の選び方が多様化し、時代とともに変化している。

④近年、食事の重要性は完全になくなりつつある。

解答
問題4

「重層的な変化を経過してきた」とはどういうことか?

①食文化は一方向に単純に進化してきたということ。

②時代ごとの異なる食文化が積み重なり、複雑に変化してきたということ。

③食事の仕方は昔から変わらず一定であるということ。

④現代では食事に対する価値観が完全に統一されているということ。

解答
問題5

次の中から本文の内容に合致するものを選びなさい。

①アンパンマンは、誕生当初から大人たちの間でも人気があった。

②高度経済成長期には、「おなかをすかす」ことが重視されていた。

③近年の食の動向には、SNSを利用した新たな現象が含まれる。

④食の歴史は単線的に進化し、過去の食文化は現代に影響を与えていない。

解答

まとめ

 

今回は、『食の履歴書』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。