「進化が導き出した答え」は、教科書・論理国語で学習する文章です。そのため、定期テストの問題にも出題されています。
ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、「進化が導き出した答え」のあらすじや要約、意味調べなどを解説しました。
「進化が導き出した答え」のあらすじ
本文は、四つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを紹介していきます。
①ナンバー1しか生きられないのが、自然界の鉄則である。だが、ゾウリムシを使った実験では、二種類のゾウリムシが共存する結果となった。一種のゾウリムシが水槽の上で大腸菌を餌にして暮らすのに対し、もう一種は水槽の底で酵母菌を餌にして暮らした。ナンバー1を分け合うことで、共存を果たしたのだ。このナンバー1になれる場所をニッチと言う。ニッチはその生物だけの場所であり、オンリー1の場所だ。すべての生物はナンバー1であると同時にオンリー1でもある。ニッチを見つけることができなかった生物は滅ぶ。自然界はニッチを巡る争いなのだ。
②では、どのようにすればニッチを見いだすことができるか。ナンバー1になるにはどうすればよいのか。野球の場合、世界→日本→都道府県のようにすればナンバー1になれる可能性が上がる。このように、範囲を小さくすれば、ナンバー1になりやすい。つまり、ニッチは小さいほうがいいのだ。また、得意分野で勝負するなど、条件を小さく細かく区切っていけば、ナンバー1になるチャンスが生まれてくる。すべての生物はニッチを細分化し、分け合うことで小さなニッチを守っているのだ。
③一つのニッチには、一つの生き物しか生存できない。だが、必ずしも一つのニッチで激しい競争が繰り広げられているわけではない。生物の世界では、負けることは、この世の中から消滅することを意味する。負けたら終わりなのだとすれば、できる限り「戦わない」というのが、生物の戦略の一つになる。とはいえ、どこかでナンバー1でなければ、生き残ることはできないため、自分のニッチを軸足にして、近い環境や条件でナンバー1になる場所を探す。つまり、「ずらす」のである。この「ずらす戦略」はニッチシフトと呼ばれる。ニッチをずらし分け合いながら、生物は進化を遂げてきたのだ。
④地球にはさまざまな環境があり、環境は常に変化していく。生物は多様なオプションを試すように、共通の祖先から分かれ続けてきた。生物は進化の過程で、常に分岐を繰り返し、多様になっていったのである。私たち人類は、同じ顔、同じ性格、同じ能力の人はいない。同じ遺伝子型は存在せず、すべての人は、オンリー1の存在なのだ。生物の世界も同じである。一つ一つが唯一無二の遺伝子型を持つオンリー1の存在なのだ。
「進化が導き出した答え」の要約&本文解説
この文章のテーマは、「生物が生き残るためには、自分だけの居場所(ニッチ)を見つけることが重要であり、それが進化の原動力になっている」というものです。
筆者は、自然界では「ナンバー1=最も適応した個体しか生き残れない」という法則がある一方で、生物は競争を避けながら「ずらす」ことで共存し、進化を続けてきたと主張しています。
まず、ゾウリムシの実験を例に、生物がナンバー1を分け合う仕組みを説明しています。一つの環境でも、生物は異なる条件を利用することで共存が可能になります。
例えば、一方が水槽の上で生きるなら、もう一方は水槽の底で生きる、といった形です。このように、「それぞれが独自の生存領域(ニッチ)を持つ」ことが、生物の生存戦略であると筆者は述べています。
次に、ナンバー1になるための方法について説明しています。例えば、野球で世界一を目指すのは難しくても、日本国内、さらには都道府県レベルに範囲を絞ればナンバー1になる可能性が高くなります。このように、「範囲を狭めることで、ナンバー1になるチャンスを増やす」というのが、ニッチを見つける戦略だとしています。
さらに、生物が生存競争を避けながら生き残る方法として「ニッチシフト(ずらす戦略)」が紹介されています。これは、競争に勝てない場合でも、生存できる環境を少し変えて適応することで、生物が生き残る方法です。
例えば、同じ食べ物を狙う動物でも、昼に活動するものと夜に活動するものが分かれることで競争を避けることができます。
最後に、進化の結果として生物が多様化してきたことを述べています。環境の変化に対応するために、生物は異なる形へと分岐し続けてきました。私たち人間も一人ひとりが異なる特徴を持つように、生物もそれぞれ「オンリー1」の存在であり、それが生存戦略として機能しているというのが筆者の結論です。
この文章は、自然界の生存競争が単なる「強い者勝ち」ではなく、「自分の得意な場所を見つけることが重要である」という考えを示しています。
これは、人間社会にも応用できる考え方です。仕事や勉強で競争が激しい場面でも、人は自分の得意分野や独自のポジションを見つけることで、成功するチャンスを増やせるということです。
「進化が導き出した答え」の意味調べノート
【鉄則(てっそく)】⇒守るべき決まりやルール。
【共存(きょうぞん)】⇒異なるものが一緒に存在すること。
【ニッチ】⇒特定の小さな場所や領域。
【並大抵(なみたいてい)】⇒普通であること。特別でないこと。
【ひと握り(ひとにぎり)】⇒少数のもの。少しの数。
【細分化(さいぶんか)】⇒細かく分けること。
【さぞかし】⇒きっと。非常に。想像するに。
【当たって砕けろ(あたってくだけろ)】⇒成功するか分からなくても、思い切って挑戦すること。
【逆境(ぎゃっきょう)】⇒困難な状況。不利な状況。
【克服(こくふく)】⇒困難を乗り越えること。
【示唆に富む(しさにとむ)】⇒それとなく教えられるところを多く含んでいること。
【骨肉の争い(こつにくのあらそい)】⇒血のつながる肉親同士が、激しく対立すること。
【オプション】⇒選択肢。
【分岐(ぶんき)】⇒分かれること。
【一卵性双生児(いちらんせいそうせいじ)】⇒遺伝的に全く同じ双子。
【多種多様(たしゅたよう)】⇒種類が多く、さまざまであること。
「進化が導き出した答え」のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①ハンイを広げる。
②体力をイジし続ける。
③権利がショウメツする。
④新しい問題をコクフクする。
⑤勝つためのセンリャクを練る。
次の内、本文の内容を表したものとして最も適切なものを選びなさい。
(ア) 自然界で生物が生き残るためには、すべての生物が同じ場所で競争し続ける必要がある。
(イ) ナンバー1を目指すためには、範囲を小さくすることで競争を避けることが重要である。
(ウ) 生物は常に激しい競争の中で戦い、勝者だけが生き残ると決まっている。
(エ) 進化の過程で、すべての生物が同じように適応し、進化するわけではない。
まとめ
今回は、「進化が導き出した答え」について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。