『白』は、教科書・現代の国語に収録されている評論文です。過去には、東大の入試問題にも採用されたことがあります。
ただ、本文を読むとその内容や筆者の主張が分かりにくいと感じる作品でもあります。そこで今回は、『白』のあらすじや要約、語句の意味などを含め簡単に解説しました。
現代の国語『白』のあらすじ
本文は、行空きにより2つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとの簡単なあらすじを紹介していきます。
①白は不可逆性を持ち、後戻りができない。白い紙の上で朱肉を使い印を押す行為は、不可逆性の象徴である。思索を言葉として定着させる行為や習字の練習をする行為もまた、大きな不可逆性を発生させる営みである。推敲という行為は、このような不可逆性が生み出した美意識である。だが、現在ではネットのようにあらゆる人々が加筆修正できる無限の情報が出てくるようになった。
②無限の更新を続ける情報は、「清書」や「仕上がる」といった価値観・美意識は存在しない。そのため、情報は常に途中であり終わりがない。一方で、紙の上に載せる後戻りできない行為は、完結した情報を成就させる仕上げの跳躍を意味する。不可逆性を伴うがゆえに、達成には感動が生まれる。それは、書や絵画、詩歌、音楽、演奏、舞踊、武道などにも現れている。弓矢の初級者に、二本目の矢を持って構えてはいけないと忠告するのも、一本目の矢への集中を鈍らせないようにするためなのだ。
現代の国語『白』の意味調べノート
【美意識(びいしき)】⇒美に関する意識。
【始末(しまつ)】⇒物事の締めくくりをつけること。
【不可逆(ふかぎゃく)】⇒再び元の状態に逆戻りできないこと。
【吟味(ぎんみ)】⇒物事を念入りに調べること。
【発露(はつろ)】⇒現れ出ること。
【暗黙の了解(あんもくのりょうかい)】⇒言わなくても通じる理解。
【いざなう】⇒さそい出す。
【逡巡(しゅんじゅん)】⇒ためらうこと。躊躇すること。
【逸話(いつわ)】⇒ある人についての、あまり知られていない興味深い話。エピソード。
【詩想(しそう)】⇒詩に歌われている感情。
【ゆえん】⇒理由。
【差異(さい)】⇒違い。
【イマジネーション】⇒想像。
【変容(へんよう)】⇒変わること。
【静謐(せいひつ)】⇒静かで落ち着いているさま。
【静寂(せいじゃく)】⇒静かでひっそりしていること。
【感受性(かんじゅせい)】⇒物を感じとる力。感性。
【執着(しゅうちゃく)】⇒一つのことに心をとらわれて、そこから離れられないこと。
【器量(きりょう)】⇒人徳。人柄。
【言及(げんきゅう)】⇒言い及ぶこと。
【押印(おういん)】⇒印を押すこと。
【訂正(ていせい)】⇒誤りを正しく直すこと。
【象徴(しょうちょう)】⇒目に見えない抽象的なことを、目に見える具体的なもので表したもの。
【思索(しさく)】⇒物事の筋道を立てて、深く考えること。
【営み(いとなみ)】⇒行い。行為。
【洗練(せんれん)】⇒詩歌や文章を推敲して、よりよいものにすること。
【拙い(つたない)】⇒巧みでない。下手である。
【呵責の念(かしゃくのねん)】⇒責めさいなむ気持ち。「呵責」とは「責めさいなむこと。厳しくとがめてしかること。」という意味。
【痕跡(こんせき)】⇒あとかた。形跡。
【過失(かしつ)】⇒過ち。
【累積(るいせき)】⇒重なり積もること。
【推進力(すいしんりょく)】⇒物事をおし進める力。
【代償(だいしょう)】⇒ある目標を達成するために払う犠牲。
【メディア】⇒媒体。特に、新聞・雑誌・テレビ・ラジオなどの媒体。
【集積(しゅうせき)】⇒集まって積み重なること。
【介する(かいする)】⇒仲立ちとする。
【厳密(げんみつ)】⇒細かい点まで手落ちなくきびしく行うさま。
【良識(りょうしき)】⇒物事の健全な考え方。
【嘲笑(ちょうしょう)】⇒あざわらうこと。
【揶揄(やゆ) 】⇒からかうこと。
【言説(げんせつ)】⇒ある事柄について語られたこと。また、そのまとまり。
【回避(かいひ)】⇒避けること。
【途上(とじょう)】⇒途中。
【跳躍(ちょうやく)】⇒連続していないものへ飛躍してつながること。
【決然(けつぜん)】⇒思い切ったさま。
【屹立(きつりつ)】⇒そびえ立つこと。
【顕著(けんちょ)】⇒きわだって目につくこと。
【超克(ちょうこく)】⇒困難や苦しみをのりこえ、うちかつこと。
【臆する(おくする)】⇒おじける。
【聴衆(ちょうしゅう)】⇒講演や音楽などを聞きに集まった人々。
【観衆(かんしゅう)】⇒催し物などを見物しに集まった大勢の人々。
【刹那(せつな)】⇒極めて短い時間。
【依存(いぞん)】⇒頼ること。
現代の国語『白』の要約&本文解説
「白」は不可逆性を持っています。不可逆性とは、二度と元に戻らない性質のことです。例えば、白い紙に黒いインクで文字を書くこと、白い紙に赤い印鑑を押すこと、習字の紙に黒い墨で文字を書くことなどは元に戻すことができません。
日常生活だと、割れてしまったビン、過ぎ去った時間なども元には戻りません。こういった性質が、「白」にはあると筆者は述べています。
そして、「白」の不可逆性は、紙を中心とした一つの文化を作り上げてきただけでなく、言葉をどれくらいの完成度で定着させるかという情報の仕上げへの意識も生み出しています。
例えば、活字として書籍の上に定着する行為は、元に戻すことはできません。一度印刷をしたら、ずっと書籍の上に残ってしまうため、何度も推敲をして「この言葉でよいだろうか?」「いやこっちの表現の方がよいだろうか?」とよく考えてから決定することになります。
一方で、現代で当たり前のように使われているインターネットには「推敲」や「清書」をするといった価値観はありません。ネットの情報は、常に書き換えられたり削除したりして無限に更新され続けるため、終わりがないためです。
このように比較すると、「白」が持つ不可逆性には、無限の更新を続ける情報にはない感動や美、鮮やかさがあることが分かります。そして、その行いは絵画や詩歌、音楽、演奏、武道などにもよく現われています。
例えば、音楽などは絶対に失敗できない本番で素晴らしい演奏をすることで人々に感動を与えることができます。また、武道なども、負けたら終わりの一発勝負で勝利することで人々に感動を与えることができます。
弓矢を放つ際も、外したら後がないと思って一本の矢に集中することで正確に的を射抜くことができます。
こういった、一度手を入れたら後戻りできない不可逆性を持つものこそ、感動や美、鮮やかさといったものが生まれると筆者は考えているわけです。本作のタイトルにもある「白」は、その不可逆性を表す象徴的な色ということになります。
現代の国語『白』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①アンモクの了解。
②イツワの多い人物。
③時間はフカギャク性を持つ。
④人生の意味をシサクする。
⑤物事をハアクする。
⑥責任をカイヒする。
⑦願いをジョウジュさせる。
まとめ
以上、今回は『白』について解説しました。ぜひ定期テストや入試の対策として頂ければと思います。