『身体の個別性』は、心理学者・浜田寿美男による文章です。高校教科書・論理国語でも学習します。
ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、『身体の個別性』のあらすじや要約、テスト問題などを簡単に解説しました。
『身体の個別性』のあらすじ
本文は、7つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。
①人はそれぞれ自分の身体を持って生まれ、その身体で生きていく。この身体の個別性から、自己中心性の問題が出てくる。自己中心性はピアジェの用語として有名だが、私はそこに依拠しながらも一線を画した意味を持つ、本源的自己中心性を考えていく。
②ピアジェは、幼児について研究した。その結果、幼児は物事を自分の視点からしか見ることができず、他者の視点を理解できないということを発見した。これがピアジェの言う「自己中心性」である。
③ピアジェの考え方だと、幼児はやがて他者の視点から物事を考えられるようになり、脱中心化されるようになる。だが、現実はそう単純ではない。
④いくら脱中心化しても、私たちは自分の身体の位置から自分の身体を通してこの世界を生きるしかない。これを私は、本源的自己中心性と呼ぶことにする。生身の身体の現実に即する限り、完全な脱中心化はありえないのだ。
⑤川上肇は、「自己中心的な利他主義者」と呼ばれた。彼は自己に忠実にあろうとして、社会的現実を正確に観察できないという意味で自己中心的だったのだ。この自己中心的利他性は、決して特殊なものではなく、私たちの周りにもあふれている。いわゆる思いやりがそれだ。
⑥「相手によかれ」と思うのは「私」である。そのため、利他性の中には、自己中心性がつきまとう。思いやりというのは、自己中心的なものなのだ。
⑦人間はどう頑張っても抜け切れない自己中心性を引きずっている。人は自分の身体から離れて生きるわけにはいかない。そうした個別性を生きているゆえに、本源的な自己中心性にとらわれていることを確認しておきたい。
『身体の個別性』の要約&本文解説
筆者の主張を簡潔に述べるなら、「人間はどのような試みをしても、もともと自己中心的にできている存在である。」ということになります。
この事を本文中では、「人間は本源的自己中心性にとらわれている」と述べられています。
人間は生まれたばかりの赤ん坊の頃は、自分以外のことはよく分からず、自分の兄弟のこともよく分かっていません。
やがて成長していくにつれて、自分の視点を離れて他者の視点からも物事を考えることができるようになります。
ところが、私たち人間というのは、どれだけ頭の中で自分中心から離れようとしても、完全にそこから抜け出そうとするのは限界があるのだと筆者は主張します。
例えば、目の前に他者が立ってこちらを向いていたとしても、相手が見ている通りの世界をそのまま私が経験するということは決してできません。
また、目の前にもがき苦しんでいる人がいたとしても、その苦しみを自分の身体にそっくりそのまま引き受けるようなこともできません。
つまり、人間が赤ん坊の頃から持つ自己中心性というのはどこまでいっても残り続けるのです。
身体は人によってそれぞれだからこそ、個々人はそれぞれの身体の位置からこの世の中を生きる以外に方法はありません。
この事こそが、本文のタイトルにもなっている「身体の個別性」ということになります。
筆者はこのように、人はもともと自分の身体から離れて生きることはできない本源的自己中心性にとらわれた存在であることを、読者に伝えているのです。
『身体の個別性』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①専門用語にイキョする。
②苦手をコクフクする。
③方針をテッテイする。
④彼とはムエンの関係だ。
⑤非行のオンショウとなる場。
⑥オウボウな振る舞いをする。
まとめ
今回は、『身体の個別性』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。なお、本文中の重要語句については以下の記事でまとめています。