世界を広げる批評の言葉 要約 意味調べノート 語句 漢字 あらすじ

『世界を広げる批評の言葉』は、教科書・論理国語で学習する文章です。そのため、高校の定期テストの問題にも出題されています。

ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、本作の要約や意味調べ、テスト対策などを簡単に解説しました。

『世界を広げる批評の言葉』のあらすじ

 

本文は、四つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①かつては「読む」ことが当たり前の日常の行為で、「書く」ことは非日常の特別な行為だった。しかし、現代ではそれが逆転し、「書く」ことのほうが当たり前の日常になっている。かつてのように読むこと「から」書くというルートをたどるのは難しい。ならば、「読む」ことではなく「書く」ことを起点にした往復運動を設計する必要がある。

②対象そのものを論じるには、対象を解体し、分析し、他の何かと関連付けて化学反応を起こす能力が必要となる。価値のある情報発信とは、対象を「読む」ことで得られたものから、自分で問題を設定することだ。そうすることで、世界の見え方は変わる。あらたな問いを生む発信は、既に存在する価値への「共感」の外側にある。それは価値の転倒を起こす。

③報道という事実に対して、様々な距離と角度から接することで、人間は新しい問いを設定することができる。この行為に「批評」という言葉を当てたい。「報道」は「他人の物語」を伝え、報道を受信した人々はそれを解釈して「自分の物語」として再発信する。この時に、自分の外側に世界を広げるために「批評」が必要なのだ。

④「批評」とは、対象と自分との関係性を記述する行為だ。しかしそれはあくまで自分についての言葉ではない。自分の物語でありながら、直接、自己像の記述に結びつくことはない。批評は自己像に対する意識の肥大化が避けられないこの時代に、より必要とされる言葉である。

『世界を広げる批評の言葉』の要約&本文解説

 

200字要約かつては「読む」ことが当たり前の行為で、「書く」ことは特別な行為だった。だが、現代ではその均衡が逆転したため、「書く」ことを起点にした往復運動を設計する必要がある。価値のある情報発信とは、自分であたらしく問題を設定することだ。あらたな問いを生む発信は、すでに存在する価値の外側にあり、それは価値の転倒を起こす。批評とは、対象と自分との関係性を記述する行為であり、今の時代に必要とされる言葉である。(198文字)

現代社会は、「読む」ことよりも「書く」ことの方が当たり前の日常になっています。

例えば、一昔前は、「書く」という行為は本や新聞などの限られた媒体でしか行えませんでしたが、現代ではブログやSNSなどで、簡単に自分の情報を「書く」ことができます。

そのため、筆者は「読む」ことではなく、「書く」ことを起点にした往復運動を設計すべきだと述べています。

具体的には、まず良質な発信を意識し、その過程で「書く」ためには「読む」ことが必要だと認識し、そして「読む」訓練を経た上でもう一度「書く」ことに挑戦するといったことです。

その上で、現代で求められているのは、ただ単に情報に対してYESかNOを述べるのではなく、自分で問題を設定することだと述べています。

例えば、政治家の不祥事ニュースに対して、良い悪いという二者択一で意見を述べるのではなく、「なぜこの政治家はこのような行為をしたのか?」などのように、自分で新たな問いを見つけていくことが必要ということです。

このように、新たな問いを生む発信をすることで、世界の見え方が広がり、価値の転倒が起こると筆者は考えているのです。

最終的に筆者は、「批評」という言葉に触れています。「批評」とは、本文中だと「ある事実に対して距離感と侵入角度を試行錯誤し続ける行為」だと説明されています。

私たちは、「報道」という他人の物語に対して、あたかも「自分の物語」のように再発信しています。この時に与えらえた問いに対して、「YESかNOか」「0か1か」のように二択を決めるだけの発信では、世界は貧しくなってしまいます。

そのため、現代では、世界の見え方を変える「批評」という言葉が必要だと筆者は考えているのです。

この事こそが、本文のタイトルにもなっている『世界を広げる批評の言葉』ということになります。

『世界を広げる批評の言葉』の意味調べノート

 

【思慮(しりょ)】⇒注意深く心を働かせて考えること。

【検証(けんしょう)】⇒物事を調べ、正しいかどうかを確かめること。

【起点(きてん)】⇒物事の始まるところ。

【物を申す(ものをもうす)】⇒意見や主張を述べる。

【潮目(しおめ)】⇒物事の流れや状況の変化の境目。

【多角的(たかくてき)】⇒色々な視点や側面から物事を考えるさま。

【加担(かたん) 】⇒力添えをすること。

【着想(ちゃくそう)】⇒新しい考えやアイデアを思いつくこと。

【二者択一(にしゃたくいつ)】⇒二つのうち、どちらか一つを選ぶこと。

【転倒(てんとう) 】⇒さかさまになること。

【前提として(ぜんていとして)】⇒基本的に。基本として

【批評(ひひょう)】⇒物事について、自分の評価や意見を述べること。

【試行錯誤(しこうさくご)】⇒いろいろ試してみて、失敗しながら解決方法を見つけること。

【解釈(かいしゃく)】⇒物事について、自分なりに考えて理解すること。

【表明(ひょうめい)】⇒自分の考えを、はっきりあらわし示すこと。

【放棄(ほうき)】⇒投げ捨ててかえりみないこと。

【袋小路(ふくろこうじ)】⇒物事が行きづまって先に進めない状態。

【佇む(たたずむ)】⇒しばらく立ち止まっている。じっとその場所にいる。

【発露(はつろ)】⇒心の中にあるものを現し出すこと。

【肥大(ひだい)】⇒物が大きくなりすぎること。異常に膨らむこと。

『世界を広げる批評の言葉』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

①駅をキテンにして出発する。

シリョ深い性格の人物。

③情報をブンセキする。

④物事を試行サクゴする。

カイシャクの違いが起こる。

解答①起点 ②思慮 ③分析 ④錯誤 ⑤解釈
問題2『「書く」ことを起点にした往復運動を設計する必要がある』とあるが、ここでの「往復運動」とはどのようなことか?
解答例「書く」ためには「読む」ことが必要であることを認識し、そして「読む」訓練を経た上でもう一度「書くこと」へ戻っていくようなこと。
問題3「話はまったく変わってくる」とあるが、どういうことか?
解答例タイムラインの潮目を読んで、YESかNOかだけを判断するのと、具体的にその対象そのものを論じようとするのは話は変わってくるということ。
問題4「問いを立てる発信は違う」とあるが、具体的に何と違うのか?
解答例インターネットで情報を与えられたときに、それに「共感」して「いいね」をするようなこと。
問題5筆者は、「報道の役目」はどのようなことだと捉えているか?
解答例ある事実の一側面を伝えること

まとめ

 

今回は、『世界を広げる批評の言葉』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。