政治を支える心構え 要約 解説 意味調べノート あらすじ テスト問題

『政治を支える心構え』は、教科書・論理国語で学習する文章です。高校の定期テストの問題にも出題されています。

ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、『政治を支える心構え』のあらすじや要約、意味調べなどを解説しました。

『政治を支える心構え』のあらすじ

 

本文は、四つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①古代ギリシアのポリスにおける「政治」では、公共の広場の存在が重要な役割を果たした。市民たちは広場に集まり、全員に共通する問題に関して、議論を闘わせながら決めていった。その営みこそが「政治」であり、「政治」の存立には、「自由」の保障が不可欠とされた。

②近代になって確立した主権国家は、広大な領土を支配する統治機構としてなりたっており、その機構の形式が全世界に広まって、現在の国際社会を形づくっている。主権国家は、権力を運用する支配者もしくは支配機構であり、ポリスのような人の共同体ではない。普通の市民が、自分と政治とのつながりを実感できないという問題は、近代の出発時からあったのだ。

③デモクラシーの制度の確立や経済の発展により、膨大な大衆が都市に生活するようになる二十世紀には、政治権力と人々の日常との断絶が鋭く意識されるようになった。そこでは、人と人との交渉が複雑になり、個人は社会がきわめて不透明なものであることを深刻に意識するようになった。現在にまで続く、政治への無関心が問題化される時代の到来である。そして、現代の人々は、人民主権の理想と現実とのあいだに断絶があることを、いやというほど知ってしまったのだ。

④全体状況をリアルに見わたしてよりよい方向性を考えるとともに、政治に対する過度な期待をみずから戒めることが重要である。そして、政治はわれわれがわれわれの手で一歩一歩実現していく、という地味で魅力に乏しいプロセスをふむことに耐えることが、現代において、一般の人間が政治にかかわるために適したあり方である。

『政治を支える心構え』の要約&本文解説

 

200字要約古代ギリシアでは、市民が公共の広場で自由に議論しながら政治を形づくっていた。しかし近代以降、主権国家の成立や都市化の進行により、政治と個人の関係は希薄になり、人々は政治への無関心を深めていった。現代社会では、政治に過度な期待をせず、個人が社会の全体状況を把握しつつ、政治に少しずつ関わっていくことが求められている。政治とは、誰かに任せるのではなく、自分たちの手で時間をかけて作り上げていくものである。(200文字)

この文章では、私たち一人ひとりが政治にどう向き合うべきかという筆者の考えが語られています。特に、現代のように政治と国民の距離が離れてしまった社会において、どのような姿勢が求められるかが説明されています。

まず筆者は、古代ギリシアのポリス(都市国家)を例に挙げ、当時の政治は「公共の広場」での市民の議論によって支えられていたと紹介します。そこでは、市民全員が自由に意見を出し合い、公共の課題について考えることが政治そのものでした。つまり、政治は一部の人の仕事ではなく、皆で担うものだったのです。

しかし、近代になると「主権国家」という形が生まれます。これは広大な領土を管理するための統治機構であり、支配者や政府が権力を持つ仕組みです。この変化によって、普通の市民は政治とのつながりを感じにくくなっていきました。

そして、20世紀に入ると、都市化の進展により、人々の生活と政治との距離はさらに広がります。人間関係は複雑化し、社会の仕組みも見えにくくなったため、「政治は自分とは関係ない」と感じる人が増えていきます。こうして、政治への無関心が社会問題として顕著になっていったのです。

こうした状況をふまえ、筆者は「政治に過度な期待をせず、地道に関わっていく姿勢」が大切だと主張しています。

政治は一気に変わるものではなく、私たち一人ひとりが少しずつ関わり、よりよい方向に進めていくものです。例えば、選挙に行くことや、地域の活動に参加することも立派な政治参加です。

筆者が伝えたいのは、政治は遠くの誰かに任せるものではなく、私たち自身が手を動かして作っていくものだということです。

『政治を支える心構え』の意味調べノート

 

【奴隷(どれい)】⇒自由を持たず、他人に使われる身分の人。

【営み(いとなみ)】⇒日常的に行われる生活や仕事の活動。

【駆使(くし)】⇒自由自在に使いこなすこと。

【不可欠(ふかけつ)】⇒欠かすことのできないこと。

【念頭(ねんとう)】⇒心の中。意識の中。

【討議(とうぎ)】⇒集まって意見を出し合い、話し合うこと。

【近代国家(きんだいこっか)】⇒近代に成立した、主権や領土、国民を持つ国家。

【主権国家(しゅけんこっか)】⇒他国の支配を受けず、自国の政治を自ら決められる国家。

【秩序(ちつじょ)】⇒物事が正しく整っている状態。

【デモクラシー】⇒民主主義。人民によって政治が行われる制度や考え方。

【断絶(だんぜつ)】⇒つながりや関係が切れること。

【(…)ざるをえない】⇒どうしてもそうするしかない。

【唯一(ゆいいつ)】⇒ただ一つしかないこと。

【いやというほど】⇒何度も繰り返されて、うんざりするくらい強く感じるさま。

【普遍的(ふへんてき)】⇒すべてに共通して当てはまるさま。

【異にする(いにする)】⇒異なる。違っている。

【幻滅(げんめつ)】⇒期待が外れて、失望すること。

【転化(てんか)】⇒形や性質などが変わること。

【権威(けんい)】⇒他人を従わせるだけの力や影響力。

『政治を支える心構え』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

①最新の技術をクシした映像作品。

②社会からソガイされ、孤独を感じる。

シンコクな問題なので放置できない。

④互いにダキョウして話をまとめた。

⑤彼は現実を知ってゲンメツした。

解答①駆使 ②疎外 ③深刻 ④妥協 ⑤幻滅
問題2『これが、西洋の人々が「政治」という営みを始めたときに、念頭にあったものであった。』とあるが、「これ」とはどういうことを指すか?
解答市民たちが互いに議論を闘わせながら物事を決めてゆく「政治」の空間は、一部の成員の暴力や財力で歪められることがない自由が保障されているということ。
問題3「社会がきわめて不透明なものである」とは、どのようなことか?
解答社会が複雑化し、何が行われているかよくわからなくなっているということ。
問題4「悪さ加減の選択」とは、どのようなことか?
解答政治的な選択とは、ベストの選択ではなく、せいぜいベターなものの選択だということ。
問題5

次のうち、本文の内容を表したものとして最も適切なものを選びなさい。

(ア)現代の政治は専門家が担うものであり、一般の市民は直接関与するべきではない。

(イ)政治は本来、支配者が管理するものであり、古代ギリシアでも市民の関与は少なかった。

(ウ)近代以降、人々は政治に無関心になったが、それは制度の発展によって必要がなくなったからである。

(エ)現代の政治には過度な期待をせず、一人ひとりが地道に関わる姿勢が求められている。

解答(エ)

まとめ

 

今回は、『政治を支える心構え』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。