「産業」という言葉は、普段のニュースなどでもよく聞きます。小学校や中学校の社会であれば、必ず出てくる用語でもあります。
ただ、この言葉の意味が分かりにくいと感じる人も多いです。そこで今回は、「産業」の意味をなるべく簡単に分かりやすく解説しました。
産業の意味
まず、「産業」の意味を辞書で引いてみます。
【産業(さんぎょう)】
①生活に必要な物的財貨および用役を生産する活動。農林漁業、鉱業、製造業、建設業、運輸・通信、商業、金融・保険・不動産業などの総称。
②生活していくための仕事。職業。生業。なりわい。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「産業」とは簡単に言うと「人が生活するために必要な仕事のこと」を意味します。別の言い方をするなら、「仕事の種類」と言いかえても構いません。
「産業」は、「業(ぎょう)を産(う)み出(だ)す」と書きます。
「業」という字は、「職業・企業・農業」などの熟語があるように「仕事」を表します。
そして、「産」という字は「産出・生産」などの熟語があるように「何かを産み出すこと」を表します。
この事から、「仕事を産み出すこと」という意味で「人が生活するための仕事全般」を「産業」と呼んでいるのです。
当たり前のことですが、私たちが生きている社会は仕事をする人がいることで成り立っています。
私たちが普段食べている食べ物、身に着けている服、そして乗っている車などはすべて誰かが産み出したものによって存在します。
「産業」とはそのような「人間の経済活動によって生まれる仕事そのもの」を指すのです。
では、もう少し産業の意味を詳しくみていきましょう。
「産業」は主に次の3つに分けることができます。
①第一次産業 ②第二次産業 ③第三次産業
第一次産業とは
「第一次産業」とは「農業・林業・鉱業・漁業など」のことです。
「農業(のうぎょう)」=土地を使って野菜や果物、穀物などを育てる産業。(畜産業も含まれる)
「林業(りんぎょう)」=森林を育てて保護し、木材を作り出す産業。
「鉱業(こうぎょう)」=石炭・石油、天然ガスなどを資源として取り出す産業。
「漁業(ぎょぎょう)」=魚や貝など海に住む生物を捕獲したり養殖したりする産業。
第一次産業は、主に土や林、山、海など自然界に働きかけて仕事をするものが多いです。また、生活必需品であるという点も重要なポイントです。
「生活必需品」とは「私たちの生活にとって欠かせないもの」と考えれば分かりやすいでしょう。
例えば、農業で生み出されるキャベツやニンジンなどの野菜、りんごやみかんなどの果物、お米や小麦粉などの穀物は私たちの食事に欠かせません。
また、林業の木材も家を建てるために必要ですし、鉱業などの資源も電気やガスを使うために必要です。漁業に関しても魚がなくなると、困る人はたくさんいるでしょう。
このように、自然から生み出されるものを採取してそれを取りだし、私たちの生活の基本を支える産業を「第一次産業」と呼ぶのです。
第二次産業とは
「第二次産業」とは「製造業・建設業・電気ガス事業など」のことです。
「製造業(せいぞうぎょう)」=原材料に加工をして製品を生産する産業。
「建設業(けんせつぎょう)」=土木や建物などの工事を行う産業。
「電気ガス事業(でんきがすじぎょう)」=電気やガスを提供する産業。
第二次産業は、主に第一次産業が採取・生産した原材料を加工して何かを作り出す産業を意味します。
例えば、「製造業」の食品メーカーなどであれば、農業によって生み出された小麦粉や牛乳などの原材料によってお菓子などのケーキ、すなわち製品を作り出します。
そして、このケーキをお客さんに売ってお金を得ているので、第二次産業に含まれるのです。
あるいは、同じく製造業に含まれる「自動車メーカー」も同じです。
自動車メーカーも第一次産業である鉱業によって生み出された鉄や金属などを元に、車を作り出します。そして、作成した車を買いたい人に売っているのです。
「建設業」も、林業によって生み出された木材を元に建物を建てます。
「電気ガス事業」も、鉱業によって発掘された石油や石炭、天然ガスによって、私たちの家庭に電気やガスを提供しています。
このように、第一次産業によって生み出された原材料を元に、製品を作る産業のことを「第二次産業」と呼ぶのです。
第三次産業とは
「第三次産業」とは「運輸業・通信業・金融業・公務・サービス業など」のことです。
「運輸業」=運賃または手数料を取り、旅客や貨物の運送をする産業。
「通信業」=コンピューターなどの通信を行い、情報の処理をする産業。
「金融業」=銀行や保険・証券会社など、金融を取り扱う産業。
「公務」=公務員全般を表す産業。(学校の教師、役所の職員など)
「サービス業」=主に形のないサービスを提供する産業。
第三次産業は第一次、第二次で産み出したものを利用して価値を生み出す産業を意味します。しかし、「第三次産業」は、他の産業と比べてとにかく種類が多いです。
そのため、「第三次産業」=「第一次産業にも第二次産業にも分類されないもの」と覚えると分かりやすいでしょう。
第三次産業は今まで紹介した産業と比べると、具体的な形のないものを世の中に提供するものが多いです。
例えば、「サービス業」だと、「美容師」「販売員」「弁護士」「ホスト」「占い師」などの仕事はいずれも無形のサービスを顧客に提供しています。
- 「美容師」=「髪を切る・染める」というサービス。
- 「販売員」=「良い商品を紹介する」というサービス。
- 「弁護士」=「顧客をサポートする」というサービス。
- 「占い師」=「人生のアドバイスをする」というサービス。
このように、世の中に対して形のないサービスを提供して、経済を回しているのが第三次産業の大きな特徴と言えるのです。
他には、娯楽業、医療、福祉、不動産業、飲食サービス業、宿泊業、学習支援業なども第三次産業に含まれます。
建設業は第二次産業でしたが、不動産業は第三次産業となります。その理由は、何もない所から新たに建物を建てるのが建設業なのに対し、すでに建った家の売買を仲介したりするのが不動産業だからです。
産業の英語訳
「産業」は英語だと「industry」と言います。例えば、「車産業」であれば、「the car industry」 と言います。
その他、「the major industry(主要産業)」、「home industry(国内産業)」「a manufacturing industry(製造産業)」などの表現もあります。
実際の英文だと次のような言い方です。
Predict the future of the car industry.(車産業の今後を予想してください。)
Agriculture belongs to the primary industry.(農業は第一次産業に属する。)
Major domestic industries have entered a period of decline.(国内の主要産業は衰退期に入った。)
「第一次産業」は英語だと「primary industry」と言います。
「primary」には「主な、主要な、初期の、第一の」などの意味があるため、「indusutry」と合わせることで「第一次産業」と訳せます。
なお、「第二次産業」は「secondary industry」、「第三次産業」は「tertiary industry」と言います。
産業の使い方・例文
最後に、「産業」を使った例文を確認しておきましょう。
- プログラミングなどのIT技術の発達により、産業構造は大きく変化した。
- 過去10年間の主な主要産業におけるGDPの推移を、政府が発表した。
- 日本の産業を変えるには、まず学校教育を改革していく必要があるだろう。
- 産業は、主に第一次産業、第二次産業、第三次産業に分類することができる。
- 「産業革命」が起こったことにより、社会の仕組みは大きく変わったと言える。
- 自動車産業は、数ある製造業の中でも日本の経済を支える大変重要なものである。
「産業」という言葉は様々な場面で目にしますが、一般的には経済について説明する時に用いられることが多いです。
特に、経済ニュースなどでは、各業界の仕事について触れる場合が多いので、「産業」が使われる傾向にあります。
他には、経済以外だと、歴史の授業などで登場することもあります。例えば、例文5の「産業革命」という用語です。
「産業革命」とは「18世紀~19世紀頃にイギリスで起こった産業の変革」のことを意味します。
それまでの世の中は、農業を中心とする社会でした。しかし、産業革命により大規模な工場で大量に労働者を雇い、多くの物を製造できるようになったという経緯があります。
現在の資本主義経済を確立する元となったものなので、この「産業革命」という言葉は非常に使われることが多いです。
まとめ
以上、今回の内容のまとめです。
「産業」=人が生活するために必要な仕事。(仕事の種類)
「産業の種類」=「第一次産業・第二次産業・第三次産業」
「第一次産業」=農業・林業・鉱業・漁業など。
「第二次産業」=製造業・建設業・電気ガス事業など。
「第三次産業」=運輸業・通信業・金融業・公務・サービス業など。
「英語訳」=「industry(インダストリー)」
「産業」は「業を産み出す」と書きます。「業」とは「仕事」を意味するものなので、「人が生活するために産み出された仕事」が「産業」だと覚えておきましょう。