『桜が創った日本』は、教科書・論理国語で学習する文章です。高校の定期テストの問題にも出題されています。
ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、『桜が創った日本』のあらすじや要約、意味調べなどを解説しました。
『桜が創った日本』のあらすじ
本文は、三つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。
①人間はソメイヨシノの風景を、きわめて人工的で不自然だと思う。だが、ソメイヨシノが日本の桜の八割を占めている事実こそ、この桜が十分成功している証拠ではなかろうか。人間はソメイヨシノにいろいろやってあげているつもりでも、結局、ソメイヨシノにいいように使われているだけではないのか。人間にとってソメイヨシノは環境の一部だが、ソメイヨシノにとっては人間が環境の一部である。ソメイヨシノは人間という環境にうまく適応した点で、きわめて強い生物なのである。環境にうまく適応して、空前の大繁栄を勝ちえたソメイヨシノを非難する方が、よっぽど傲慢だと思う。
②日本の桜は人間に死を想起させるような美しさをおびてきた。絶対的な受動性の体験である死を、人間はただ受け入れるしかない。その受動性は美しさによる感動に通じる。深い美しさによって、人間はいやおうなく動かされてしまう。日本の桜はそういう美しさをおびてきたのだ。それは桜が周囲に住む人間たちに適応しようとしてきた歴史の結果である。日本列島各地でソメイヨシノが咲くようになったという事実は、人間たちがソメイヨシノにいかに強く動かされたかをはっきりと示している。人がこの桜に動かされてきたという受動性の強度において、やはりソメイヨシノは美しい桜といっていい。
③「ソメイヨシノによって人間が動かされた」とか「自然/人口の反転」といった考え方は、「システム論」とよばれる考え方にすぎない。システムと環境の二つの間の環境設定こそがシステムの最も重要な営みである。桜にとっては人口と環境の区別が存在しない。花粉を運ぶ虫も人間も桜にとっては大きな違いはなく、同じ環境の一部である。「桜」や桜に代表される「日本」はそうやって相互に作用しあうことで創りだされてきた。
『桜が創った日本』の要約&本文解説
この文章は、ソメイヨシノという桜の存在を通して、人間と自然の関係について考えさせる内容です。筆者の主張は、「人間が自然をコントロールしていると思っていても、実は自然の一部である桜に私たちの方が影響されているのではないか」というものです。
特にソメイヨシノは人間社会に非常によく適応し、全国に広がっていった桜です。そのため、単に「人工的なものだ」と否定するのではなく、その適応力を認めるべきだと筆者は述べています。
たとえば、ソメイヨシノは自分で種を作って増えることができず、人間の手によって接ぎ木されて広まってきました。一見、人間が育てているように見えますが、逆に言えばソメイヨシノは「人間に育てさせる」ことで生き延びているとも言えます。このように、人間と自然の関係が逆転しているように見える点がとてもユニークです。
さらに、日本人が桜に「死」や「はかなさ」を感じるのも、ただの偶然ではなく、桜が人間の心に訴えかける美しさを持ち、それによって私たちが感動し、心を動かされてきたからだと筆者は考えています。これは、桜が人間の感情や文化にうまく適応してきた結果ともいえるでしょう。
最終段落では、これらの考え方が「システム論」と呼ばれる考えに基づいていると説明されます。つまり、「自然」と「人工」などの境界は人間の側の視点でしかなく、ソメイヨシノにとっては人間も虫も同じ「環境」に過ぎないという見方です。自然と人間は互いに影響しあいながら一つの「システム」を作っているというのが筆者の考えです。
『桜が創った日本』の意味調べノート
【蔓延(まんえん)】⇒広がること。特に病気や悪影響が広範囲に広がること。
【対策を講じる(たいさくをこうじる)】⇒問題を解決するための方法を考え、実行すること。
【増殖(ぞうしょく)】⇒数が増えること。
【普及(ふきゅう)】⇒広く行き渡ること。
【繁栄(はんえい)】⇒発展して盛んになること。
【擬人化(ぎじんか)】⇒人間でないものに人間の特性を与えること。
【いいたてる】⇒強く主張する。自分の意見や考えをはっきり言う。
【融和(ゆうわ)】⇒異なるものがとけあって、一つになること。
【調和(ちょうわ)】⇒異なるものがうまく合って、バランスを取ること。
【超然(ちょうぜん)】⇒物事にこだわらず、平然としているさま。
【起源論争(きげんろんそう)】⇒物事の始まりや起こりについての論争。
【生態系(せいたいけい)】⇒自然界における生物とその環境の相互作用を示す体系。
【空前の(くうぜんの)】⇒過去にそのような例がまったくないさま。
【俗悪(ぞくあく)】⇒下品でよくないさま。
【受動性(じゅどうせい)】⇒外部からの働きや影響を受ける性質。
【いやおうなく】⇒有無をいうことができずに。
【主体性(しゅたいせい)】⇒自分の考えで物事を決定し、他から影響されずに行動する性質。
【営み(いとなみ)】⇒日常の活動や仕事。生活を営むこと。
『桜が創った日本』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①ユウワが進み、平和な社会が訪れる。
②子孫のハンエイを願い、祭りを行う。
③チョウゼンとした態度で問題を解決する。
④ジュドウ的な態度では成長できない。
⑤シンピの世界に魅了され続けている。
次のうち、本文の内容を表したものとして最も適切なものを選びなさい。
(ア)ソメイヨシノは人間によって完全に制御され、自然界とは無関係に存在している。
(イ)ソメイヨシノは人間に影響を与えながらも、逆に人間の生活にも強い影響を与えてきた。
(ウ)ソメイヨシノは自然環境で自ら増殖し、全く人間の介入を受けていない。
(エ)ソメイヨシノは人間にとって重要な花ではあるが、自然界の中では影響力が小さい。
まとめ
今回は、『桜が創った日本』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。