プラスチック膜を破って 文学国語 定期テスト対策 意味調べノート 語句

『プラスチック膜を破って』は、教科書・文学国語で学習する文章です。高校の定期テストの問題にも出題されています。

ただ、本文を読むと内容が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、『プラスチック膜を破って』のあらすじや要約、語句の意味などを解説しました。

『プラスチック膜を破って』のあらすじ

 

本文は、四つの段落に分けることができます。以下に、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①終末の土曜日の夜、東京郊外の駅での出来事である。駅のプラットホームに電車がやってきた。男性職員のアナウンスで「到着しました電車は…」の後に、突然、「ああ!」という叫び声が聞こえてアナウンスは途切れた。そこにいた人々は皆思わず噴き出したが、「笑い」とはこんなにも人の顔を希望に満ちた明るいものに変えるのか、と私は目をみはる思いだった。

②不特定多数の見知らぬ人々が行きかう場所では、誰もが自分を守るために少し緊張気味に自分の世界に入っている。個人の周りはカプセルのように閉ざされている。そのカプセルはまるで透明なプラスチックでできているかのように、ちょっとしたことでは破れない。この「プラスチック膜カプセル」はそれなりの作用がある。「ああ!」という叫び声で、駅員のプラスチック膜が破れ、同時にそれを聞いていた人々のプラスチック膜も破れて、好意的な笑いの渦になったと言える。

③関西にいた頃の話である。郊外へ向かう電車に乗っていたとき、一匹の蚊を取ろうと向かいの席の乗客たちが次々に「あ。」と声を出して「パチン。」と拍手をした。だが、結局蚊は逃げて五マシ、皆が大笑いした。行きずりの人々の間になんとなく連帯感が生まれた瞬間であった。これも「プラスチック膜カプセル」を破る機会があれば、人はいつでもそれに応じる用意があるという例である。

④プラスチック膜をコントロールして、上手に使えば生き易くなるだろう。だが、プラスチック膜が硬化して、すっかり皮膚と同化してしまっているのではという人も見かける。それはそれでそういう人として、傍らでただ見守っていけばいい。もしなんかのタイミングでその人のプラスチック膜が破れたときに、すかさず笑顔で迎えたいと思う。

『プラスチック膜を破って』の要約&本文解説

 

200字要約現代社会では、人々は他人との関わりを避けるために「プラスチック膜」と呼ばれる心の壁をまとっている。しかし、駅での叫び声や電車内の出来事が示したように、ふとした瞬間にその膜が破れると、人々の間に共感やぬくもりが生まれる。プラスチック膜をコントロールして上手に使えば生き易くなるが、常時その膜を張り続けなければならなくなった人もいる。もし誰かの膜が破れたときには、私はすかさず笑顔で受け止めたい。(196文字)

『プラスチック膜を破って』は、「人と人との心の距離」をテーマにした文章です。

筆者は、現代社会で多くの人が「プラスチック膜」と呼ばれる心の壁をまとって生きていることを指摘しています。この膜は、他人と関わることで傷つかないように自分を守るためのものです。しかし同時に、それが人と人とのつながりを妨げているとも言えるのです。

物語の冒頭では、駅員の思わぬ叫び声に、ホームにいた人々が思わず笑ってしまう場面が描かれます。このとき、普段は互いに無関心で冷たい雰囲気の中にいる人々の間に、一瞬の「共感」や「ぬくもり」が生まれました。

筆者は、この笑いの瞬間こそ「プラスチック膜が破れた」出来事だと説明しています。つまり、人と人との間にあった見えない壁が壊れ、心が通じ合ったということです。

続く関西での出来事も同じです。見知らぬ人たちが一匹の蚊を追いかける中で、自然と笑いが生まれ、電車内が和やかな空気に包まれました。

普段なら他人に無関心な人たちも、共通の出来事をきっかけに心を通わせることができたのです。筆者はこの体験から、「人は本当はつながりたいと願っている存在だ」と感じ取っています。

最後に筆者は、「プラスチック膜」は悪いものではなく、上手に使えば生きやすくなると述べています。誰しも心の防御が必要なときはありますが、それが硬くなりすぎてしまうと他人との交流を拒んでしまいます。

だからこそ、誰かの膜が破れたときには、笑顔で受け止められるような人でありたいと筆者は考えているのです。

この作品は、人間関係の希薄さが問題とされる現代において、「笑い」や「共感」が人の心を結びつける力を持っていることを教えてくれます。日常の中のささいな出来事にも、人の心を温かくするきっかけがあるのだという希望のメッセージが込められています。

『プラスチック膜を破って』の意味調べノート

 

【郊外(こうがい)】⇒都市に隣接した地域。都市の中心から少し離れた地域。

【思しき(おぼしき)】⇒~のように見える、~と思われる。

【郷愁(きょうしゅう)】⇒故郷を懐かしく思う気持ち。

【口上を述べる(こうじょうをのべる)】⇒口頭で、挨拶など決まり文句を言うこと。

【先客(せんきゃく)】⇒先にその場に来ている客。

【上気した(じょうきした)】⇒のぼせて顔を赤くしたさま。

【暴漢(ぼうかん)】⇒乱暴をする人。

【類の(たぐいの)】⇒同じ種類の。似た性質の。

【はた目には】⇒外からは。他の人の目から見ると。

【切実感(せつじつかん)】⇒身にしみて強く感じる思い。

【期せずして(きせずして)】⇒思いがけず。偶然に。

【不特定多数(ふとくていたすう)】⇒性質や傾向を一つにしない個々の多数の集まり。

【不慮(ふりょ)】⇒予測がつかず思いがけないこと。不意であること。

【行きずりの(ゆきずりの)】⇒通りすがりの。その場限りの。

【利害関係(りがいかんけい)】⇒利益や損失が関係していること。

【効用(こうよう)】⇒効き目。効果。

【消耗(しょうもう)】⇒使って減ること。疲れて力を失うこと。

【人酔い(ひとよい)】⇒人混みに長くいることで気分が悪くなること。

【嘲笑(ちょうしょう)】⇒あざけり笑うこと。

【高揚(こうよう)】⇒気持ちが高まること。

【連帯感(れんたいかん)】⇒仲間として心がつながっている意識。

【目が泳ぐ(めがおよぐ)】⇒緊張やうろたえで目の動きが落ち着かないようす。

【醸し出される(かもしだされる)】⇒雰囲気などが自然に作り出されること。

【逃げおおせる(にげおおせる)】⇒最後まで逃げきること。

【志を継ぐ(こころざしをつぐ)】⇒他人の目標や思いを受け継いで実現しようとする。

【無念を晴らす(むねんをはらす)】⇒心の中の悔しい気持ちをすっきりさせる。

【喜怒哀楽(きどあいらく)】⇒喜び・怒り・悲しみ・楽しみの四つの感情。

【常時(じょうじ)】⇒いつも。普段から。

【傍らで(かたわらで)】⇒そばで。近くで。

【すかさず】⇒間をおかずにすぐに。

『プラスチック膜を破って』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

コウガイに大きな家を建てる。

②試験が近づき、キンチョウしてきた。

③試合前に気分がコウヨウしている。

④彼は音にビンカンな性格だ。

⑤困難を乗り越えてレンタイが生まれた。

解答①郊外 ②緊張 ③高揚 ④敏感 ⑤連帯
問題2「公然と許された独り言のように」とは、どのような様子を表しているか?
解答突然のアナウンスの「ああ!」という声を聞いたという共通の経験を周りの人々が共有しているため、そのことについて誰かが笑ったり独り言をつぶやいたりしても、不自然に感じられない様子。
問題3「プラスチック膜カプセル」とは、どのようなものか?
解答不特定多数の見知らぬ人々が行きかう場所で、不慮の事故や変な人とのかかわりなどから自分を守るために、各個人が心に作る見えない壁。
問題4「パチン」という音は、ここではどのようなことを表しているか?
解答電車の中に入ってきた蚊を取ろうとして拍手した音であると同時に、その人のプラスチック膜が破れたこと。
問題5

次のうち、本文の内容を表したものとして最も適切なものを選びなさい。

(ア) 人は誰とでもすぐに心を通わせることができ、すぐに連帯感を感じることができる。

(イ)他人の前では、感情や思いを表に出すことは避けるべきであり、常に自制する必要がある。

(ウ)郊外や電車での出来事は、社会的ルールやマナーを守ることが重要であることを示している。

(エ)心の壁であるプラスチック膜は、笑いや共通の出来事によって自然に破れることがあり、人々の心をつなぐきっかけになる。

解答(エ)

まとめ

 

今回は、『プラスチック膜を破って』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。