応募作品の審査結果として、「入選」と「佳作」の評語が与えられることがあります。どちらもよく使われているので、業界に関係している人であればなじみがあるのではないでしょうか。
ただ、この場合お互いがどのような関係にあるのかといった疑問があります。そこで本記事では、「入選」と「佳作」の意味の違い、順位などについて詳しく解説しました。
入選・佳作の意味
まず、それぞれの意味を辞書で引くと次のように書かれています。
【入選(にゅうせん)】
⇒選にはいること。応募した作品などが、審査に合格すること。「二度目の応募で入選する」
出典:デジタル大辞泉(小学館)
【佳作(かさく)】
①文学作品・芸術作品などで、出来栄えのいい作品。
②絵画・文芸作品のコンクールなどで、入賞した作品に次ぐ優れた作品。「選外佳作」
出典:デジタル大辞泉(小学館)
上記のように、「入選」と「佳作」は多少のニュアンスの違いはありますが、基本的な解釈としてはあまり変わりません。
「入選」とは「(応募した作品などが)審査に合格すること・選に入ること」を意味します。「入選」の「類義語」としては「入賞」、「対義語」としては「落選」が挙げられます。
一方で、「佳作」には、①「すぐれた作品(主に文学・芸術作品)」と②「(応募作品の中で)入賞作品の次にすぐれた作品」の2つの意味があります。「類義語」は「秀作」です。
すなわち、「入選」は審査もしくは選考という行為が行われた結果を表すのに対し、「佳作」は作品の程度・性質を示しつつ、作品という「もの」を表す語ということです。
両者が混同されるようになったのは、2つ理由があります。
1つは、「入選」がこの言葉自体で作品の程度についての評価を表すようになったためです。
そして、もう一つは「佳作」が②の「入賞作品の次にすぐれた作品」のように限定された意味を持つようになったためです。
しかしながら、この2つの理由だけならば、「入選」と「佳作」の意味領域は重なることはなく、両者の混同は起こらないはずです。
それが紛らわしくなるのは、「佳作」が必ずしも選外作品に対してだけ用いられるというわけではなく、言わば「選内作品」とでも言うべき使い方が存在するためです。
入選と佳作の違い
そこで、両者が実際にはどのように使われているかを最近の新聞、雑誌などから拾った結果を示しました。
対象としたのは、俳句・短歌、写真の応募作品に対する評語です。「入選」「佳作」のいずれかを含むものに限り、どちらの評語もないものは掲げていません。
① 入選/佳作(週刊読売、俳句)
② 入選/佳作(週刊文春、俳句・短歌)
③ 入選/佳作(婦人公論、俳句)
④ 入選/佳作/選外佳作(婦人公論、短歌)
⑤ 天・地・人/佳作/選外佳作(オール読物、俳句・短歌)
⑥ 無表示/佳作(PHP、俳句)
⑦ 推薦/秀逸/佳作(雑誌「俳句」、俳句)
⑧ 一席・二席・三席/佳作(朝日新聞、読者の新聞写真コンクール)
⑨ 1席・2席・3席/佳作(読売新聞、読者のニュース写真)
⑩ 大賞・一席・二席/入選/佳作(読売新聞、よみうり写真大賞・報道写真部門)
①・③・⑥は「佳作」が「入選」と区別されていることは明らかですが、入賞しているかどうかについては扱いに違いが見られます。
例えば、①については、「入選」は20句で「佳作」は4句です。この場合の「佳作」については、先に説明した「(応募作品の中で)入賞作品の次にすぐれた作品」の意味である「選外佳作」の意味合いが濃いです。
対して、②は「入選」は1句(首)で、「佳作」は9句(首)です。この場合は入賞作の内、最優秀作を「佳作」としたということが言えます。
どちらの場合も「入選」には選後評がつきますが、「佳作」に関しては省略されることが多いです。
④と⑤は「佳作」と「選外佳作」をはっきりと分けています。いずれも「選外佳作」は氏名のみで、作品については掲載されていません。これらは「佳作」は「入選」に次ぐ入賞作ということになります。
⑦は俳句専門誌の例です。「推薦」は10句で選後評がつきます。
「秀逸」20句と「佳作」161句は、作品と氏名が掲げられているだけですが、活字の大きさ、紙面の割付け方などに差があります。⑧、⑩では「佳作」は氏名のみで、作品は掲載されていません。ただし、賞金は与えられています。
以上の事から考えますと、「佳作」には「入選しなかった作品の内、入選作に次ぐ作品」という意味と「広義の入選作品の内、「入選」に次ぐ評語」としての用法があるということになります。
そして、現在では前者よりも後者の用法のが多く用いられているという現状があります。
したがって、一部例外などもありますが、一般的には作品の評価として「入選>佳作」という順位になることが多いです。
「入選」は字の通り「選考に入った(通った)」ものですが、「佳作」は「優秀な作品」なので必ずしも選考に通ったとは限りません。そのため、「佳作」の方が必然的に順位が下となるのです。
入選と佳作の使い方・例文
「入選」と「佳作」は、実際の文章でどう使えばよいのでしょうか?以下の例文で確認しておきましょう。
【入選の使い方】
- 落選続きだったが、3度目の応募で入選することとなった。
- 芸術的なセンスが認められ、見事二科展に初入選を果たした。
- 彼は絵を描くことが得意であり、コンクールに入選したことがある。
- 彼女の作品は、難関の日本美術展に連続入選を果たしている。
- 入選作品の一部は、オフィシャルサイトから閲覧することができる。
【佳作の使い方】
- 残念ながら選歌とはならなかったが、佳作として新聞には掲載された。
- 本大会では5作品が受賞作として選ばれたものの、すべて佳作とされた。
- 事前の規定通り、大賞1作品・優秀賞1作品・佳作2作品が選ばれた。
- 彼女の絵画は選外佳作に選ばれたので、同誌には掲載される予定です。
- 新人大賞にて選外佳作を受賞後、作家としてデビューすることになった。
なお、すでに何度も登場している「選外佳作」とは、「コンクールにおいて入選には至らなかった(選外)ものの、審査員の高い評価を受け、入選作品に次ぐ賞を与えられた作品」のことです。
コンクールによっては「選外佳作」を単に「佳作」と言うこともありますが、場合によっては「佳作」を「入選」として扱うコンクールもあります。その場合は、「選外佳作」という区分は設けられないことになります。
本記事のまとめ
以上、本記事のまとめです。
「入選」=審査に合格すること・選に入ること。
「佳作」=①「すぐれた作品」②「入賞作品の次にすぐれた作品」
「違い・使い分け」=「佳作」には「入選しなかった作品の内、入選作に次ぐ作品」という意味と「広義の入選作品の内、「入選」に次ぐ評語」としての用法がある。(後者の用例が多い)
どちらの言葉も文学や芸術の世界ではよく使われているものです。ぜひ正しい理解をして今後の使い方を覚えて頂ければと思います。