『なんのために「働く」のか』は、姜尚中による評論文です。教科書・現代の国語にも載せられています。
ただ、本文を読むとその内容が分かりにくいと感じる人も多いと思われます。そこで今回は、『なんのために「働く」のか』のあらすじや要約、語句の意味などを解説しました。
『なんのために「働く」のか』のあらすじ
本文は、内容により3つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。
①人が生きるためにはお金が必要であり、お金を得るためには人は働かないといけない。だが、今は、お金以外にも「働き甲斐」や「夢の実現」などが働くことの大きな要素になっている。たくさんのお金があったとしても、人は本当に働くのをやめるのかといったら、そうでもない。「働いていない」ということが想像以上にコンプレックスになる人もいる。「人はなぜ働くのか」という問いは、簡単なようで意外に深遠な問いである。
②先日、ワーキングプアに関するテレビ番組を見ていた。すると、ホームレスの人が一生懸命働いていたことで、周囲の人からねぎらいの声をかけられて泣いていたシーンを目にした。彼は一生懸命働いていたからこそ、ねぎらいの声をかけられたのである。社会は、基本的に見知らぬ者同士が集まっている集合体である。だから、社会で生きるためには、他者から何らかの形で仲間として承認される必要がある。そのための手段が、働くということなのだ。
③「人はなぜ働かなければならないのか」という問いの答えは、「アテンション」を抜きにしてはありえない。やり甲斐や夢の実現といったものは次の段階だ。アテンションという「承認のまなざし」は、家族ではなく、他者から与えられる必要がある。他者からのアテンションがあることで、社会の中の自分を再確認し、安心感が得られる。そして、自信にもつながっていく。人間は、「自分が自分として生きるために働く」のである。
『なんのために「働く」のか』の要約&本文解説
「人はなぜ働くのか?」という問いに対しては、「お金のため」「家族のため」「生活のため」など様々な答えがあるかと思います。これは、人によって答えが分かれる問題です。
しかし、筆者は、働くことの意味は「他者からのアテンション」そして「他者へのアテンション」だと結論付けています。
「アテンション(attention)」とは「注意、配慮、世話、親切、好意」などを意味する英単語です。つまり、他者から注意、配慮をしてもらったり、逆に他者に世話したり親切な行いをしたりといったことが、「働くこと」の意味だということです。
そして、このアテンションは家族ではなく、社会的な他者から与えられる必要があるだろうとも筆者は述べています。
私たちは、社会の中にいることで自分を再確認できますし、安心感も得ることができます。つまり、人間というのは自分が自分として生きるために働くのだと筆者は考えているわけです。
『なんのために「働く」のか』の意味調べノート
【生存(せいぞん)】⇒生きてこの世にいること。
【働き甲斐(はたらきがい)】⇒仕事で得られる価値や心の満足度。ここでの「甲斐」は、「価値や値打ち」という意味。
【ファクター】⇒要素。要因。
【転職(てんしょく)】⇒他の職に変わること。
【案外(あんがい)】⇒思いのほか。ここでは、副詞的な意味を表す。
【資産家(しさんか)】⇒財産を多く所有する人。
【遺産(いさん)】⇒死後に残した財産。
【境遇(きょうぐう)】⇒その人が置かれた、家庭環境・経済状態・人間関係などの状況。
【深遠(しんえん)】⇒内容が奥深くて容易にはかり知れないこと。
【いのちをつなぐ】⇒ほそぼそと生き続ける。命を保つ。生きのびる。
【幾日(いくにち)】⇒何日。
【目頭を押さえる(めがしらをおさえる)】⇒感激や悲しみのあまり涙がこぼれそうになるのを、指で押さえる。
【(…に類する)】⇒似る。共通点をもつ。
【言葉をつまらせる】⇒問いに対してよい返答が出て来ず困るさま。
【象徴的(しょうちょうてき)】⇒ある物事を象徴するさま。
【ねぎらい】⇒相手の労苦をいたわること。
【顧みる(かえりみる)】⇒気にかける。心配する。
【承認(しょうにん)】⇒認めること。
【称する(しょうする)】⇒名乗る。名づけて言う。
【相互(そうご)】⇒一つの物事に関係する両方の立場。
【やり甲斐(やりがい)】⇒するだけの値うち。
【挙げ句(あげく)】⇒その結果として。結局のところ。
『なんのために「働く」のか』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①別の仕事へテンショクする。
②好きな食べ物をガマンする。
③自分のシサンを増やす。
④恵まれたキョウグウに育つ。
⑤シンエンな意味を持つ。
⑥道路のセイソウをする。
⑦ショウチョウ的な意見。
⑧家庭をカエリみる余裕がない。
⑨仲間としてショウニンする。
⑩メイヨのある地位。
まとめ
以上、今回は『なんのために「働く」のか』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。