『名づけと所有』は、西谷修による評論文です。教科書・現代の国語にも収録されています。
ただ、本文を読むとその内容が分かりにくいと感じる人も多いです。そこで今回は、『名づけと所有』のあらすじや要約、テスト問題などを簡単に解説しました。
『名づけと所有』のあらすじ
本文は、内容により3つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。
①名を与えられることで、ものは形をもって存在し始める。「アメリカ」という名前は、すでに存在していて「発見」されたものにつけられ、新たに作り出されるひとつの世界の名前になった。そのとき、命名はひとつの設定行為へと変化するのだ。この「アメリカ」という名前は、それ以前にあったかもしれない他のあらゆる名前を抹消してしまった。だから、われわれは16世紀初頭に「アメリカ」と呼ばれる前の名前を知らない。
②「アメリカ人」とは、元から住んでいた「インディアン」と呼ばれるようになった人びとではない。「古いヨーロッパ」を脱出した人びとの「約束の地」として開かれる世界とみなした人びとのことである。「アメリカ」の名付けは、単なる陸地の命名だけではなく、「新世界」を設定する行為でもあった。先住民を権利の外に置き、生活圏から駆逐し、「アメリカ」の土地を法的文書にし、取り引きされる所有権の対象へと置き換えたのだ。
③「アメリカ」は、「自由」による世界の書き換えとして成立した。それを推進したのが、自然を人工物に置き換えてゆく「産業」のシステムである。大地を私的所有によって不動産化し、権利書類の上に移し変えた延長で水や空気までが商品化されようとしている。もはや地上には所有権に属さないものはなくなり、誰もが必要なものをすべて所有権者から買わなければならない仕組みになるのだ。
『名づけと所有』の要約&本文解説
本文は、名づけと所有の歴史的経緯・理由が、「アメリカ」を中心とする例をもとに説明されています。
まず第一段落では、『名づけの作用と命名の設定行為』について書かれています。
名づけがなければ、そもそもものは存在しないということ、そして名づけというのは設定行為であり、その具体例として「アメリカ」が引き合いに出されています。
次の第二段落では、『名づけが生む所有の権利システム』について書かれています。
名づけは単に存在を示すだけでなく、所有という行為を呼ぶこと、逆に名づけがなければ所有もありえないことが、名づけと所有の関係をめぐって述べられています。
最後の第三段落では、『「自由」による世界の書き換え』について書かれています。
名づけが進行した現在では、同時に所有も進行し、ほとんどあらゆるものが誰かの所有物になっているため、水や空気にいたるまで商品化しているという現状が述べられています。
このように、本作は、「所有」するためには必ず「名づけ」が必要であり、逆に「名づけ」によって「所有」が発生するということが終始書かれています。
重要なのは、「名づけ」が「発見」だけにとどまらず、「土地の私的所有」に進む、という筆者の主張を読み取ることです。この内容が全体を通した要旨であり、なおかつ本文のタイトルにもなっています。
『名づけと所有』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①現代をショウチョウする出来事。
②証人としてショウカンされる。
③ミワク的な笑顔。
④改革をテイショウする。
⑤悪貨は良貨をクチクする
⑥異教徒をハクガイする。
⑦人権をヨウゴする。
まとめ
以上、今回は『名づけと所有』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。なお、本文中の重要語句については以下の記事でまとめています。