「もんどり打つ」という表現を聞いたことがあるでしょうか?
使い方としては、「もんどりうって倒れた」「もんどりうつほど強烈だ」などのように用いられます。何となく方言にも聞こえますが、実はしっかりとした標準語です。
今回は、「もんどりうつ」の意味や由来、類語・英語訳などについて詳しく解説しました。
もんどりうつの意味
最初に、この言葉の意味を辞書で引いてみます。
【翻筋斗打つ(もんどりうつ)】
⇒とんぼ返りをする。宙返りをする。もんどりうつ。
「もんどりをうつ」に同じ。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「もんどりうつ」とは「とんぼ返りする・宙返りする」という意味です。「とんぼ返り」とは「空中で一回転すること」だと考えてください。
例えば、車にはねられ、空中で飛び上がって回転するような人がいれば、それは「もんどりうつ」と言うことができます。また、プロレスの必殺技などで宙返りさせられるようなことも「もんどりうつ」と言えます。
つまり、「もんどりうつ」とは何かの衝撃や事故などにより、空中で回転する様子を表した言葉ということです。
「もんどりうつ」は、一般的に語尾に「倒れる」がついて使われることが多いです。その理由は、多くの人は空中で一回転などしたら倒れるのが当たり前だからです。
アスリートやアクション俳優などであれば話は別ですが、普通の人であれば空中で体を回転させれば倒れます。そのため、「もんどりうって倒れる」などのように用いるわけです。
もんどりうつの語源・由来
「もんどりうつ」の由来は二つの説があります。一つ目は、「もとどりをうつが変化した」という説です。
「もとどり(本取)」とは「侍などが髪の毛を束ねている箇所」のことです。簡単に言うと「ちょんまげの根元の部分」だと考えて下さい。
この「本取」を打つというのは、相当な勢いで倒れた場合です。例えば、空中でぐるりと回転して、頭から地面に倒れこむようなケースです。
実際に昔の侍は戦いなどで相手を激しく投げ合っていたそうです。この事から、だんだんと「もとどりをうつ」⇒「もんどりをうつ」に変化していったと言われています。
そして二つ目は、「もどりを打つが変化したもの」という説です。
この場合の「もどり」は、「戻り」ではなく「翻(もど)り」という意味の言葉です。
今では「戻る」の方が一般的ですが、昔は「もどる」を「翻る」と書いていました。この「もどり」がリズムを伴う内に、「もんどり」になったという説です。
以上、二つの由来を紹介しましたが、どちらの説も唱えられており、現在では正しい語源がどちらかは分かっていません。ただ、一般的には一つ目の「ちょんまげ」が語源という説が有力と言われています。
なお、「もんどりうつ」は、漢字だと「翻筋斗打つ」と書きます。
「翻」は「翻(ひるがえ)る」とも書き、「裏返る」という意味です。「何かを裏返す」という意味が入っているので、「翻」という字を使います。
もんどりうつの類義語
続いて、「もんどりうつ」の類義語を紹介します。
- ひっくり返る
- 逆さまになる
- 裏返る
- 宙返りする
- 頭から落ちる
- 転落する
- 投げ出される
- ぶっ倒れる
- 落馬する
- 転覆する
- 転げ落ちる
- 回転する
基本的には、「落ちる・逆さまになる」などの意味を持つ言葉が類義語となります。この中でも、「宙返りする」は一番意味が近いので同義語と言っていいでしょう。
また、少し意味の範囲を広げますと、「落馬する・転覆する」などの言葉も類義語だと言えます。
「もんどりうつ」は、何かの衝撃や事故などアクシデントが起こった時に使うということでした。したがって、そこから派生して、馬から落ちたり船が転覆したりする時に使うこともできます。
もんどりうつの英語訳
「もんどりうつ」は、英語だと次のような言い方をします。
「turn over(ひっくり返る)」
「turn a somersault(宙返りする)」
「turn」には「向きを変える」という意味があるので、「over」をつけることで「ひっくり返る」という訳になります。
また、後者の「somersault」は、「トンボ返り・宙返り」などを意味する名詞です。こちらも前に「turn」をつけることで「もんどりうつ」と同じ意味として使うことができます。
例文だと、それぞれ次のような形です。
The truck turned over at the intersection.(そのトラックは交差点でもんどりうった。)
Don’t turn a somersault.(もんどり打つことがないように。)
もんどりうつの使い方・例文
最後に、「もんどりうつ」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 顔面を殴られた相手は、あまりの衝撃にもんどりうつように倒れた。
- プロレスラーの必殺技は、もんどりうつほど強烈だから注意するように。
- もんどりうつように、崖から自転車が落ちていった。大丈夫かな?
- バイクの衝突事故で、運転手がもんどりうつように転んでしまった。
- 上空を移動する飛行機の機体が、急にもんどりうつように大きく動いた。
- 急いでいたのか、足を踏み外して大階段からもんどりうってしまった。
- もんどりをうつように、海へ勢いよくダイビングするなんて豪快だね。
- 敵陣の激しい攻撃により、兵士たちはもんどりうつようにして倒れた。
「もんどりうつ」は、基本的に空中で一回転するような場合に使います。ただし、実際にはドラマのアクション俳優のようなイメージではなく、そこまできれいに回転しなくても使うことはあるようです。
場合によっては、後ろに勢いよく倒れて背中を地面にたたきつける程度でも使うことがあります。このあたりは、臨機応変に使い分けていく必要があるということでしょう。
なお、「もんどりうつ」は例文のように「もんどりをうつ」という言い方をする場合もあります。
一般的な辞書では、「もんどりをうつとも言う」と注釈で表記がされていることが多いです。そのため、どちらを使っても意味自体は同じだと考えて下さい。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「もんどりうつ」=とんぼ返りする・宙返りする。(翻筋斗打つ)
「語源・由来」=「本取(もとどり)をうつが変化した説」が有力。(※本取とはちょんまげのこと)
「類義語」=「ひっくり返る・逆さまになる・宙返りする・転落する・落馬する」
「英語訳」=「turn over」「turn a somersault」
「もんどり打つ」という表現は興味深い由来をもっています。言葉の由来を知ったからには、ぜひ正しい使い方をして頂ければと思います。