見積もり 見積り 見積 違い 使い分け 公用文 正しい どれか

「みつもり」を漢字で書く場合、送り仮名の付け方が問題になってきます。

つまり、「見積もり」と「見積り」のどっちで書けばいいのかということです。また、場合によっては漢字のみで「見積」と表記することもあります。

そこで今回は、これらの「みつもり」の違いや公用文での正しい使い分けなどを解説しました。

見積もり・見積り・見積の違い

 

まず、「みつもり」という語を辞書で引いてみます。

み‐つもり【見積(も)り】

見積もること。また、その数字。「見積もりを立てる」

「見積書」の略。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

「みつもり」は、辞書だと「見積(も)り」と表記されています。すなわち、「見積」「見積り」「見積もり」のいずれの表記も可能ということです。

よって、一般に使う際にはどれを使っても構わないということになります。逆に言えば、どれを使えば正しい・どれを使うと誤りなどではないということです。

ただ、この中だと「見積」が使われる頻度は多くありません。これはなぜかと言いますと、漢字というのは送り仮名をすべて振った方が読みやすいためです。

「見積」と書くよりも「見積り」「見積もり」と書いた方が読みやすいですし、読み間違える恐れも少ないです。そのため、通常は「見積」とは表記しないのです。

「見積」と表記するのは、名詞の一部として使用するようなケースが多いです。

[例]⇒「見積書」「見積価格」「見積依頼書」など。

上記のような名詞の場合、漢字だけが続くため、途中にひらがなを挟むのは心理的な抵抗を感じるという事情もあると思われます。

したがって、このような場合は例外的に「見積」と表記されることが多いわけです。

公用文での正しい表記はどれか?

 

公用文の表記については、文化庁による『送り仮名の付け方』通則4にそのルールが書かれています。

【本則】

活用のある語から転じた名詞及び活用のある語に「さ」,「み」,「げ」などの接尾語が付いて名詞になったものは,もとの語の送り仮名の付け方によって送る。

〔例〕 (1)活用のある語から転じたもの。

動き 仰せ 恐れ 薫り 曇り 調べ 届け 願い 晴れ 当たり 代わり 向かい 狩り 答え 問い 祭り 群れ 憩い 愁い 憂い 香り 極み 初め 近く 遠く

出典:送り仮名の付け方 単独の語 2 活用のない語 通則4

要約しますと、「活用のある語から転じた名詞は、元の語の送り仮名に従って送り仮名を送る」という意味です。

「みつもり」という語は、元々は「みつもる」という動詞から転じた名詞です。このような名詞を「転成名詞」と言います。

「みつもる」は次のように活用していく動詞です。

「みつもナイ みつもマス みつも みつもトキ みつもバ みつも

そして、公用文に関しては『送り仮名の付け方』通則1に「活用のある語は活用語尾を送る」という原則が書かれています。

【本則】

活用のある語(通則2を適用する語を除く。)は、活用語尾を送る。

〔例〕 憤る 承る 書く 実る 催す 生きる 陥れる 考える 助ける 荒い 潔い 賢い 濃い 主だ

出典:文化庁 送り仮名の付け方 単独の語 1 活用のある語 通則1

「活用語尾」とは「活用の形によって変化する部分」のことです。今回の「みつもる」だと「ら・り・る・る・れ・れ」という箇所です。

これに従うならば、「みつもる」は公用文だと「見積る」と表記することになります。

しかし、よく見ると活用のある語の()に「通則2を適用する語を除く」と書かれています。この通則2の内容は、以下の通りです。

【本則】

活用語尾以外の部分に他の語を含む語は,含まれている語の送り仮名の付け方によって送る。(含まれている語を〔 〕の中に示す。)

〔例〕 (1)動詞の活用形又はそれに準ずるものを含むもの。

動かす〔動く〕 照らす〔照る〕 語らう〔語る〕 計らう〔計る〕 向かう〔向く〕 浮かぶ〔浮く〕 生まれる〔生む〕 押さえる〔押す〕 捕らえる〔捕る〕 勇ましい〔勇む〕 輝かしい〔輝く〕 喜ばしい〔喜ぶ〕 晴れやかだ〔晴れる〕
及ぼす〔及ぶ〕 積もる〔積む〕 聞こえる〔聞く〕 頼もしい〔頼む〕

出典:送り仮名の付け方 単独の語 1 活用のある語 通則2

「積もる」は、活用語尾以外の部分に「積む」という他の語を含む語です。このような語は、含まれている語(積む)によって送り仮名を送るというのが通則2の内容です。

そのため、「みつもる」も同様に「見積もる」と表記するのが原則です。

以上の事から考えますと、公用文に関しては「見積もり」と表記するのが原則ということになります。

なぜなら、先述したように「みつもり」という語は、活用のある語「みつもる」から転成した名詞だからです。「みつもる」を「見積もる」と表記する以上、「みつもり」も「見積もり」と表記するのが原則となります。

「見積り」も許容されている表記

 

ただ、「見積もり」が原則的な表記ではあるものの、「見積り」も許容はされています。「許容」とは、簡単に言うと「推奨はしていないけども、使用を許している」という意味です。

まず、「見積り」の許容に関しては通則2にその内容が記述されています。

【許容】

読み間違えるおそれのない場合は,活用語尾以外の部分について,次の( )の中に示すように,送り仮名を省くことができる。

〔例〕

浮かぶ〔浮ぶ〕 生まれる〔生れる〕 押さえる〔押える〕 捕らえる〔捕える〕 晴れやかだ〔晴やかだ〕 積もる〔積る〕 聞こえる〔聞える〕 起こる〔起る〕 落とす〔落す〕 暮らす〔暮す〕 当たる〔当る〕 終わる〔終る〕 変わる〔変る〕

出典:送り仮名の付け方 単独の語 1 活用のある語 通則2

つまり、読み間違える恐れのない場合は「積る」と表記しても構わないということです。

通常の文であれば、「積る」は「つもる」と読む表記であり、読み間違える恐れというのはありません。積(つ)る、積(せき)るなどと読む人などはまずいないでしょう。

そのため、「積る」「見積る」「見積り」などと表記することも許容しているのです。

また、その他の出典としては内閣訓令による『公用文における漢字使用等について』でも「見積り」の使用は許容されています。

(別紙)公用文における漢字使用等について

2 送り仮名の付け方について(1)

公用文における送り仮名の付け方は,原則として,「送り仮名の付け方」(昭和48年内閣告示第2号)の本文の通則1から通則6までの「本則」・「例外」,通則7及び「付表の語」(1のなお書きを除く。)によるものとする。ただし,複合の語(「送り仮名の付け方」の本文の通則7を適用する語を除く。)のうち,活用のない語であって読み間違えるおそれのない語については,「送り仮名の付け方」の本文の通則6の「許容」を適用して送り仮名を省くものとする。なお,これに該当する語は,次のとおりとする。

明渡し 預り金 言渡し 入替え 植付け 魚釣用具 受入れ 受皿 受持ち 受渡し ~(以下略) 見積り

出典:常用漢字表 別紙 公用文における漢字使用等について

要約しますと、「複合の語のうち、活用のない語でも読み間違えるおそれがなければ送り仮名を省いていい」という内容です。

複合の語というのは、「見積もり」のように2つ以上の語(この場合だと「見る」と「積もる」)が合わさった語のことです。「みつもり」という語自体は名詞なため、活用はありません。

このような複合語は、例にあるように公用文であっても「見積り」と表記し、送り仮名を省いてもよいということです。

「見積」も許容はされている表記

 

また、「見積」に関しても公用文では許容されている表記です。その根拠は、『送り仮名の付け方』通則6に書かれています。

【本則】

複合の語(通則7を適用する語を除く。)の送り仮名は,その複合の語を書き表す漢字の,それぞれの音訓を用いた単独の語の送り仮名の付け方による。

【許容】 

読み間違えるおそれのない場合は,次の( )の中に示すように,送り仮名を省くことができる。

〔例〕 売り上げ(売上げ・売上)取り扱い(取扱い・取扱) 乗り換え(乗換え・乗換) 引き換え(引換え・引換) 申し込み(申込み・申込) ~(以下略)

出典:送り仮名の付け方 複合の語 通則6

上記の「許容」には「見積」という表記はありません。

しかしながら、「みつもり」という語自体は複合の語であり、それぞれの音訓を用いた単独の語によって送り仮名をつける「見積もり」という表記が原則です。

そして、なおかつ読み間違えるおそれのない表記です。

これが例えば、「乗降」などの複合語であれば「じょうこう」と読むのが原則であるものの、「のりおり」と読み間違えるおそれがゼロではありません。

しかし、「見積」に関しては「けんせき」などと読み間違える人はまずいないはずです。

このような語に関しては、通則6の許容に則り公用文でも「見積」という表記が許容されているということです。

ただ、たとえ公用文であっても「見積」と書く場合は「見積書」「見積金額」などのように名詞の一部として用いられることが多いです。

まとめ

 

以上、本記事のまとめとなります。

【一般に使う際】⇒「見積」「見積り」「見積もり」のどれを使っても構わない。「見積」は名詞の一部として用いる場合に使う。

【公用文で使う際】⇒「見積もり」と表記するのが原則。(「見積」「見積り」は許容内)

私たちが一般的な文章で使う分にはどれを使ってもよいです。ただ、公用文に関しては原則的に「見積もり」と書きます。

その他、ビジネス文書や新聞、雑誌などの放送業界においてもこれにならい「見積もり」と書くのが基本ルールとなっています。「見積り」や「見積」も許容はされていますが、「見積もり」に比べれば用途が限定されている語だと考えて問題ありません。