「愛でる」という言葉をご存知でしょうか?「愛」という字が入っているので、何となくのイメージは持てるかもしれません。
ただ、実際はこの言葉の意味が分かりにくいと感じる人も多いようです。そこで今回は、「愛でる」の意味や読み方・使い方・類語・同義語などを詳しく解説しました。
愛でるの意味・読み方
まず、「愛でる」を辞書で引くと次のように書かれています。
【愛でる(めでる)】
①美しさを味わい感動する。「月を―・でる」
②いつくしみ、愛する。かわいがる。「小鳥を―・でる」
③感心する。ほめる。「勇気に―・でてその行動を許す」
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「愛でる」は「めでる」と読みます。「あいでる」とは読まないので注意してください。
意味としては、大きく分けて3つあります。
1つ目は、①「美しさを味わって感動する」という意味です。この場合は主に、植物や月など自然の対象に対して使います。
- 花を愛でる。
- 月を愛でる。
日本人は昔から自然を愛して大切にしてきました。そして、その美しさに対して価値を認めてきました。
だからこそ、これらの美しさに触れた時に「味わいながら感動する」という意味で「愛でる」と言うのです。
そして、2つ目は、②「いつくしんで愛する・かわいがる」などの意味です。この場合は、人間や小動物などに使うことが多いです。
- 子供を愛でる。
- 小鳥を愛でる。
「いつくしむ」とは、強い立場の者が弱い立場の者に対してかける情のことです。
したがって、目下の人から目上の人に対して「愛でる」と言うようなことはありません。目上の人に使うような時は、「敬愛する」など別の言い方となります。
そして、最後は③「感心する・ほめる」という意味です。この場合は文字通り、相手に対して感心したりほめたりするような際に使います。
- 勇気ある彼の行動を愛でる。
- 生徒の発言を愛でる。
以上、3つの意味を紹介しましたが、一般的には①の意味で使われることが多いです。②や③の意味として使うことは少ないですが、念のため覚えておくとよいでしょう。
愛でるは古文が由来
次に、「愛でる」の語源を見ていきます。「愛でる」の原型は「愛(め)づ」から来ています。
YahooやGoogleで検索すると、「愛でる 方言」などの関連語が出てきていますが、特に何か具体的な方言があるわけではありません。
「愛づ」は元々、「竹取物語」などの古文に登場しており、「愛する・思い慕う」「賞賛する・ほめる」「好きになる」などの意味の古語として使われていました。
以下、実際の引用部分です。
「いかでこのかぐや姫を得てしがな、見てしがなと、おとに聞きめでてまどふ」
出典:竹取物語 貴公子たちの求婚
「光る君といふ名は、高麗人(こまうど)のめできこえて、付け奉りける」
出典:源氏物語 桐壺
上記の作品では、「めで」が使われていますが、実際に活用させると以下のように語尾が変化していきます。
「で/で/づ/づる/づれ/でよ」
この「づ」が変化していき、「~でる」になったと言われています。
なお、「愛」という字は、「人間が後ろを振り返る姿」+「心」+「足」を表す象形文字からできた言葉です。
したがって、「愛」の本来の意味は、「人がゆっくり歩きながら後ろを振り返ろうとする心情」ということになります。
「愛」の語源については諸説ありますが、少なくとも現在の英語の「LOVE」のようなイメージではありません。
もっと人が風情を感じるような、物悲しい様子を表した字が「愛」の本来の意味ということです。
愛でるの類義語
続いて、「類義語」を見ていきましょう。「愛でる」の「類義語」は、以下のように3つの意味に分けることができます。
①「美しさを味わって感動する」
- 感心する
- 感嘆する
- 崇(あが)める
- 心惹かれる
- ほれぼれする
- 見とれる
- ほれ込む
②「いつくしんで愛する・かわいがる」
- 好む
- 慈しむ
- 愛好する
- 溺愛する
- 寵愛する
- 可愛がる
- 大切にする
- 重宝する
③「感心する・ほめる」
- 称賛する
- 賞賛する
- 絶賛する
- 称する
- 敬う
- 見上げる
- 高く評価する
「愛でる」は多義的な言葉なので、意味が1つに定まるということはありません。
したがって、全く意味の同じ言葉、すなわち「同義語」と呼ばれるものはないと考えて下さい。
愛でるの英語訳
「愛でる」は、英語だと以下のような言い方があります。
- 「be impressed(感動する)」
- 「love(愛する)」
- 「appreciate(評価する)」
- 「admire(称讃する)」
- 「cherish(かわいがる)」
- 「treasure(大事にする)
この中でも使いやすいのが、「be impressed」と「love」の2つです。「love」は、ご存知の通り「愛する」という意味です。
英語では、日本語のようにそこまで「愛」や「感動」を表す単語はありません。そのため、迷ったらこの2つを使えばよいでしょう。
例文も紹介しておくと、以下のような形です。
I was impressed by this dish.(私はこの料理に感動した。)
My children love ice cream.(子供達はアイスクリームを愛している。)
どちらも簡易的な表現として使われるのが特徴です。
愛でるの使い方・例文
最後に、「愛でる」の使い方を具体的な例文で紹介しておきます。
- 花を愛でるように、ゆっくりと彼女は歩いて行った。
- 彼女は一人で物寂しく、紅葉を愛でる旅に出かけていった。
- 美術品を愛でるのは、あいつにとって一番の楽しみかもしれない。
- 彼は月を愛でる時間が長ければ長いほど幸せを感じるようだ。
- 自然を愛でることができないと、レンジャーにはなれない。
- 兄は年下の弟を賛でるように、いつもかわいがっていた。
例文を見てみると、「愛でる」はやはり「美しさを味わって感動する」という意味で使うことが多いです。
特に、「花」に対して使うことが多い言葉だと言えます。花の美しさや素晴らしさ、かわいらしさなどに、心から声を上げて感心するような時に使います。
逆に言えば、ちょっとやそっとくらいの程度で感動したような時には使わない言葉です。「愛でる」は、本気で心底、感動するような時に使います。
また、最後の6.の例文にもあるように、「愛でる」は「賛(め)でる」と書くこともあります。どちらを使っても、意味自体に違いはありません。
「賛」は「称賛」の「賛」と同じ漢字で、「ほめる」という意味があるため、「賛」という漢字を使う場合もあるのです。
まとめ
以上、今回のまとめとなります。
「愛(め)でる」=①「美しさを味わって感動する」②「いつくしんで愛する・かわいがる」③「感心する・ほめる」
「語源」=「愛(め)づ」が変化した形から。
「類義語」=「心惹かれる・慈しむ・称賛する」など他多数。
「英語訳」=「be impressed」「love」など。
「愛でる」は、現在でもよく使われる言葉です。自然以外に人にも使われるので、ぜひこの機会に覚えておくとよいでしょう。