まな板の上の鯉 なぜ鯉 語源 由来 慣用句 言い換え

「まな板の上の鯉」という慣用句をご存知でしょうか?病院で手術をする際などによく使われ、「まな板の鯉」と言ったりもします。

ただ、そもそも他の魚ではなく「なぜ鯉なのか?」といった疑問があります。そこで今回は、「まな板の上の鯉」の語源や由来、類語、英語訳などを含め詳しく解説しました。

「まな板の上の鯉」の意味・読み方

 

最初に、読み方と基本的な意味を紹介します。

【俎板の鯉(まないたのこい)】

相手のなすがままになるよりほかにどうしようもない状態。死を待つよりほかに方法のない運命のたとえ。俎上(そじょう)の魚。

出典:精選版 日本国語大辞典

まな板の上の鯉」は、「まないたのうえのこい」と読みます。

意味は「相手のなすがままになるより他にどうしようもない状態」を表したものです。

例えば、あなたが病気にかかり、大がかりな手術を受けることになったとします。色々と話し合った結果、最終的には覚悟を決めてすべてを医者に任せることにしました。

このような場面で、「彼はまな板の上の鯉になることを決めた」などと言うわけです。つまり、「まな板の上の鯉」とは「相手の意のままになるしかなく、逃げ場のない状態にあること」を例えた慣用句ということです。

場面にもよりますが、「死を覚悟するしかない」「死を待つばかりの運命である」といった様子を例える際にも使われます。

「まな板の上の鯉」の語源・由来

 

「まな板の上の鯉」の語源は、「まな板の上に載せた鯉は、すぐに静かに大人しくなること」から来たと言われています。

ただ、実際にまな板の上に鯉を載せても、当たり前ですがジタバタと激しく抵抗します。鯉だけがおとなしい特殊な魚というわけではないのです。

実はこのことわざの語源は、板前さんの技術と関係しています。

鯉は鮮度が重要な魚なので、通常は生きたまま調理をします。そのため、調理をする際には生きのいい状態からおとなしくさせなければいけません。

そこで板前さんは、ちょっとした技術を使います。それが、「鯉の側線を包丁の裏でなでる」といったことです。

鯉の側線は、水流や水圧を感知する敏感な感覚器なので、包丁などでなでられると失神してしまいます。

この事から、「相手のなすがままになるしかない」という状況を表すようになったと言われています。

つまり、「まな板の上の鯉」の正しい由来は「側線を包丁で刺激された鯉が、失神して動けなくなる様子」からできたものということです。

なお、「鯉」以外の魚も「側線」は持っています。そのため、「まな板の鯉」ではなく「まな板の魚」「俎上(そじょう)の魚」と言ったりもします。

ではなぜ鯉なのか?という話ですが、それは、鯉こそが古くから日本で親しまれてきた魚だからです。

現代の私たちは、「魚「=「マグロ・シャケ・サバ」などのように多くの種類を連想しますが、古くは「魚」=「鯉」というイメージしかない時代もありました。

その時の名残りがあるため、他の魚ではなく「鯉」が使われているのです。

「まな板の上の鯉」の類義語

まな板の上の鯉 類義語 言い換え 同義語

「まな板の上の鯉」は、次のような類義語で言い換えることができます。

  • 腹をくくる
  • 覚悟を決める
  • ジタバタしない
  • 天命に従う
  • 運を天に任せる
  • 万策尽きる
  • 万事休す
  • まな板の鯉
  • 俎上の魚
  • 煮るなり焼くなり

一般的な表現だと「腹をくくる」「覚悟を決める」といった語がよく使われます。

また、慣用句だと「万事休す」が有名です。「万事休す」とは「もはや施す手段がなく、すべてが終わりである」という意味の言葉です。

「できることがもうない・すべてが終わりになる」といった絶望的な状況を表すような際に使われます。

その他、「まな板の鯉」「俎上の魚」などは同じ意味の言葉なので、同義語と考えて問題ありません。

「まな板の上の鯉」の英語訳

 

「まな板の上の鯉」は、英語だと次のように言います。

Carp on a cutting board

「cutting board」は「切る板」と訳すことから「まな板」を意味します。また、「carp」は「鯉」という意味です。

この事から、「まな板の上にいる一匹の鯉」⇒「まな板の上の鯉」と訳すことができます。

「まな板」は、「cutting board」の代わりに、「chopping board」でも同じ意味となります。「chop」とは「切る・ぶち切る」などの意味です。

他には、「be prepared(覚悟を決める・腹ができている)」などの表現を使うことも可能です。

He was prepared and acted.(彼は覚悟を決めて行動した。)

「まな板の上の鯉」の使い方・例文

 

最後に、「まな板の上の鯉」の使い方を例文で紹介しておきます。

  1. 手術が始まったらどうせ何も抵抗できない。まな板の上の鯉になった気分で覚悟するよ。
  2. 明日は痔の手術だけど、こればっかりは自分ではどうしょうもない。まな板の鯉と同じだ。
  3. 初めての人間ドックだったけど、まな板の上の鯉のような感じで、なすがままだったよ。
  4. あいつは追い詰められると本当に弱いね。まな板の上の鯉といった感じで無抵抗になるよ。
  5. 彼は言い逃れのできない状況まで問い詰められ、まな板の上の鯉のような状態であった。
  6. 相手から徹底的に論破され、まな板の上の鯉と言ってもいいほど何も反論できなかった。

 

「まな板の上の鯉」は、病院に行き手術を受ける際に使われることが多いです。

手術を受ける際の「手術台」と、料理をする際の「まな板」を重ね合わせることで、「絶望的で逃げ場のない状況」を例えて使われます。

他には、言い逃れのできない状況や反論できない状況をたとえて用いられることもあります。その人にとって、「逃げ場のない状況」であれば、基本的に使うことができる慣用句です。

まとめ

 

以上、本記事のまとめとなります。

まな板の上の鯉」=相手のなすがままになるより他にどうしようもない状態。

語源・由来」=側線を包丁で刺激された鯉が、失神して動けなくなる様子から。

類義語」=「腹をくくる・覚悟を決める・ジタバタしない・天命に従う・万事休す」など。

英語訳」=「Carp on a cutting board」「be prepared」

「まな板の上の鯉」は、料理人が上手く技術を使うことにより生まれた慣用句です。鯉という生き物の性質を表した言葉ではありません。正しい由来を知った上で、実際の文章で使って頂ければと思います。