第三段落の言葉一覧
かくて三年ばかり~
【かくて】⇒こうして。
【包む(つつむ)】⇒包み隠す。
【好尚(こうしょう)】⇒好み。嗜好。
【~なるらむ】⇒~なのであろう。
【神童(しんどう)】⇒才知の極めてすぐれている子供。非凡な才能をもった子供。
【所動的(しょどうてき)】⇒受動的。
【器械的(きかいてき)】⇒意思を失い、指示通りに動くさま。
【やうやう】⇒だんだん。
【我ならぬ我(われならぬわれ)】⇒自分ではない自分。偽りの自己。
【雄飛(ゆうひ)】⇒大きな志を抱き、盛んに活動すること。
【獄を断ずる(ごくをだんずる)】⇒他者を裁く。
【よろしからず】⇒適当ではなく。ふさわしくなく。
【諳じて(そらんじて)】⇒暗唱して。暗記したことを口に出して唱えて。
【思ふやう(おもうよう)】⇒思うには。
【なほ】⇒まだ。
【瑣々たる(ささたる)】⇒瑣末な。どうでもいい。
【いらへ】⇒返事。返答。
【かかづらふ】⇒こだわる。拘泥する。
【だに】⇒~でさえ。
【得たらんには】⇒会得したときには。
【紛々たる(ふんぷんたる)】⇒ごたごたと入り乱れた。
【破竹の如く(はちくのごとく)】⇒刀で竹を裂くように一気に。
【広言(こうげん)】⇒無責任に大きなことを言い散らすこと。
【よそにして】⇒ほったらかして。
【漸く(ようやく)】⇒次第に。だんたん。
【蔗を嚼む(しょをかむ)】⇒次第に興味を持つ。
【面もち(おももち)】⇒顔つき。
【いかでか】⇒どうして。
【猜疑(さいぎ)】⇒何かたくらんでいるのではないかと疑うこと。
【讒誣(ざんぶ)】⇒事実ではないことを言いたてて他人を中傷すること。
【其故(それゆえ)なくてやは。】⇒理由がないことがあろうか。(いやあるだろう)(反語の表現)
【球突き(たまつき)】⇒ビリヤード。
【かたくななる心】⇒頑固な性格。
【慾(よく)を制する力】⇒欲望を制する力。
【且は(かつは)】⇒一方では。
【知らねばなり】⇒知らないからだ。
【故よし(ゆえよし)】⇒いわれ。理由。
【合歓(ねむ)】⇒マメ科ネムノキ亜科の落葉高木。
【処女(しょじょ)】⇒未婚の女性。性交の経験のない女性。
【長者(ちょうじゃ)】⇒年長者。目上の人。
【学の道(まなびのみち)】⇒学問の道。
【仕の道(つかえのみち)】⇒役人の道。
【よくしたる】⇒うまくできた。
【一条に(ひとすぢに)】⇒ただ一つに。
【外物(がいぶつ)】⇒自分以外の事物。
【棄てゝ顧みぬ(すててかえりみぬ)】⇒捨てて振り返らない。
【有為(ゆうい)】⇒能力があること。優れていること。
【天晴(あっぱれ)】⇒すばらしい。見事な。
【豪傑(ごうけつ)】⇒才知に並み外れてすぐれていて、度胸のある人物。
【せきあへぬ】⇒せきとめられない。
【手巾(しゅきん)】⇒ハンカチ。
【怪し(あやし)】⇒不思議だ。
【なかなかに】⇒むしろ。かえって。
【さることなり】⇒そのとおりだ。全くそうだ。
【ふびん】⇒あわれむべきこと。
【面(おもて)】⇒顔。
【赫然(かくぜん)】⇒輝くさま。
【坐(ざ)して】⇒座って。
【鼻を挾(はさ)ませて】⇒鼻眼鏡をかけて。
【レエベマン】⇒道楽者。
【やう】⇒方法。すべ。
【冤罪(えんざい)】⇒無実の罪。
【暫時(ざんじ) 】⇒しばらく。少しの間。
【無量(むりょう)】⇒はかり知れないほど多い。
【艱難(かんなん)】⇒困難。苦難。
【閲し尽す(けみしつくす)】⇒経験し尽くす。
【媒(なかだち)】⇒間接的な原因。誘因。
第四段落の言葉一覧
或る日の夕暮なりしが~
【獣苑(じゅうえん)】⇒動物公園。今でいう動物園のこと。
【漫歩(まんぽ)】⇒あてもなくぶらぶら歩き回ること。
【僑居(きょうきょ)】⇒仮の住まい。
【クロステル巷(こう)】⇒原語だと「修道院(僧院)通り」。クロステルとは都市の名前。
【古寺(こじ)】⇒古い寺院。ここでは教会のこと。
【燈火(ともしび)】⇒明かり。
【楼上(ろうじょう)】⇒高い建物の上。
【木欄(おばしま)】⇒木の手すり。
【敷布(しきふ)】⇒シーツ。
【襦袢(はだぎ)】⇒肌着。
【猶太教徒(ユダヤきょうと)】⇒ユダヤ教徒。
【翁(おきな)】⇒老人。
【戸前(とまえ)】⇒ドアの前。
【梯(はしご)】⇒階段。
【楼(たかどの)】⇒階上。二階。
【窖(あなぐら)】⇒穴倉。地下室。
【鍛冶(かじ)】⇒鉄などの金属を熱して打ち鍛え器物をつくる職人。
【引籠みて(ひっこみて)】⇒引っこんで。
【恍惚(こうこつ)】⇒うっとりすること。心を奪われて見入ること。
【暫し(しばし)】⇒しばらく。
【処(ところ)】⇒場所。
【倚(よ)りて】⇒寄りかかって。
【声を呑(の)みつゝ泣く】⇒声を飲みこみながら泣く。
【被りし巾(きれ)】⇒被っている布。スカーフのこと。
【詩人の筆なければ】⇒詩人の才能がないので。
【写すべくもあらず】⇒書き写すことができない。表現することができない。
【清らにて】⇒気品があって美しい。華やかで美しい。
【愁(うれひ)】⇒物悲しさ。
【露を宿せる(ろをやどせる)】⇒涙を宿した。
【一顧(いっこ)】⇒一度振り返ること。
【徹したるか】⇒貫いたのか。
【料らぬ(はからぬ)】⇒予期せぬ。思いがけない。
【歎き(なげき)】⇒嘆き。
【泣くにや】⇒泣いているのであろうか。
【憐憫(れんびん)】⇒哀れみ。
【繋累(けいるい)】⇒つながり。両親、妻子、兄弟など。
【外人(よそびと)】⇒よそ者。外国人。
【黄なる面(きなるおもて)】⇒黄色い顔。白人に対する黄色人種としての意味。
【打守りしが(うちまもりしが)】⇒じっと見つめていたが。
【真率なる(しんそつなる)】⇒まじめで正直な。
【色(いろ)】⇒顔色。表情。
【見ゆ】⇒見える。思われる。
【酷く(むごく)】⇒ひどく。
【恥なき人】⇒恥のない人間。
【従はねば】⇒従わないから。
【葬(ほうむ)らではかなはぬ】⇒葬らないわけにはいかない。
【欷歔(ききょ)】⇒すすり泣くこと。むせび泣き。
【我眼は(わがまなこは)】⇒私の眼は。
【顫(ふる)ふ】⇒震える。
【項(うなじ)】⇒首の後ろ。
【送り行かんに】⇒送って行くから。
【な~そ】⇒~してはいけない(軽い禁止表現)
【往来(おうらい)】⇒人や乗り物が行き来する場所。道路。
【筋向ひ(すじむかい)】⇒斜めに向かい合っている場所。
【梯(はしご)】⇒階段。
【咳枯れたる(しわがれたる)】⇒しおがれた。
【老媼(おうな)】⇒老婆。
【あららかに】⇒乱暴に
【腰を折りて潜るべき程の】⇒腰を曲げるとくぐることができるくらいの。
【悪(あ)しき相】⇒悪い人相。
【額に印す(ぬかにしるす)】⇒額にきざみつける。
【獣綿(じゅうめん)】⇒毛織物。
【たて切りつ】⇒閉めきった。
【油灯(らんぷ)】⇒ランプ。
【漆(うるし)】⇒ウルシの樹液に、油や着色剤などを加えて製した塗料。
【仕立物師(したてものし)】⇒服を作る職人のこと。
【すぎぬ】⇒亡くなった。
【名なるべし】⇒名前なのだろう。
【慇懃(いんぎん)に】⇒礼儀正しく。丁重に。
【廚(くりや)】⇒台所。厨房。
【麻布(あさぬの)】⇒麻糸で織った布。
【臥床(ふしど)】⇒ベッド。
【伏(ふ)したる】⇒横になっている。
【竈(かまど)】⇒ 土・石・煉瓦などでつくった煮炊きするための設備。
【マンサルド】⇒フランス語で「屋根裏部屋」。
【一間(ひとま)】⇒一室。
【梁(はり)】⇒柱の上に張りわたして屋根を支えるもの。
【氈(かも)】⇒毛織物の敷物。ここではテーブルクロスを指す。
【写真帖(しゃしんちょう)】⇒アルバム。
【陶瓶(とうへい)】⇒陶製の花瓶。
【そが傍(かたわら)】⇒そのそば。
【羞を帯びて(はぢをおびて)】⇒恥ずかしそうに。
【乳の如き(ちのごとき)】⇒ミルクのような。
【微紅(うすくれない)】⇒薄い紅色。
【潮(さ)したり】⇒表に表している。表面に見せている。
【たをやかなる】⇒しなやかである。
【訛る(なまる)】⇒言葉や発音がくずれる。標準語とは異なった言い方をする。上・中流市民の正しい言葉遣いでないことを表している。
【なるべし】⇒であろう。であるにちがいない。
【よも~じ 】⇒まさか~しないでしょう。「けっして憎まないように。」という懇願。
【知らでやおはさん】⇒知らないことでいらっしゃいましょう。ご存じないでしょう。
【「ヴィクトリア」座】⇒ウンテルデンリンデンの南方二㎞ほどにあった二流劇場。エリスの所属していた一座の名前。
【座頭(ざがしら)】⇒座長。
【抱へ(かかへ)】⇒雇い人。使用人。人に雇われて働く人。
【事なく(ことなく)】⇒何事もなく。問題なく。
【憂ひ(うれい)】⇒嘆き。悲しみ。
【いひ掛け(いいがけ)】⇒言いがかり。
【給金(きゅうきん)】⇒給料。賃金。
【還し参らせん(かえしまいらせん) 】⇒お返し申し上げます。(謙譲語)。
【よしや~とも】⇒たとえ~でも。
【媚態(びたい)】⇒。男にこびるなまめかしい女の態度。
【かくし 】⇒ふところ。ポケット。
【マルク】⇒かつてのドイツの通貨の単位。日本で言う「円」。
【急(きゅう)をしのぐ】⇒急ぎの問題を解決する。とりあえず間に合わせる。
【質屋(しちや)】⇒物品を質にとって金銭の貸し付けを行う店。
【取らすべきに】⇒取らせることができようから。
【辞別(わかれ)】⇒お別れ。
【はらはら】⇒小さいものや軽いものが、静かに続けて落ちかかるさま。
【手の背(てのそびら)】⇒手の甲。
【濺(そそ)ぎつ】⇒注いだ。