魂込め 要約 あらすじ テスト対策 主題 目取真俊 ノート 解説

『魂込め』は、目取真俊という作者によって書かれた作品です。教科書・文学国語にも掲載されています。

ただ、本文を読むとその内容が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、『魂込め』のあらすじや要約、語句の意味などを解説しました。

「魂込め」の作品紹介と背景

 

本作『魂込め(まぶいぐみ)』は、沖縄県出身の小説家目取真俊が手がけた短編集で、表題作「魂込め」をはじめ6編を収録しています。 

発刊は1999年(朝日新聞社)で、その後文庫版も刊行されました。 沖縄の風土、戦争の記憶、日常と非日常が交錯する幻想的な世界観が特徴です。 

著者は1960年沖縄県今帰仁村生まれで、琉球大学法文学部を卒業。1997年に芥川賞を受賞するなど、沖縄文学の重要な担い手として位置づけられています。 

また本短編集は、第26回(2000年)川端康成文学賞を受賞しており、文学的にも高く評価されています。 

「魂込め」というタイトル自体が、沖縄の方言「まぶい(魂)」を手繰るような語感を持ち、「魂を込める」という行為と、魂そのもの=まぶいを巡る喪失・回帰の物語を暗示しています。

「魂込め」のあらすじ解説

 

ここでは、収録短編のうち「魂込め(まぶいぐみ)」のあらすじを詳しく整理します。

舞台は、戦争末期の1945年、沖縄諸島。この地で多くの民間人が犠牲になった地上戦があったことが前提です。 
主人公の一人である幸太郎は、乳児のころに戦争で両親を失い、祖母代わりの女性ウタによって育てられます。 
中年(50代)になったある日、幸太郎は「魂(まぶい)を落とす」現象に見舞われます。彼の肉体から魂が抜け、「海を見つめて漂う魂」と化してしまうのです。 

そのうち、口に大ヤドカリ(沖縄方言で“アーマン”)が棲みついてしまい、肉体に戻れない状態が続きます。ウタは魂を戻そうと祈り、儀式を試みますが、なかなか戻りません。 

やがて、幸太郎の魂が漂っていた場所が、戦争時代に殺されたオミトという女性が卵を取りに来ていた海ガメの産卵場であったこと、そしてその場が戦闘の傷痕を帯びていたことが明らかになります。 

最終的には、魂は海へと流れ、幸太郎の肉体もそのまま倒れて死を迎え、ウタの祈りは届きません。悲しみと記憶の海がそこにはあったのです。 

この短編は、戦争という歴史の悲劇と、沖縄の風土に根ざした「魂=まぶい」の喪失と回帰(あるいは回帰不能)を幻想的な語りで描いています。語り手の視点、時間の交錯、実/幻想の境界が曖昧になる構成も特徴的です。

主題・構造・象徴の読み取り

 

この見出しでは、作品が扱う主題や構造、象徴・モチーフについて整理します。

主題

主題としてまず挙げられるのが「記憶と喪失」です。戦争で奪われた命、土地、魂。表題作では、幸太郎の魂が抜けるというありえない事態を通じて、戦争がもたらした喪失を象徴的に描いています。

次に「場所・風土と個人の関わり」です。沖縄という地が持つ自然、戦争の傷痕、基地や占領下の記憶などが背景として機能し、個人(ウタ・幸太郎)の体験がその風土の中に埋め込まれています。 

さらに「魂(まぶい)の身体化/分離」という観点もあります。魂が肉体を離れる、あるいは戻らないというモチーフは、身体・精神・場所・時間が交錯する文学的装置です。

根底にあるのは、太平洋戦争における沖縄戦の悲劇の記憶であり、人々の過酷な運命を忘れまいという作者の視点です。同時にそれは、基地の島沖縄を抱える現代日本への批判ともなっています。

構造

時間的には過去(戦時)と現在(戦後)が交錯します。表題作では、戦時の風景(ウタの村、海ガメ産卵場、空襲)と、現代に生きる幸太郎・ウタの姿が重なり合う構成です。 

語りの視点も固定されず、ウタの回想、幸太郎の魂漂流、第三者的な描写が混在します。これは「現実」と「幻想」の境界を揺らがせる効果があります。

また、象徴的なモチーフが反復されます。例えば、「海」「ヤドカリ(アーマン)」「魂(まぶい)」「産卵の海ガメ」「戦争跡地」などです。これらが一つの象徴ネットワークをなして、物語に深みを与えています。

象徴・モチーフ

海:沖縄の海、産卵に訪れる海ガメ、魂の漂流。海は「記憶の場」「魂の帰る場」「喪失の場」として機能します。

ヤドカリ(アーマン):口に宿るヤドカリという奇怪な描写が、魂が抜けた肉体=空殻化を象徴します。
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魂(まぶい):沖縄方言で「まぶい」は“魂”を意味し、これが本作の鍵語です。魂の離脱・漂流という構図が、戦争被害・個人の傷を暗示します。

戦争の傷痕・村・産卵場:戦時中に村が壊滅し、海ガメの産卵場が殺害現場ともなっていたことが、風土と歴史の暗部を示しています。

こうした構造・象徴を読み取ることで、作品の深い意味へと接近できます。

「魂込め」の意味調べノート

 

【鼻で笑い(はなでわらい)】⇒あざけり笑うさま。

【濡れ縁(ぬれえん)】⇒古い日本家屋で、家の外側に張り出した、雨に濡れる場所の縁側。

【すえつけた】⇒取り付けた。

【小太り(こぶとり)】⇒やや太っているさま。

【とりあおうとしなかった】⇒まともに相手になろうとしなかった。

【とって返す】⇒すぐ戻る。

【耳障り(みみざわり)】⇒聞いて不快に感じるさま。

【子供たちの手前(こどもたちのてまえ)】⇒子どもたちがいる体裁上。

【妥協(だきょう)】⇒意見の対立をおさめるために互いに譲り合うこと。

【教育上がり(きょういくあがり)】⇒もと教員。

【盛況(せいきょう)】⇒人が多く集まり、にぎわっているさま。

【血色のいい(けっしょくのいい)】⇒顔の色つやがよい。

【半農半漁(はんのうはんぎょ)】⇒農業と漁業の両方で生計を立てていること。

【乳飲み子(ちのみご)】⇒まだ乳を飲んで育つ幼い子ども。

【魂(まぶい)】⇒沖縄方言で“魂”の意味。人の命や心の本質を表す。

【あまりのこと】⇒思いがけないこと。

【興がのる(きょうがのる)】⇒楽しさが高じる。

【つま弾き(つまはじき)】⇒(弦楽器の糸を)指の先で弾き。

【いい塩梅で(いいあんばいで)】⇒ちょうどよい具合に。

【大事(だいじ)】⇒大変なこと。

【かざす】⇒頭の上に構える。

【横着が過ぎる(おうちゃくがすぎる)】⇒あまりにずうずうしい。

【御願(うがん)】⇒沖縄で神仏に祈ること。

【膝をかかえて(ひざをかかえて)】⇒所在なさと不安を表す動作。

【もしや】⇒もしかすると。

【不精髭(ぶしょうひげ)】⇒手入れをせずに伸びたひげ。

【戻らんな(もどらんな)】⇒戻りなさい。

【家人衆(かじんしゅう)】⇒その家に住んでいる人々。

【厳守(げんしゅ)】⇒かたく守ること。

【面持ち(おももち)】⇒顔つき。

【やきもき】⇒気をもんでいらいらしているさま。

【残響(ざんきょう)】⇒鐘を打った後などにしばらく聞こえる音。

【慈しむ(いつくしむ)】⇒かわいがる。

【どきくされ】⇒沖縄方言で、「どきなさい」の意味。

【愛想笑い(あいそわらい)】⇒相手に取り入るような本心ではない笑い。

【呆然(ぼうぜん)】⇒驚きやショックでぼんやりする様子。

【憶測(おくそく)】⇒確かな根拠がない、いいかげんな推測。

【車座(くるまざ)】⇒大勢の人々が、円形になって座ること。

【居たたまれない(いたたまれない)】⇒それ以上その場にじっとしていられない。

「魂込め」のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

①相手のコンタンを感じて警戒した。

②夜中のジシンで目が覚める。

③彼はその歌手にシンスイしている。

④大会の成功をキネンした。

⑤彼女はフユウな家庭に育った。

解答①魂胆 ②地震 ③心酔 ④祈念 ⑤富裕
問題2「ウタは何も言わずに一緒に海をみつめた」という箇所の「ウタの心理」を答えなさい。
解答何日も魂込めの祈りを捧げてもまったく動こうとしない幸太郎の魂が、何を思っているのかを知りたくて、同じように一緒に海を見つめることで感じ取りたかった。
問題3「親指くらいの芋」とあるが、「親指くらい」なのはなぜか?
解答他の畑の芋は掘りつくされていて、残った畑は土がやせていて、芋が大きく育っていないから。
問題4「ふいに哀れみがわいた」とあるが、なぜか?
解答幸太郎の口の中に入って死に至らしめた憎いアーマンだったが、ウタと金城の攻撃によって傷つき、弱々しい目でウタを見た姿に哀れみを感じたから。
問題5

次の内、本文の内容を表したものとして最も適切なものを選びなさい。

(ア)ウタは幸太郎の魂が抜けたことを知らず、ただ体の回復を祈り続けていた。

(イ)幸太郎はウタの祈りによって魂を取り戻し、再び村で生きる力を得た。

(ウ)ウタは、魂を取り戻せない幸太郎のために祈り続けながらも、やがてその魂が海へ帰るのを見送った。

(エ)幸太郎の魂は、村人たちの手によって強制的に体に戻され、もとの生活に戻った。

解答(ウ)本文では、ウタが幸太郎の「魂(まぶい)」を呼び戻そうと必死に祈るが、最終的に魂は戻らず、海へと流れていく描写がある。ウタはその魂を見つめ、受け入れるように祈り続けていた。したがって、「魂を取り戻せないまま、海へ帰るのを見送った」とする(ウ)が最も適切である。

まとめ

 

今回は、教科書『魂込め』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。