レオーノフの帽子屋 解説 わかりやすく 200字要約 意味調べノート あらすじ

『レオーノフの帽子屋』は、教科書・現代の国語で学習する文章です。過去には、京都大学の入試問題にも採用されたことがあります。

ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、『レオーノフの帽子屋』のあらすじや要約、意味調べなどをわかりやすく解説しました。

『レオーノフの帽子屋』のあらすじ

 

あらすじ

ロシアの作家レオーノフの『穴熊』に登場する老帽子屋の言葉「おまえはじぶんが生きなければならないように生きるがいい」は、彼の生き方を象徴している。帽子屋は生涯、一日に一つの帽子を作り続けたが、老いと視力の衰えにより針も糸も見えなくなっていた。それでも彼は手仕事を続け、その手だけが自分を欺かないと語る。そして革命の混乱の中、誰にも知られず静かに亡くなった。

この帽子屋の生き方には「自恃」と「孤独」があり、それは現代においても「生きること」を考えるうえで重要な示唆を与える。〈生きるという手仕事〉として日々の営みを引き受けることが、生の意味を開く行為であり、政治体制や支配の論理に従属せずとも個人が持つ自由の根拠となるのだ。

また、戦後の日本の詩人・伊藤静雄の「庶民観」を例に、時代に流されず自己の生を貫くことが「本当の庶民」の姿であると論じる。支配の言葉に迎合するのではなく、〈生きるという手仕事〉を果たすことで、人は社会の支配を超えて自由を生きることができる。

人の生は「I was born(受け身で生まれる)」ことから始まり、偶然の中で生き、やがて死ぬ。その曖昧で不完全な生を受け入れ、自らの生を貫くことこそが、生きることの本質であり、未来への希望となる。

『レオーノフの帽子屋』の要約&本文解説

 

200字要約帽子屋は生涯を通じて帽子を作り続け、自分の生を〈生きるという手仕事〉として引き受けた。その生き方は、時代や政治体制に左右されず、自らの生を貫く姿勢を示している。それは支配に従う生ではなく、支配の論理を超える自由のあり方でもある。どの時代でも本当の庶民とは、流されるのではなく、日々の営みの中で自らの生を果たす存在なのだ。こうした生き方こそが未来に残されるべきものであり、記憶されるべきものだ。(196文字)

本文では、ロシアの作家レオーノフが書いた小説『穴熊』に登場する老帽子屋の生き方をもとに、「生きることの本当の意味」について考えています。

帽子屋は、目が見えなくなっても仕事を続けることで、自分の人生を支えていました。 革命や戦争といった歴史の大きな流れの中では、小さな存在かもしれません。しかし、彼はただ流されるのではなく、自分で生きる道を選び、仕事を続けることで、自分の人生をしっかりと生きていました。

筆者は、そんな帽子屋の姿こそが「本当に生きること」だと考えます。つまり、社会や権力に流されるのではなく、自分の生き方を貫くことが大切だということです。

また、筆者は、詩人の伊藤静雄の「庶民は時代によって変わるものだ」という考えに反対し、どんな時代でも、人は自分の生をまっとうすべきだと主張します。

帽子屋は、一見するとただ社会のルールに従って生きているように見えます。しかし実は、仕事を通じて「支配されない生き方」をしているのです。

これは、表面的には社会の枠組みに入っているようでも、自分の信念を持ち続けることで、本当の自由を手にしていることを意味します。

最後に筆者は、生きることの本質についてまとめます。それは、与えられた人生を受け入れつつも、権力や社会に流されることなく、自分の生き方を選び取ることです。

この考えには、日々の仕事や暮らしの中にこそ、人間の尊厳や自由が宿っている、というメッセージが込められています。

『レオーノフの帽子屋』の意味調べノート

 

【砲撃(ほうげき)】⇒戦争などで砲弾で攻撃すること。

【粗末(そまつ)】⇒質が低く、十分でないこと。

【感傷(かんしょう)】⇒過剰に感情的になったり、物事を感情的に捉えたりすること。

【肖像(しょうぞう)】⇒人物の顔を描いた絵や写真。

【自恃(じじ)】⇒自分自身をたのみとすること。

【孤独(こどく)】⇒一人でいること。孤立している状態。

【分かちがたい(わかちがたい)】⇒分けることができない。切り離せない。

【荷担(かたん)】⇒力添えをすること。仲間になること。

【母型(ぼけい)】⇒基本となる型。模範となるもの。 

【復員(ふくいん)】⇒戦争に従軍していた兵士が帰国すること。兵役を解かれて帰省すること。

【~面をする(~づらをする)】⇒さもそうであるかのような態度を取る。

【庶民(しょみん)】⇒一般の人々。

【挿話(そうわ)】⇒本や話の中で本筋から外れて挿入される話。

【倒錯(とうさく)】⇒さかさになること。

【与する(くみする)】⇒味方する。同意する。

【不断(ふだん)】⇒絶え間なく、常に続くこと。

【偶然(ぐうぜん)】⇒予測できずに起こること。

【簡明(かんめい)】⇒簡単ではっきりしていること。

【当のもの(とうのもの)】⇒その物、またはその人。

【怯懦(きょうだ)】⇒臆病で、勇気がないこと。

【迂遠(うえん)】⇒まわりくどいさま。遠回りで直接的でないさま。

『レオーノフの帽子屋』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

①敵のホウゲキが続く。

カンショウに浸る。

コドクを感じる。

④彼はショミンの味方だ。

フダンの努力が大事だ。

解答①砲撃  ②感傷  ③孤独  ④庶民  ⑤不断
問題2

「おまえはじぶんが生きなければならないように生きるがいい」という言葉が、好きだ。とあるが、この言葉について以下の問いに答えなさい。

①この言葉を言った人物は誰か?

②この言葉が登場する作品のタイトルと、その作品の作家名を答えなさい。

解答①名もない老帽子屋 ②『穴熊』・レオニード・レオーノフ
問題3「ただこの手、手だけがおれを欺さねえんだ」とは、どういうことを言っているか? 
解答生涯一日に一個の帽子を作りつづけてきた帽子屋は、老いても国家に頼れず、視力も失ったが、今でも手で縫うという作業だけは確実に果たし続けることができるということ。
問題4筆者は、「伊藤静雄」のエピソードを通して、どのようなことを伝えようとしたのか? 
解答時代や政治の影響を受けることなく、人は自分自身の生き方を貫くべきだということを伝えようとした。特に、社会の変動に応じて「共産主義化」や「右翼化」「民主主義化」するのではなく、個々人が「生きるという手仕事」として自分の人生を全うすることの重要性を強調した。
問題5「希望としての倫理によってではなく、~~~我がものとして、生きる」とはどういうことか? 
解答理想や空想の倫理に頼るのではなく、現実の事実に基づいた倫理を自分のものとして実践し続けること。
問題6

次の内、本文の内容を表したものとして最も適切なものを選びなさい。

(ア)帽子屋は、毎日帽子を作ることにより、自己実現を追い求め、現実の中で生きる意味を探し続けた。

(イ)帽子屋は、国家の保護を受け、目が見えなくなっても他者に頼り続けた。

(ウ)帽子屋は、理想を追い求めることをやめ、空想の世界に生き続けた。

(エ)帽子屋は、物を作ることが単なる生計の手段ではなく、他人を支えるための活動だと考えていた。

解答(ア) 本文では、帽子屋が毎日帽子を作り続けることで、自らの生き方を実現し、自己表現をしていたことが強調されています。また、帽子屋が「手仕事」を通じて生きる意味を見出している点が描かれています。他の選択肢は、本文の内容とは一致しません。

まとめ

 

今回は、『レオーノフの帽子屋』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。