『共同性の幻想』は、菅野仁による評論文です。教科書・論理国語にも載せられています。
ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、『共同性の幻想』のあらすじや要約、意味調べなどを解説しました。
『共同性の幻想』のあらすじ
本文は、四つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを紹介していきます。
①ある種の集団では、いつも関係を密にしていないと、いつ排除されるかわからない不安がつきまとう。そして、不安になるからますます固まっていっしょにいる、という緊張した状態の関係性が見られる。これは、非常に心が休まらない状態であり、互いの存在が相手を息苦しくさせるような、妙な関係である。私はそのような関係性を生み出す集団の圧力を「同調圧力」と呼んでいる。
②同調圧力は、現代における新たな共同性(ネオ共同性)を生み出す圧力だと考えている。日本社会は、ハード的部分(物的環境や法的な制度)では近代化したが、ソフト的部分(精神面や価値観)では、ムラ的な関係性のままである。かつての伝統的なムラ的共同性を支えていた根拠は、生命維持のための相互性であった。同調圧力が強い半面、相互扶助の側面も大きかったのだ。しかし、現代のネオ共同性を支えている根拠は、「不安」に基づく相互性である。こうした問題に関連して、社会学者・リースマンは社会的性格を「伝統指向型」「内部指向型」「他人指向型」の三つの類型に分けた。「伝統指向型」は「ムラ的共同性」、「他人指向型」は「ネオ共同性」に対応すると考えられる。
③同調圧力という、互いに消耗し合う関係から抜け出すには、「同質性から並存性へ」という考え方を強調したい。伝統的なムラ社会では、「みんな同じ」ということを重視する「同質性」が、望ましい人間関係として考えられてきた。しかし、現代社会の人間の共同性は、抽象的・間接的・媒介的な性質を帯びて広がっている。「貨幣」を媒介とする人間関係がそれである。したがって、現代社会では貨幣によって個人が経済的に自立するというのは、貨幣を媒介として、世界レベルで他者の活動に依存することと表裏一体なのである。個人の活動の自由や多面化が進行しているにもかかわらず、「みんないっしょ」という同質性が求められる。こうした関係性の歪みを捉えようとしたキーワードが「ネオ共同性」という言葉だった。
④「並存性」とは「異なるものが同時に存在する」という意味である。現代社会になり、人間は都市的な自由や個性の追求が可能になった。こうした状況では、自分とは違う振る舞い方、違う考え方や感じ方をする人々といっしょに過ごす時間が多くなる。つまり、「気の合わない人」と時間や空間をともに過ごさざるを得ない機会が多くなっている。したがって、「気の合わない人と一緒にいる作法(並存性)」を真剣に考えなければならない。現代のさまざまな人間関係の問題を解消する方法として、「並存性の重視」をきちんと主張すべき段階に今まさに来ている。
『共同性の幻想』の要約&本文解説
筆者は、現代社会における人間関係のあり方について問題提起をしています。特に「同調圧力」が生み出す新しい共同性(ネオ共同性)について論じ、その影響と解決策を提示しています。
筆者の主張の中心は、現代の共同性が「不安」によって成り立っているという点です。
かつてのムラ社会では、生命維持のための助け合いが共同性の基盤でした。しかし、現代の社会では、周囲から浮かないようにするための「同調圧力」が人々を結びつける要因になっています。
このような関係性は、互いに消耗し合い、息苦しさを感じさせるものです。
筆者は、この現象を社会学者リースマンの「社会的性格」の分類を使って説明します。リースマンは、人々の価値観を「伝統指向型」「内部指向型」「他人指向型」の三つに分けました。
ムラ社会の共同性は「伝統指向型」に属し、現在のネオ共同性は「他人指向型」にあたると考えられます。つまり、現代の人々は他人の評価や周囲の目を気にして行動する傾向が強く、それが同調圧力を生み出しているのです。
では、この息苦しい関係性から抜け出すにはどうすればよいのでしょうか?
筆者は、「同質性から並存性へ」という考え方を提案しています。ムラ社会では「みんな同じであること」が重要視されていましたが、現代社会では異なる価値観を持つ人々が共存することが必要です。
例えば、都市部ではさまざまなバックグラウンドを持つ人々が同じ空間を共有しています。こうした状況では、「気の合わない人とも適切な距離を取りながら共存する」ことが求められます。
「並存性」とは、「異なる価値観や考え方を持つ人々が同じ社会で共に生きること」を指します。
現代社会では、貨幣を媒介とした関係が主流になり、個人の自由や多様性が尊重されるようになりました。しかし、それにもかかわらず「みんな同じであるべき」という考え方が根強く残っています。
そのため、社会の中で多様性を受け入れ、異なる考え方の人とも共存できるような意識が重要になるのです。
つまり、筆者は「無理に同じであろうとせず、違うままでも共に生きること」を重視すべきだと述べています。同調圧力から自由になり、個々の違いを認め合うことが、これからの社会には必要なのです。
『共同性の幻想』の意味調べノート
【排除(はいじょ)】⇒ 取り除くこと。追い出すこと。
【妙(みょう)】⇒ 普通ではない。奇妙な。
【基盤(きばん)】⇒ 物事の根底や土台となるもの。
【出る杭は打たれる(でるくいはうたれる)】⇒ 目立ったり、突き抜けたものは周囲に抑えられやすいということ。
【長いものには巻かれろ(ながいものにはまかれろ)】⇒ 権力や強者に従うべきだということ。
【相互扶助(そうごふじょ)】⇒ お互いに助け合うこと。
【権威(けんい)】⇒ ある分野での高い地位や影響力。
【羅針盤(らしんばん)】⇒ 方向を示す道具、または指針や指導となるもの。
【考察(こうさつ)】⇒ 物事を深く調べて考えること。
【緊密(きんみつ)】⇒ しっかりと結びついていること。
【抽象的(ちゅうしょうてき)】⇒ 頭の中だけで考えていて、具体性に欠けるさま。
【媒介的(ばいかいてき)】⇒ 何かを仲立ちする役割を持つさま。
【貨幣(かへい)】⇒ お金。取引のための物質的な手段。
【依存(いぞん)】⇒ 他に頼りきっていること。
【表裏一体(ひょうりいったい)】⇒ 二つのものが一体として存在すること。
【歪み(ゆがみ)】⇒ 物事が正しくない状態。歪んだ形。
【作法(さほう)】⇒ 正しいやり方。マナー。
『共同性の幻想』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
① ルールに違反した者がハイジョされる。
② 健康をイジするために運動を続ける。
③ 努力の末に資格をカクトクした。
④ 理想をツイキュウする姿勢が大切だ。
⑤ 長時間のコウソクは苦痛を伴う。
次のうち、本文の内容を表したものとして最も適切なものを選びなさい。
(ア)同調圧力は、人々の結束を強める良い影響をもたらし、現代社会において積極的に活用すべきである。
(イ)ムラ社会の共同性は、不安を基盤とした結束によって成り立っており、現代のネオ共同性と本質的に変わらない。
(ウ)現代社会では、異なる価値観を認め合う「並存性」が重要であり、「気の合わない人と一緒にいる作法」が求められる。
(エ)貨幣を媒介とする人間関係は、人々の自立を促し、同調圧力の影響を完全に排除することができる。
まとめ
今回は、『共同性の幻想』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。