「首をすくめる」という慣用句があります。
漢字だと「首を竦める」とも書き、 普段の会話やビジネスシーンでもよく用いられている表現です。ただ、具体的な使い方や「肩をすくめる」との違いが分かりにくい言葉でもあります。
そこで本記事では、「首をすくめる」の意味や短文、類語、英語訳などを含め詳しく解説しました。
首をすくめるの意味・漢字
まず最初に、「首をすくめる」を辞書で引いてみます。
首をすくめる 読み方:くびをすくめる
⇒首を縮める、ひっこめること。主に、不安や怯えなどが表現される。「首を竦める」とも書く。
出典:実用日本語表現辞典
首(くび)を竦(すく)・める の解説
⇒驚いたり恐れ入ったりしたときに、思わず首を縮めるしぐさをする。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
上記二つの辞典から引用しました。「首をすくめる」とは「不安や恐怖、驚きなどにより首をひっこめること」を意味します。
例えば、突然の大きい物音に体がビクッと反応し、思わず首を引っ込めてしまうような動作は「首をすくめること」だと言えます。また、お化け屋敷などに行って、不安や恐怖で首を縮めてしまう動作も「首をすくめること」です。
つまり、何らかの外的な要因によりその人が首を縮めて引っ込めることを「首をすくめる」と言うわけです。
「すくめる」は「竦める」と書き、「体の一部を縮ませたり体を小さくさせること」を表します。実際に首の長さが短くなり縮むというわけではなく、両肩を少し上げることによって首が縮んだように見えることからできた慣用句です。
なお、辞書の説明にはありませんが、「首をすくめる」には「恥ずかしくなって照れる」「謙虚な気持ちになって感謝する」などの意味もあります。
後に詳しく解説しますが、文脈や状況などによっても、この慣用句のニュアンスは異なってくることになります。
肩をすくめるとの違いは?
似たような慣用句で「肩をすくめる」があります。こちらも辞典から意味を調べてみます。
肩(かた)を竦(すく)・める
①両肩を上げて身を縮こまらせる。恥ずかしい思いをしたときなどのようす。
②どうしようもないという気持ちを表すために、両方の手のひらを上に向け、両肩をあげる。主として欧米人のしぐさ。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
肩を竦める 読み方:かたをすくめる 別表記:肩をすくめる
⇒両肩を縮こめる動作をする。主に「呆れ」「どうしようもない」などの意を表すジェスチャーとして行われる。
出典:実用日本語表現辞典
「肩をすくめる」には二つの意味があります。一つ目は、「恥ずかしい思いにより、肩を上げて身を縮こませる」という意味です。
そして二つ目は、「呆れたり困惑して、肩を上げて首を縮める」という意味です。
どちらの意味でも使うことができますが、一般的には後者の「呆れ」や「困惑」を表す意味として使われることが多いです。一言で言うと、「どうしようもない」というその人の感情や心理を表したものです。
「首をすくめる」と「肩をすくめる」の違いですが、「首をすくめる」は、「驚き」や「不安」「恐怖」などの感情を表す際に使います。一方で、「肩をすくめる」は「呆れ」や「困惑」、「恥ずかしさ」などの感情を表す際に使います。
簡単に言えば、「首をすくめる」は「うわ!」という驚きを表した言葉、「肩をすくめる」は「やれやれ…」という呆れを表した言葉ということです。
外国人が両手と肩を少し上げ、「やれやれ」のような感じでジェスチャーをするのが「肩をすくめる」のイメージとなります。
首をすくめるの類義語
「首をすくめる」の「類義語」は以下の通りです。
- 身を縮める
- 体を縮める
- 血の気が引く
- 震え上がる
- 青ざめる
- 膝が震える
- 身の毛がよだつ
- 体が固まる
- 戦慄する
- 唖然とする
基本的にはどれも恐れたり驚いたりする際に使われる言葉となります。
この中では「身を縮める」は比較的意味も近く、よく使われる慣用句です。「身を縮める」とは「恐怖などから、体をすくめる・身を小さくするそぶりをする」という意味です。
「身を縮める」は主に何かに対してビクビク怖がるようなシーンで使われ、「首をすくめる」のように驚きに対して使われるようなことはありません。この点が、両者のわずかな違いだと言えます。
なお、「首をすくめる」の「対義語」と呼べるようなものは特にありません。これは「恐い」や「驚く」などの対義語がないのと同じ理由からです。
しいて挙げるならば、「不安」と対になる「安心」を使った「安心する」などは対義語に当てはまる可能性はあります。ただ、厳密な意味での反対語は存在しないものと考えて問題ないです。
首をすくめるの英語訳
「首をすくめる」は、英語だと「shrug」と言います。
「shrug」は「両方の手のひらを上に向けてすくめる」というのが原義で、首以外にも肩をすくめるような際にも使うことができる動詞です。驚きや困惑、疑惑、絶望などの心理を表す際に適しています。
例文だと、次のような言い方です。
He shrugged his shoulders.(彼は首をすくめた。)
He shrugged in amazement.(彼は驚いて首をすくめた。)
She just shrugged her shoulders. (彼女はただ肩をすくめただけだった.)
首をすくめるの使い方・例文
最後に、「首をすくめる」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 突然の物音に、彼は首をすくめるような反応を示した。
- 寒さのあまり、その場で首をすくめるような動作をしてしまった。
- 近くで大きな物音が聞こえたので、人々は思わず首をすくめた。
- 初めて心霊スポットに行ったが、あまりに怖くて首をすくめるしかなかった。
- 親から大きな声で怒鳴られたので、その子供はびっくりして首をすくめた。
- みんなの前で表彰されることになったので、首をすくめて壇上に登った。
- 彼女は勝利に浮かれることもなく、首をすくめて周囲に感謝の意を述べた。
「首をすくめる」は、主にその人が恐がったり驚いたりする反応を示す際に使われます。
また、すでに述べたように照れたり謙虚になったりする時にも使われる慣用句です。この意味での用例が、例文だと6と7です。
本来は、「不安や恐怖から首を引っ込める」という意味ですが、場合によってはこのように別の心理を表すような時にも使われます。
その他、例文2のように「(寒さのために)首を引っ込める」という意味で使われることもあります。この場合は人の感情というよりは、単に「首を縮める・引っ込める」という動作そのものを表した表現となります。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「首をすくめる」=不安や恐怖、驚きなどにより首をひっこめる。
「肩をすくめる」=①恥ずかしい思いにより、肩を上げて身を縮こませる。②呆れたり困惑して、肩を上げて首を縮める。
「類義語」=「身を縮める・体を縮める・血の気が引く・青ざめる・体が固まる」など。
「英語訳」=「shrug」
「首をすくめる」は、複数の意味を持った慣用句です。似たような言葉で「肩をすくめる」「身を縮める」などもありますので、これらの言葉とも区別しながらぜひ正しい場面で使って頂ければと思います。