『故郷』は、中学国語の教科書で学ぶ小説文です。魯迅の代表作ともいえる作品で、学校の定期テストなどでもよく出題されています。
ただ、本文中には意味の分かりにくい言葉も多く出てきます。そこで今回は、『故郷』に出てくる漢字や語句の意味、読み方などを段落ごとに簡単にまとめました。
第一段落:わたしの故郷
わたしは厳寒を冒して、二千余里を隔て~
【厳寒(げんかん)】⇒非常にきびしい寒さ。極寒 (ごっかん)。
【冒す(おかす)】⇒危険や困難を覚悟の上で、あえてする。
【二千余里(にせんより)】⇒二千里と少しの距離(約1000kmと少し)。「里」は当時の中国では「約500m」を表す。
【隔てる(へだてる)】⇒距離を置く。
【二十余年(にじゅうよねん)】⇒二十年とさらに少しの年月。「余年」とは端数(はすう)を適当に言う場合に用いる表現。
【故郷(こきょう)】⇒生まれ育った土地。ふるさと。
【最中(さなか)】⇒最も盛んになった時。真っ盛り。
【小闇くなる(おぐらくなる)】⇒薄暗くなる。少し暗くなる。
【身を切る(みをきる)】⇒つらさや寒さが厳しく、からだを切るように感じられる。
【船室(せんしつ)】⇒船の中の部屋。特に、乗客用の部屋。
【苫(とま)】⇒和船を覆い、雨露をしのぐのに用いる敷物。
【隙間(すきま)】⇒物と物との間の、わずかにあいている所。
【蒼黄いろい(あおぎいろい)】⇒蒼と黄が混ざった色のこと。「蒼」とは「深い青色やくすんだ青色」を指す。
【しめやかな】⇒ ひっそりと静かなさま。
【荒村(あれむら)】⇒荒れ果てた村。
【いささか】⇒ほんの少し。わずか。
【活気(かっき) 】⇒生き生きとした気分。生気。
【うら悲しい(うらがなしい) 】⇒なんとなく悲しい。もの悲しい。
【我が(わが)】⇒私の。
【佳い(よい)】⇒美しい。優れている。
【解釈(かいしゃく)】⇒物事の意味、内容などを解き明かすこと。
【心境(しんきょう)】⇒心の状態。心持ち。
【帰省(きせい)】⇒故郷に帰ること。
【棲む(すむ)】⇒家や場所をきめて、そこで生活する。
【老屋(ろうおく)】⇒古い家のこと。
【公売(こうばい)】⇒公の機関により、強制的に行われる売買。
【明け渡す(あけわたす)】⇒今まで住んでいた建物や土地などを立ち退いて、人の手に渡す。
【永別(えいべつ)】⇒永久に別れること。
【食い繋ぐ(くいつなぐ)】⇒満足な収入が得られない環境の中で、何とか生活する。
【よそ国(よそぐに)】⇒よその地。自分の住んでいるところ以外の地。
【家移り(いえうつり)】⇒引っ越すこと。転居。
【門口(かどぐち)】⇒家や門の出入り口。
【屋根瓦(やねがわら)】⇒日本建築で多く使用される、屋根材のこと。
【枯れ草(かれくさ)】⇒枯れた草。特に、冬枯れの草。
【屋敷内(やしきうち)】⇒屋敷の中。家屋(かおく)の建っている敷地の中。
【本家(ほんけ)】⇒一族の中心となる血筋の家。
【大概(たいがい) 】⇒ほとんど。だいたい。
【移転(いてん)】⇒住所などを変えること。
【甥(おい)】⇒自分の兄弟姉妹の息子。
【押包む(おしつつむ) 】⇒押し隠す。
【よそ事(よそごと)】⇒自分とは関係のないこと。他人ごと。
【紛らす(まぎらす)】⇒関心を他に移すなどして、その事が分からなくなるようにする。
【嵩張物(かさばりもの)】⇒体積が大きくて、場所をとるもの。
【荷拵え(にごしらえ)】⇒荷づくりをすること。
【お銭(おあし)】⇒お金のこと。
【語を継ぐ(ことばをつぐ)】⇒さらに言い続ける。言葉を続ける。
【親類(しんるい)】⇒家族から見て、血縁や婚姻で生じた関係により、つながっている人々。親戚。
【暇乞い(いとまごい)】⇒別れを告げること。
【済ます(すます)】⇒なすべき物事を全部する。
【閏土(じゅんど・ルントウ )】⇒主人公である私と少年時代に仲良く遊んでいた小作人の息子。
【日取(ひどり)】⇒あることを行なうのに適した日を選んで決めること。 また、その日。
第二段落:少年時代の回想
この時わたしの頭の中に一つの神さびた画面が閃き出した。~
【神さびた(かんさびた・かみさびた)】⇒古びているさま、多くの年月を経ているさま。
【閃く(ひらめく)】⇒考えや思いが瞬間的に思い浮かぶ。
【深藍色(はなだいろ)】⇒暗い青緑色のこと。
【黄金色(こがねいろ)】⇒黄金のように黄色に光る色。
【碧緑(へきりょく)】⇒緑色のこと。
【叉棒(さしぼう)】⇒刺叉(さすまた)。相手の動きを封じ込める武具および捕具。
【項(えり)】⇒首のうしろの部分。首すじ。
【土竜(もぐら)】⇒ここでは、「アナグマのような動物」を指す。
【力任せ(ちからまかせ)】⇒ありったけの力を出すこと。力の限りを出すこと。
【跨ぐら(またぐら)】⇒胴から足の分かれ出るところ。
【時分(じぶん)】⇒おおよその時期。
【在世(ざいせ)】⇒世に生きていること。
【坊っちゃま(ぼっちゃま)】⇒裕福な育ちの男児を指す呼び名。
【大祭(たいさい)】⇒規模の大きい祭り。
【鄭重(ていちょう)】⇒大切に扱うこと。
【影像(えいぞう)】⇒絵画などに表された神仏や人の姿。肖像。
【供え物(そなえもの)】⇒神前、仏前、霊前などに捧げる食べ物や品物のこと。
【祭器(さいき)】⇒祭事に用いる器具。
【参詣人(さんけいにん)】⇒神仏に参詣する人。 参詣者。
【雑沓(ざっとう)】⇒多数の人で込み合うこと。
【用心(ようじん)】⇒万一に備えて注意・警戒を怠らないこと。
【倅(せがれ)】⇒自分の息子をへりくだっていう語。
【小作人(こさくにん)】⇒小作によって農業を営む人。「小作」とは、地主から土地を借り、借地料を払って耕作を行なうことを表す。
【聞き及ぶ(ききおよぶ)】⇒人づてに聞いて知っている。前々から聞いている。
【おつかつ】⇒ほとんど差がつけられないさま。優劣の差がないさま。
【閏月(うるうづき)】⇒太陰太陽暦において、季節と日付を合わせるためにつけ加える特別の月。
【五行(ごぎょう)】⇒中国古代の考え方で、万物を構成する木・火・土・金・水の五つの要素。
【馳け出す(かけだす)】⇒速く走り出す。
【炊事(すいじ)】⇒食物を煮たきして調理すること。
【漉羅紗帽(すきらしゃぼう)】⇒小さな毛織りの帽子。
【願を掛ける(がんをかける)】⇒物事がかなうように神仏へ祈願する。
【庇護(ひご)】⇒かばって守ること。
【大層(たいそう)】⇒非常に。たいへん。
【はにかむ 】⇒恥ずかしがる。
【沙地(すなぢ)】⇒砂ばかりの土地。
【箕(み)】⇒米などの穀物の選別の際に、殻(から)や塵(ちり)を取り除くための農具。
【小米(こごめ)】⇒砕けて粉のようになった米。
【待ちかねる】⇒待ち遠しくなる。
【処(ところ)】⇒住んでいる場所。
【貝殻(かいがら)】⇒貝の軟体を外側から包む、石灰質などから成る硬い物質。
【観音様(かんのんさま)】⇒仏教における菩薩(ぼさつ)の一尊。人々の苦しみを取り除いたりお願い事を聞いたりする。
【類(たぐい)】⇒同じ種類のもの。
【耳をすます(みみをすます)】⇒聞こうとして注意を集中する。
【瓜(うり)】⇒ウリ科の植物。
【猛烈(もうれつ)】⇒勢いが強くはげしいさま。
【こん畜生(こんちくしょう)】⇒相手を強くののしって言う語。
【利巧(りこう)】⇒頭がよいこと。賢いこと。
【あべこべ】⇒方向が通常の状態とは反対であること。ここでは、普通なら逃げるはずの土竜が逆に向かってくるさまを表している。
【水菓子屋(みずがしや)】⇒果物屋のこと。「水菓子」は本来は「果物」を指す。
【大潮(おおしお)】⇒潮の満ち引きの差が最も大きい日。
【跳ね魚(はねうお)】⇒トビハゼのこと。
【際限(さいげん)なく 】⇒かぎりなく。果てなく。
【往来(ゆきき)している】⇒遊んでいる。交際している。
【高塀(たかべい)】⇒高く作られた塀。
【郷里(きょうり)】⇒生まれ育った土地。ふるさと。
【大哭きに哭く(おおなきになく)】⇒声を大きく上げて泣く。
【遂に(ついに)】⇒とうとう。しまいに。
【託ける(ことづける)】⇒直接には関係しない他の事と無理に結びつけて、都合のよい口実にする。
【寄越す(よこす)】⇒こちらへ送ってくる。こちらへ渡す。
第三段落:ヤンおばさん
現在わたしの母が彼のことを持出したので、わたしのあの時の記憶が電の如くよみがえって来て、~
【持出す(もちだす) 】⇒話題として出す。ある事柄を言い出す。
【如く(ごとく)】⇒~のように。
【覚える(おぼえる)】⇒自然と思い出される。ふと想像される。
【木器(もくき)】⇒木製の器物や道具。
【手当り次第(てあたりしだい)】⇒手にふれるもの、行き当たるものすべて。
【門外(もんがい)】⇒門のそと。
【宏児(こうじ・ホンル)】⇒私の甥(おい)。
【尖った(とがった)】⇒声が高く鋭いさま。
【頰骨(ほおぼね)】⇒ほおの上部に少し高く出ている骨。
【袴(はかま)】⇒着物を着た上からつけて、腰から下を覆う緩やかな衣服。
【股引(ももひき)】⇒下半身に着用するズボン状の下ばき。
【製図器(せいずき)】⇒製図のための用具。
【コンパス】⇒主に円を描くための製図用具。適当な角度に開閉できる2本の脚からなる。
【ぎょっとした】⇒突然、意外な事に出くわして、驚き動揺するさま。
【白粉(おしろい)】⇒顔や首筋などにつけて肌を色白に美しく見せるための化粧品。
【塗る(ぬる)】⇒物の表面に塗料や液状のものをこするようにしてつける。
【分廻し(ぶんまわし)】⇒コンパスのこと。
【繁盛(はんじょう)】⇒にぎわい大いに栄えること。
【未だ(いまだ)】⇒今になってもまだ実現していないさま。
【感化(かんか)】⇒影響。
【コンパス西施(こんぱすせいし)】⇒コンパスのような女。「西施」は本来、「中国、春秋時代の越の美女」を指す。
【甚だ(はなはだ)】⇒非常に。たいへん。
【侮り(あなどり)】⇒軽蔑 (けいべつ) 。さげすみ。
【色(いろ)】⇒顔色。表情。
【嘲る(あざける)】⇒ばかにして悪く言ったり笑ったりする。
【冷笑(れいしょう)】⇒さげすみ笑うこと。あざ笑うこと。
【出世(しゅっせ)】⇒社会的に高い身分・地位を得ること。
【御大層(ごたいそう)】⇒他人のする大げさなことを冷やかし、あざけっていう語。
【我楽多(がらくた)】⇒使い道や値うちのなくなった雑多な品物や道具類。
【道台(おやくめ)】⇒ 公(おおやけ)から命じられた役目や務め。
【妾(めかけ)】⇒婚姻した男性が、妻以外にも愛し養う女性。経済的援助を伴う愛人を指す。
【轎(かご)】⇒中国で用いられる乗物の一つ。
【噤む(つぐむ)】⇒口を閉じる。ものを言わない。黙る。
【塵ッ葉一つ(ちりっぱひとつ)】⇒塵を強めた語。転じて、きわめて小さい物事やごくわずかのもののたとえ。
【むっとする】⇒それとなく他人に分かる様子で、不機嫌になったり怒ったりするさま。
【身を翻す(みをひるがえす)】⇒からだの向きを素早く変える。
【行き掛けの駄賃(いきがけのだちん)】⇒ある事をするついでに、他の事をすることのたとえ。問屋などで荷を取りに来た馬子(まご)が、駄馬を引いて行く途中で他の荷を運んで余分な運賃を得たことから。馬子とは「荷物を運ぶ馬をひく職業」を表す。
【一双(ひとそろえ)】⇒ひと組そろえ。
【掻っ払う(かっぱらう)】⇒正しくない方法で他人のものを自分のものにする。
【応酬(おうしゅう)】⇒相手の行為にこたえ報いること。
【行李(こうり)】⇒旅に持っていく荷物。