「木を隠すなら森の中」ということわざがあります。
普段の文章でも使われているので、聞いたことがあるという人も多いかもしれません。ただ、このことわざの元々の意味や具体的な使い方まで把握している人は少ないかと思います。
そこで今回は、「木を隠すなら森の中」の意味や由来、類語・反対語などを詳しく解説しました。
木を隠すなら森の中の意味・読み方
最初に、読み方と基本的な意味を紹介します。
【木を隠すなら森の中(きをかくすならもりのなか)】
⇒物を隠すには同種の物の群がりの中に紛れ込ませる方法が最適である、という意味合いで用いられる慣用的な言い回し。
出典:実用日本語表現辞典
「木を隠すなら森の中」は、「きをかくすならもりのなか」と読みます。意味は「物を隠すのであれば、似たものの中に紛れ込ませるべきである」という意味のことわざです。
例えば、1枚10万円もするとても高価な切手を持っていたとしましょう。普通の考え方であれば、切手をどこか大事な場所に保管しようと考えるはずです。
しかし、切手だけを保管するとなると、どうしても姿や形が目立ってしまいます。そこで、わざと値打ちがない安い大量の切手と同じ場所に保管したとします。
こうする事で、様々な切手の中に紛れるので、大事な切手が盗まれる確率を減らすことができます。「木を隠すなら森の中」とはこのように、「似たような群がりの中に何かを紛れさせることの大事さ」を説いたことわざということになります。
木を隠すなら森の中の語源・由来
「木を隠すなら森の中」の語源は、イギリスの推理小説『ブラウン神父の童心-折れた剣』からだと言われています。
この小説は、イギリスの短編小説家である「ギルバート・ケイス・チェスタトン氏」によって著作されました。以下、簡単にセリフを引用しておきます。
賢い人は葉をどこへ隠す? 森の中だ。森がない時は、自分で森を作る。一枚の枯れ葉を隠したいと願う者は、枯れ葉の林をこしらえあげるだろう。死体を隠したいと思う者は、死体の山をこしらえてそれを隠すだろう。
-[1874-1936]出典:ギルバート・キース・チェスタトン『ブラウン神父の童心~折れた剣~』
要約すると、「葉っぱを隠すなら森の中である。森がなければ森を作るべきである」という意味になります。後半の死体の内容は少し怖さも感じますが、これは推理小説なので仕方ない部分もあるでしょう。
元々、『ブラウン神父の童心~折れた剣~』という作品は、12の作品から構成されていました。その中の『折れた剣』という作品の中に、「木の葉を隠すなら森の中である」というセリフが登場ました。
このセリフをきっかけに、現在でも日本のことわざとして広く浸透しているということです。
木を隠すなら森の中の類義語
続いて、「木の葉を隠すなら森の中」の類義語を紹介します。
ことわざや慣用句で、似たような意味と呼ばれるものはそこまで多くありません。実際の用例では、「木を見て森を見ず」ということわざの方がよく使われています。
「木を見て森を見ず」とは物事の細かい部分にこだわりすぎて、その本質を見失うことを意味します。一本一本の木に目を奪われて、森全体を見ない様子からできたことわざです。
木を隠すなら森の中の対義語
逆に、対義語として以下のような言葉が挙げられます。
「木を隠すなら森の中」は、対象が目立っていない状況にあるものが望ましいという意味のことわざでした。そのため、反対語は「対象が目立つ状況にあるもの」もしくは「対象が目立つ状況にあるものは良くない」といった意味の言葉となります。
木を隠すなら森の中の英語訳
「木を隠すなら森の中」は、英語だと次のような言い方があります。
①「The best place to hide a leaf is in a forest.」
②「If you want to hide something , that is the trees in the forest.」
それぞれを訳すと、①は「隠すのに最も良い場所は、森の中の葉である」、②は「何かを隠したいのであれば、森の中の木がよい」となります。
英語訳では、「葉」や「木」などの細かい違いは特にありません。単純に、「モノを隠したいのであれば、森の中である」という内容を伝えられれば問題ないでしょう。
木を隠すなら森の中の使い方・例文
最後に、「木を隠すなら森の中」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 高価な服だけどどこにしまおうか迷うな。「木を隠すなら森の中」と言うので、タンスの中に入れておこう。
- 「木を隠すなら森の中」と言うけど、仕事の書類に関しては別だ。どれがどれだか分からなくなってしまったよ。
- 犯人が田舎から人の多い東京に逃げて来たらしい。「木を隠すなら森の中」っていうことわざを知っているのかもね。
- 「木を隠すなら森の中」という格言通り、貴重品は目立つところに置いてはいけない。せめてカバンの中にしまわないと。
- 建物の中と外を含めた鬼ごっこだが、「木を隠すなら森の中」というので、とりあえず自分も森の中に隠れることにしよう。
- 世間がニュースで混乱している中、自分のニュースを出すとは。「木を隠すなら森の中」という言葉をよく知っているずる賢い奴だ。
「木を隠すなら森の中」は、例文のように様々な使い方ができることわざです。
元々は、木と森に対して使う言葉でしたが、現在では人やモノなど様々な対象に使われています。特徴としては、良い意味・悪い意味の両方で用いられていることが分かるでしょう。
良い意味の場合は、隠すべきモノをうまく隠したいような時に使います。逆に、悪い意味の場合は、隠してはいけないものを隠すような時に使います。状況に応じてうまく使い分けるようにしてください。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「木を隠すなら森の中」=物を隠すのであれば、似たもの中に紛れ込ませるべきである。
「語源・由来」=イギリスの推理小説『ブラウン神父の童心-折れた剣』から。
「類義語」=「木を隠すなら森へ隠せ・木のために森が見えない・木はしばしば森を隠す」
「英語訳」=「The best place to hide a leaf is in a forest.」「If you want to hide something , that is the trees in the forest.」
「木を隠すなら森の中」は古くからあるものですが、現代でも身近な場面で使うことができます。この記事をきっかけに、ぜひ積極的に使ってみてください。