「木」を使ったことわざはよく聞きます。「猿も木から落ちる」「金のなる木」。
ただ、「木に竹を接ぐ」という言い方はなかなか聞かないのではないでしょうか?
そこで今回は、「木に竹を接ぐ」の意味や由来、使い方、類義語などを含め詳しく解説しました。
木に竹を接ぐの意味・読み方
最初に、読み方と基本的な意味を紹介します。
【木に竹を接ぐ(きにたけをつぐ)】
⇒違う性質のものをつぎ合わせる。前後関係や筋が通らないことのたとえ。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「木に竹を接ぐ」は「きにたけをつぐ」と読みます。意味は、「前後関係や筋が通らないこと」を表したものです。
例えば、周りの人から見て明らかにちぐはぐな言い訳をしている人がいたとします。具体的には、以前の発言と異なっていたり、理由や根拠がはっきりとしていなかったりといったことです。
このような人は前後関係や筋が通っていません。よって、「木に竹を接ぐような説明をしている」などと言うことができます。つまり、前後のつじつまが合わない様子のことを「木に竹を接ぐ」と言うわけです。
木に竹を接ぐの語源・由来
「木に竹を接ぐ」の「接」という字は、「接触」「接着剤」などがあるように「くっつける・つなぎ合わせる」という意味があります。つまり、ここでの「接ぐ」は「木と竹をつなぎ合わせる動作」を指しているわけです。
では、実際に木に竹をつなぎ合わせるとどうなるかと言いますと、これが全く使い物になりません。なぜなら、木と竹の性質は似ているようで全く異なるからです。
私たち一般人からすれば、木も竹も似たモノ同士なので、くっつければ材木として使えるのでは?と思う人もいるでしょう。しかし、資材や建築のプロからすれば両者をつなぎ合わせて使うことなど不可能に近いです。
転じて、「木に竹を接ぐ」は「不調和・ちぐはく」などを表す意味として使われていることになります。
世の中には、水と油、磁石のS極とN局など相容れないものがたくさんあります。「木」と「竹」も同様に両者が決してなじむことがないので、「木に竹を接ぐ」という慣用句が生まれたわけです。
木に竹を接ぐの類義語
続いて、「木に竹を接ぐ」の類義語を紹介します。
いずれも、お互いが調和しないという意味が共通しています。また、そこから派生して「犬猿の仲」のように仲が悪い様子を表す言葉も類義語に含まれます。
また、「ことわざ」以外では次のような言葉も類義語と言えるでしょう。
- 取ってつける
- ちぐはぐな
- 違和感がある
- 不自然な
- 屁理屈の
- 非合理的な
「取ってつける」とは、わざとらしい不自然な言動という意味です。また、「非合理的」とは理屈に合っていない様子・でたらめなことという意味です。
木に竹を接ぐの英語訳
「木に竹を接ぐ」は、英語だと次のような言い方があります。
①「be inconsistent(一貫性がない)」
②「to graft bamboo shoot on a tree(木の中に竹の接ぎ木を入れる)」
①の「inconsistent」は、「矛盾した・一貫性がない」などの意味です。②の「graft」は「接(つ)ぎ木」、「bamboo」は「竹」「shoot」は「入れる」という意味です。
以上の事から、両者とも「木に竹を接ぐ」という意味で使うことができます。実際に例文として使う際は、前者の方が使いやすいです。
【例】⇒His story was inconsistent.(彼の話は一貫性がなかった。)
木に竹を接ぐの使い方・例文
最後に、「木に竹を接ぐ」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 追いつめられた彼は、木に竹を接ぐようなちぐはぐな弁解をした。
- 言い訳はもうよしたほうがいい。木に竹を接ぐおかしな説明だよ。
- あの兄弟は、木に竹を接ぐように息が合わないね。大丈夫かな?
- 彼の提案は、残念ながら木に竹を接ぐようなお粗末な内容だった。
- まるで木に竹を接ぐようにちぐはぐな話だね。もうよした方がいいよ。
- 木に竹を接ぐおかしさとはよく言ったものだ。まさに彼のことだよ。
- 裏通りを歩くと、木に竹を接ぐごとし違和感のある変な建物を発見した。
「木に竹を接ぐ」は、例文のように多くの場合否定的な意味として使います。例えば、見苦しい言い訳をする人、ちぐはぐな話をする人、筋の通っていない弁解をする人などです。
また、用例としては少ないですが、最後の例文のように「違う性質のものをつぎ合わせる」という意味で使われることもあります。辞書や慣用句の辞典などではこの意味も記載されています。
また、言い回しとしては「木に竹」と省略したり「木に竹を接ぐごとし」といった言い方もされます。この場合も意味としては全く同じと考えて問題ありません。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「木に竹を接ぐ」=前後関係や筋が通らないこと。違う性質のものをつぎ合わせること。
「語源・由来」=木と竹をつなぎ合わせる動作から。(木と竹の性質は全く異なるので、実際にはなじまない)
「類義語」=「水と油・犬猿の仲・水火器物・氷炭相容れず」
「英語訳」=「be inconsistent」「to graft bamboo shoot on a tree」
「木」と「竹」は、見せかけは似ていますが実は全く異なるものです。由来が分かったからには、ぜひ正しい使い方をして頂ければと思います。