敬語への自覚、他者への自覚 要約 意味調べノート テスト対策問題 解説

『敬語への自覚、他者への自覚』は、教科書・論理国語で学習する文章です。そのため、定期テストの問題にも出題されています。

ただ、本文を読むとその内容や筆者の主張が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、本作のあらすじや要約、意味調べなどを含め解説しました。

『敬語への自覚、他者への自覚』のあらすじ

 

本文は、三つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①これからの日本語にとって重要なのは、「敬語への自覚」だ。「他人との間の距離」を再確認するたためにも、敬語の存在を自覚すべきである。言葉は、自分とその外側との境に存在するものであり、自分の内側に傾けば、モノローグになる。それが限られた範囲で流通すれば、方言になる。対する共通語は、「他者との交流」という必要から生まれた言葉である。

②若者言葉は、ある限られた範囲内でしか流通しないという点において、方言の一種である。ここでは親疎の別がなくなり、「他者」は存在しない。他者が存在しない以上、第三者に「説明する」という行為が不要になる。そこには、より濃厚かつ明確に自分自身を語りたいという欲求がある。

③共通語を基本的な日本語として採用した日本社会では、家庭に育つ子供と親との間に距離が生まれる。この距離を埋めたいから、子供は距離を感じずにすむ方言を求める。かつての日本人は、方言で育ち、その後に共通語をマスターした。だが、今はそれが逆になり、存在を主張すべき自己ばかりが肥大し、他者の存在が希薄になり、日本語も日本の社会も大きく劣化した。それを修復するために、敬語という他者への認識への自覚が必要である。

『敬語への自覚、他者への自覚』の要約&本文解説

 

100字要約共通語を基本的な日本語として採用した日本社会では、自己ばかりが肥大し、他者の存在が希薄になり、日本語が大きく劣化した。日本語の劣化を修復するためには、敬語という他者への認識への自覚が必要である。(97文字)

全体の構成としては、冒頭でまず筆者の結論が述べられ、最後に再び結論が述べられています。

まず第一段落では、これからの日本語にとって重要なのは「敬語への自覚」であるという結論が述べられています。その上で、「方言」と「共通語」が対比されながら、それぞれの説明がされています。

次の第二段落では、若者言葉は方言であり、「他者への説明」を欠いた言葉は、自分自身を語りたい欲求から生まれたものであることが述べられています。

第三段落では、家庭の中で共通語が使われることで、子供と親の間に距離が生まれ、その距離を埋めるために子供は方言を求めることが説明されています。

そして、自己ばかりが肥大し、他者の存在が希薄となって劣化した日本語を修復するためには、敬語という他者への認識への自覚が必要であるという筆者の結論が再び述べられています。

解説の補足

敬語は単に丁寧な言葉遣いというだけではなく、相手を尊重し、自分との適切な距離感を作るための手段です。しかし、現代ではこの敬語の重要性が薄れつつあります。その理由の一つに、若者言葉やカジュアルな言葉遣いが増えたことがあります。

こうした言葉は、親しい間柄では便利ですが、他人との間で「どのくらいの距離感を持てばいいか」を考えなくても使えるため、結果として他者を意識しなくなることがあります。

昔の日本では、家庭や地域で方言を使って育ち、大人になると共通語を学ぶことで、広い範囲の人々と付き合えるようになりました。しかし、今はその流れが逆転し、初めから共通語で育ちながら、方言や若者言葉を自分の個性として使う人が増えています。

この変化により、他人との間に適切な距離を保つという意識が薄れ、「自分のことだけを考える」ような傾向が強くなっています。

筆者はこうした状況が、日本語や日本社会を劣化させていると考えています。そのため、「敬語」という他者への認識の自覚を持ち、そうしたまずい状況を修復すべきだと主張しているのです。

『敬語への自覚、他者への自覚』の意味調べノート

 

【親疎(しんそ)】⇒親しいことと疎遠なこと。

【横行(おうこう)】⇒悪事がしきりに行われること。

【水くさい(みずくさい)】⇒よそよそしい。他人行儀である。

【丁寧(ていねい)】⇒言動が礼儀正しく、配慮が行き届いていること。

【一通り(ひととおり)】⇒物事の程度が普通であること。尋常。

【パラドックス】⇒逆説。一見、真理にそむいているようにみえて、実は一面の真理を言い表している表現。

【比重(ひじゅう)】⇒占める大きさの度合い。

【矛盾(むじゅん)】⇒つじつまが合わないこと。

【界隈(かいわい)】⇒その辺り一帯。近所。

【ぞんざい】⇒物事を丁寧に扱わず、いい加減で雑なさま。

【劣化(れっか)】⇒物事の状態が悪くなったり、価値や機能が低下したりすること。

【閉鎖的(へいさてき)】⇒外部と関わりを持たず、自分たちの内側だけで物事を済ませようとするさま。

【様相を呈する(ようそうをていする)】⇒ありさまを示す。状態や様子を示す。

【必須(ひっす)】⇒欠かせないこと。

【歴然として(れきぜんとして)】⇒まぎれもなくはっきりしているさま。

【肥大(ひだい)】⇒物事が必要以上に大きくなること。特に、悪い意味で使われることが多い。

『敬語への自覚、他者への自覚』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

テイネイな口調で話す。

ノウコウな香りがする。

③意思のソツウを図る。

④家電の機能がレッカする。

⑤混乱した様相をテイする。

解答①丁寧 ②濃厚 ③疎通 ④劣化 ⑤呈
問題2『「丁寧」はまだ一通りだが、』とはどういう意味か?
解答丁寧語は、相手との間に通常の距離を設定するだけだが、
問題3『言葉が自分の内側に傾けば、』とは、どういうことか?
解答言葉が外部との交流のためではなく、自分の内部に向けて発せられれば、ということ。
問題4『それぞれに違う共通語を話すというのは、矛盾というものだ。』とあるが、なぜそう言えるのか?
解答共通語とは他者と交流するための言葉であり、「それぞれに違う共通語」だと、共通語本来の役割を果たせていないという点で矛盾するため。
問題5『言葉としての機能を大きく劣化させてしまう』とあるが、ここでの劣化する機能とは何か?本文中から6文字で抜き出しなさい。
解答他者への説明
問題6『それが逆になって、存在を主張すべき自己ばかりが肥大した。』とあるが、「逆になる」とはどうなることか?
解答共通語で育ち、その後に方言をマスターするということ。

まとめ

 

今回は、『敬語への自覚、他者への自覚』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。