「かくいう私も」という表現を聞いたことがあるでしょうか?
普段の文章や日常会話においても使われるものです。ただ、具体的にどのような意味を持つのか分かりにくい表現でもあります。
そこで本記事では、「かくいう私も」の意味や例文、類語、漢字表記などを詳しく解説しました。
「かくいう私も」の意味
「かくいう私も」とは「このように言う私も」「こんな風に言う私も」などの意味を持つ表現です。
「かく」は「このように」という意味の古語で、「言う」は「言っている」という意味です。したがって、「かくいう」の原義は「このように言っている」となります。
主に、前に話したことを自分もそうだと強調したり、話し手が身近なこととして事態をとらえたりするような時に使います。
例えば、相手の趣味がサッカーで自分も同じ趣味であるような場合に、「かくいう私も、サッカーが趣味です。」などのように用います。
一方で、似たような表現で「かくいう私は」があります。これは語尾の「も」が「は」に変わっただけですが、意味が多少異なってきます。
「かくいう私は」は、前に話した内容を否定したり対比したりするようなときに用います。
例えば、食べすぎの人を注意する時にも関わらず、自分は好き放題食べているような際に、「かくいう私は、毎日暴飲暴食している」などのように用います。
「かくいう私も」の漢字
「かくいう私も」は、漢字だと「斯く言う私も」と表記します。
「斯く」は「このように」という意味を持つ語です。他には、「この」「こう」などの意味もありますが、多くの場合は「このように」という意味で使われます。
ただ、一般に使う際には漢字で表記することはほとんどありません。通常であれば「かくいう私も」「かく言う私も」などのように「かく」はひらがなで表記します。
「斯」という漢字は常用漢字に含まれない上、似た漢字で「欺」(詐欺の詐)があるため、混同しやすいです。そのため、特に理由がない限り、漢字ではなくひらがなで書くことを推奨します。
「かくいう私も」は敬語?
「かくいう私も」は一見するとかしこまった表現なため、敬語のようにも聞こえます。しかしながら、目上の人などに使うビジネスシーンにおいては適していない表現です。
すでに述べたように、「かく」という語は古語であるため、改まった場などでは頻繁に使うものではありません。
そのため、家族や友人などの親しい間柄で使うことはあっても、目上の人に対して敬語として使うというのは不適切です。
どうしてもビジネスシーンで使う際には、「実は言いますと私も、~」などのように別のかしこまった表現にするのがよいでしょう。
「かくいう私も」の類義語
「かくいう私も」は、次のような類義語で言い換えることができます。
- そう言う私も
- そうやって言う私も
- そんな風に言う私も
- とはいえ私も
- しかしながら私も
類義語の場合は、「かくいう私も」よりも簡単で分かりやすい表現となります。
例えば、最初の「そういう私も」であれば、「健康に気をつけなさい。そう言う私も生活習慣が乱れているけど。」などのように用います。
いずれも普段の日常会話でよく使われる表現なので、改まった文章やビジネスシーン以外でこれらの言葉を使うのが適しています。
逆に普段の会話や文章の中で、ちょっとしたアクセントを付けたいと考えた時は、「かくいう私も」を使ってみるのもよいでしょう。
「かくいう私も」の英語訳
「かくいう私も」は、英語だと次のように言います。
「I also like sweets like this.」(かくいう私も甘いものが好物です。)
「As for me, it is not comfortable, too.」(かくいう私も居心地は良くはなかった。)
英語では、「かくいう」を直接的に表現する単語はありません。そのため、「私も~である」「私にとっても~である」などのような文にして伝えます。
前者は、「私もこのようなスイーツが好物です」という意味です。「also」を付けることで、「~も」という意味を強調した一文となっています。
後者は「私にとっても~である」という意味です。ここでの「as」は「~にとって」という意味、そして「too」は「~もまた」という意味で使われています。
「かくいう私も」の例文・使い方
最後に、「かくいう私も」の使い方を例文で紹介しておきます。
- あなたは映画が本当に好きなんだね。かくいう私も、年間100本は映画をみます。
- 君は数学が大の苦手だと聞いたが、かくいう私も学生時代は数学が一番苦手でした。
- 友人は昨日夜遅くまで起きていたらしい。かくいう私も夜中の三時まで夜更かしをしていた。
- 最近は結婚せずにずっと独身でいるつもりの人が多いようです。かくいう私もその一人です。
- もっと運動をしたほういいと思うが、かくいう私も休日は家でゴロゴロすることが多い。
- 風邪が流行っているので体調管理には気を付けよう。かくいう私も先週は熱を出してしまったが。
「かくいう私も」は、例文のように前の文章を強調する文脈で用いるのが基本となります。ただ、場合によっては前の内容を否定して逆接的な文脈で用いることもあります。例文だと、5と6です。
この場合は、どちらかというと「かくいう私は~」とした方が伝わりやすいですが、語尾を「を」にして用いられることもあります。
なお、いずれの文脈でも共通しているのは発言者自身(私)にしか使わないという点です。このようにと言っているのは自分ですから、必然的に話している内容も自分自身のこととなります。
そのため、例えば「かくいうあなたは」「かくいう彼は」などの表現は誤用だと考えて問題ありません。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「かくいう私も」=このように言う私も・こんな風に言う私も。漢字だと「斯く言う私も」と書き、敬語としては用いない。
「類義語」=「そう言う私も・そうやって言う私も・そんな風に言う私も」など。
「英語訳」=「I also~(私も~)」「As for me(私にとって~である)」など。
「かくいう私も」は古語が含まれているので、ビジネスシーンなどではあまり使われません。ただ、前の文章を強調してなおかつアクセントを加えたい時などには使われます。ぜひこれを機に正しい使い方を覚えて頂ければと思います。