絵画の二十世紀 要約 前田英樹 論理国語 意味調べノート あらすじ

『絵画の二十世紀』は、教科書・論理国語で学習する文章です。高校の定期テストの問題にも出題されています。

ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、『絵画の二十世紀』のあらすじや要約、意味調べなどを解説しました。

『絵画の二十世紀』のあらすじ

 

本文は、五つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①この世に写真が現れて以来、人間のものの見方はずいぶんと変わった。写真は、19世紀半ばにヨーロッパで生まれたが、その普及は早く、日本でも急速に広まった。その捉える姿は、肉眼の印象とは異なり、人々の注意を引きつけた。アカデミズムの画家たちは印象派を非難したが、彼ら自身もまた写真の出現により変質していった。

②ミレーは、写真の影響を受けずに、自分の絵を確立した画家である。「落ち穂拾い」には、画面上の農婦の動作の時間的展開が凝縮され、見る人は自身の身体の動きを感じる。色彩のリズムと結合した彼女たちの姿態は、そのリズムが持つ永遠の持続に一致するように見える。

③写真的視覚に侵入されたアカデミストたちの絵は、肉眼が捉えることのないような表情の細部を描き出す。だが、それらの細部は、その人物が生きて凝縮している時間の流れを表現するものではない。

④アカデミックな技法を遵守していたつもりの画家たちが、なぜ写真的な視覚に惹かれていったか。彼らが惹かれたものは、視覚の無意識であり、肉眼を超えた物の在りようだった。そこに現れ出る像こそ、対象に<そっくり>な姿だと彼らは感じた。写真が壊したのは、物に<そっくり>な平面像についての画家の根本観念であり、感情である。この人の顔にそっくりな像を描くためには、肉眼が見ることのできないものを描く必要がある。こう感じることのうちには、すでに絵画における伝統的リアリズムの混乱が、崩壊の始まりがあると言える。

⑤写真は世界を一瞬に切断したものである。だが、絵画は、対象に対して単に視覚だけではなく、絵の外に在るものへの強い信頼を根拠とする凝縮がある。それは対象への愛情と信仰であり、画家はそこに注意・労力・経験など、自己の時間のすべてを溶け込ませる。その時間と切り離して絵画は生まれようがない。絵画という行為が、シャッターによる世界の一瞬の切断を望むことはできないのだ。

『絵画の二十世紀』の要約&本文解説

 

200字要約写真の登場により視覚は変化し、画家たちは写真的視覚に影響されて、肉眼では捉えられない細部や瞬間を描こうとするようになった。だが、それは対象への信頼や愛情、信仰に支えられた絵画の凝縮力を失わせ、外面的写実に偏った表現になった。対象として〈在るもの〉との接触が失われたことで、絵画という行為の実在性も見失われた。絵画とは時間と内面を注ぎ込み、精神的に対象と関わる行為であるという本質を見直す必要がある。(199文字)

19世紀に写真が生まれてから、リアリズムを目指す画家たちは、次第に「写真的な見え方」に影響を受けるようになりました。

写真は、肉眼では見えない細部や一瞬の切り取りを見せてくれます。このような視覚の特徴は「視覚の無意識」とも呼ばれ、人の意識が気づかないうちに見てしまっているものです。

多くの画家たちは、「写真以上にリアルな絵を描きたい」と考え、そうした写真的視覚をまねて、あえて目に見えないような細部まで描くことに力を注ぐようになりました。

しかし、その結果として、かつてミレーのような画家が持っていた、対象への信頼や愛情、信仰に基づいた深い関わりが失われていきました。画家たちは、現実に〈在るもの〉との接触を失い、絵を描くという行為そのものの意味、つまり絵画の「実在」を見失ってしまったのです。

結論:写真に影響された絵は、本来の絵画とは違う

このように筆者は、写真の影響を受けて描かれた絵は、たとえリアルに見えても、対象への精神的な関わりや、時間をかけて作り上げる絵画の本質からは遠ざかってしまったと批判しているのです。

全体として筆者は、「絵画とは何か」という本質的な問いに立ち返り、視覚的に〈そっくり〉であることではなく、画家の内面や時間の凝縮こそが絵画の本質であるという立場を強調しています。

『絵画の二十世紀』の意味調べノート

 

【身も蓋もない(みもふたもない)】⇒率直すぎて配慮や遠慮がないさま。味気ない。

【残酷(ざんこく)】⇒情け容赦がなく、ひどくつらいさま。

【狼狽(ろうばい)】⇒あわてふためき、どうしてよいかわからなくなること。

【嘲弄(ちょうろう)】⇒ばかにしてからかうこと。

【抹殺(まっさつ)】⇒完全になかったことにすること。

【かつがれる】⇒利用される。

【前衛(ぜんえい)】⇒芸術や思想の分野で、新しいことを先駆的に行うこと。また、その人。

【凝縮(ぎょうしゅく)】⇒内容や意味がぎゅっとつまっていること。

【デッサン】⇒絵画を製作するために、描こうとするものの形をおおまかに描写すること。

【姿態(したい)】⇒ある姿勢をとったり動いたりしている姿。

【精確(せいかく)】⇒非常に正確で間違いのないさま。

【体得(たいとく)】⇒実際に経験して身につけること。

【中枢(ちゅうすう)】⇒物事の中心となる重要な部分。

【親和感(しんわかん)】⇒親しみやすさや相性の良さを感じること。

【抜き去りがたい(ぬきさりがたい)】⇒捨てることができない。否定できない。

【崩壊(ほうかい)】⇒組織や体制などがくずれ壊れること。

【信仰(しんこう)】⇒宗教や思想などを信じて敬うこと。

【~やまない】⇒~せずにはいられない。どこまでも~する。

【崇拝(すうはい)】⇒非常に尊敬して敬うこと。

『絵画の二十世紀』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

キネンの式典が行われる。

②事態のシュウシュウがつかない。

③液体がすぐにギョウコした。

④夜空にコウサイがきらめいている。

バッポン的な改革が求められる。

解答①祈念 ②収拾 ③凝固 ④光彩 ⑤抜本
問題2「アングルやダヴィットのような画家の名前は、この観念の正当化のために大いにかつがれる」とあるが、「この観念」とはどのような考えか?
解答絵画は、画家の印象によって誇張や変形や強調をせずに、その物をはっきりと正確に描くべきだという考え。
問題3「それは、この絵が人体の動きというものを凝縮する力に因っている。」とあるが、「それ」とはどのようなことか?
解答落ち穂を拾う三人の農婦が、画面上で小さく動いているように見えること。
問題4「視覚の無意識」とは、どのようなことか?
解答極度の瞬間性や驚くべき切断面など、見ていながらそれと気づかないもの、見ているが意識できていない領域のこと。
問題5「絵の外に在るものへの強い信頼」とは、何を指すか?
解答絵の対象に対する愛情と、その対象を生み出すものへの信仰の心。

まとめ

 

今回は、『絵画の二十世紀』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。