「陰ながら応援する」という言い方をご存知でしょうか?
日常会話だけでなく、ビジネスや恋愛など人の心理を表す場面でも用いられています。ただ、具体的な使い方が分かりにくい言葉でもあります。
そこで本記事では、「陰ながら応援する」の意味や心理、例文、英語訳などを詳しく解説しました。
陰ながら応援の意味・心理
「陰ながら応援」とは「表立ってはいないけども、ひそかに応援すること」を表したものです。
通常であれば、人のことは表立って素直に応援するのが基本です。しかし、何らかの事情や理由があり直接的に相手の事を応援できないような時に「陰ながら応援します」などと言います。
この時の事情というのは状況によっても異なってくるため一概には言えません。ただ、一般的には次の3つのどれかに当てはまることが多いです。
①表だって応援した場合、自分に責任が伴うため。
②自分が表に立つと、かえって相手の妨害になると考えているため。
③礼儀として言っておこうという心理を隠すため。
①は、応援しながらも「自分は責任を取りたくない」「あまり深く関わりたくない」というネガティブな姿勢が表れたものです。
例えば、相手がビジネスを始めるので出資が欲しいと言ってきたとします。しかし、自分としてはお金を投資したくないような場合は、「出資することはできませんが、陰ながら応援しています」などと言います。
②は自分が表立って応援すると、逆に妨害してしまうかもしれないという配慮が込められたものです。陰ながら応援するとは言っても、本音では強く応援したい気持ちがある時に使われます。
例えば、相手が受験勉強をしているような場合は、表立って応援するよりも陰ながら応援した方が相手の勉強時間をとらなくて済みます。
また、相手がスポーツの練習に黙々と打ち込んでいるような場合は、自分が直接応援しに行くと逆に邪魔になってしまうかもしれません。このような場面では、「(直接的にはサポートできないけども、)陰ながら応援する」という意味で使われます。
③は「礼儀として言っておこう」「失礼がないように言っておこう」という心理が込められたものです。
状況によっては、応援する相手が上司や先輩など自分よりも目上の人であることもあります。こういったケースでは、応援する・しないといったことよりもまず相手に失礼な印象を与えないことの方が重要です。
そのため、「陰ながら応援しております」「陰ながら応援させて頂きます」などのように言うということです。非常に形式的ではありますが、ビジネスではよく使われる表現となります。
以上、3つの事情を解説しましたが、どれに該当するかはお互いの今までの人間関係によって異なってきます。
それほど親しくない間柄であれば①でしょうし、自分と親しく仲の良い間柄であれば②です。プライベートではなく、仕事上での付き合いであればもっぱら③が多くなります。
影ながら応援は誤用
「陰ながら応援」の「陰」を「影」と書くのは誤用です。その理由は、両者の字義を確認すれば理解することができます。
「影」=光が遮られることで生じる黒い形のこと。
「陰」=光、日光、風雨などが遮られて直接当たらないところ。
「影」は元々、月や星、灯火などの光を表す言葉でした。そこから、光が遮られる時にできる黒い姿や形などを表す言葉になったと言われています。
対して、「陰」の方は光や日光、風雨などが当たらない部分を指します。ここから転じて、「人目につかない所・見えない部分」などの意味として現在では使われています。
簡単に言えば、見れるのが「影」、見れないのが「陰」ということです。
「かげながら応援」は、その人の見えないところでこっそり応援することです。したがって、この場合は「影」ではなく「陰」を用いることになります。
恋愛においての使い方
異性から「陰ながら応援しています」と言われた場合は、2つの心理が考えられます。
①嫌いというわけではないが、一定の距離を保ちたいという心理。
②直接的に言わないことで、相手の出方を伺おうとする心理。
①はあくまでも形式的に応援したいという考えです。相手のことを嫌いではありませんが、特に好きというわけでもありません。したがって、一定の距離を保ってあまり深くかかわりたくはないという心理が込められています。
②は相手の出方や反応を伺おうとする心理です。直接的・大々的に応援すると言うと、場合によっては相手が身構えてしまうと考える人もいます。そのため、当たり障りのない表現を使うことでうまくバランスをとった表現を用いているということです。
どちらの心理もあなたのことをひどく嫌っているというわけではありません。
ただ、もしも相手が自分と別れた彼氏や彼女であれば、「陰ながら応援している」と言われても復縁の可能性はほぼないと考えてよいでしょう。この場合は、「相手を傷付けないように」という社交辞令で発言している可能性が非常に高いです。
仮に、相手が好きな人で恋愛感情が残っていたとしても「脈なし」と判断するのが妥当です。
陰ながら応援の類義語
「陰ながら応援」の類義語は以下の通りです。
- 陰で応援
- そっと応援
- こっそり応援
- ひそかに応援
- 人知れず応援
- 心の中で応援
- うちうちで応援
- 草葉の陰から見守る
いずれの言葉も「表立ってではなく、陰で応援すること」を表したものです。この中では、「こっそり応援」「ひそかに応援」などは比較的意味が近い言葉です。ただ、全く同じ意味の言葉(同義語)はありません。
「陰ながら応援」は、話し言葉ではなく文章などの書き言葉で使われるという特徴があります。対して、「こっそり」「ひそかに」などが付く表現は主に話し言葉で使われるという違いがあります。
実際に目上の人に敬語として使う場合は、別の言い方をするという方法もあります。例えば、「心より応援させて頂きます」「ささやかながら応援させて頂きます」「微力ながら応援させて頂きます」などの言い方です。
その他、「ご健闘をお祈り申し上げます」「ますますのご活躍を祈念しています」などの言い方をしても構いません。
陰ながら応援の反対語
逆に、反対語としては次のような言葉が挙げられます。
- 表立って応援
- 目立って応援
- 際立って応援
- 堂々と応援
- 公然と応援
反対語の場合は「表立って」「目立って」「際立って」などの語が前に付きます。ただ、実際にはこのような使い方をすることはほとんどありません。
多くの場合、極端に派手に応援する場合を除き、単に「応援」を用います。純粋に相手を応援したいのであれば、「応援する」「応援しています」などの言い方をすれば十分です。
陰ながら応援の英語訳
「陰ながら応援」は、英語だと次のように言います。
「support ~ secretly」(~をひそかに応援する)
「support ~ in the shade」(~を陰ながら応援する)
「support」は「支える・支持する・援助する」などの訳がありますが、ここでは「応援する」という意味で使われています。「secretly」は「隠れて・ひそかに・こっそりと」などの意味を表す副詞です。
また、「in the shade」は熟語で「陰ながら」という意味です。「shade」は「陰」を意味する単語です。「~」の部分には「you」や「him」「her」など人を表す名詞が来ます。
例文だと、それぞれ以下のような言い方です。
I will support you secretly.(私はあなたを陰ながら応援するつもりです。)
I support her in the shadow.(彼女のことを陰ながら応援しています。)
陰ながら応援の例文・用例
最後に、「陰ながら応援」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 東大合格を目指すと聞きましたが、陰ながら応援しています。
- 彼とは別れることになったが、最後に「陰ながら応援している」と一言言われた。
- 好きな人から「陰ながら応援している」と言われたので、真意を知りたかった。
- 皆さんとは別れることになりましたが、今後も陰ながら応援するつもりです。
- 会社を退職することになりましたが、同期のことは陰ながら応援しています。
- 課長には今まで本当にお世話になりました。今後のご活躍を陰ながら応援しております。
- 部長には大変お世話になりました。新しい会社でのご活躍を陰ながら応援しております。
「陰ながら応援」は、使う場面や相手によって言い回しが異なってきます。例えば、自分の友人や会社の同僚、目下の者などであれば「陰ながら応援している」「陰ながら応援しています」などの言い方で構いません。
ただ、会社の上司など目上の人に対して使う場合は、「陰ながら応援しております」「陰ながら応援させて頂きます」など丁寧な言い方にするのが一般的です。目上の人に対しては、このように最低限の敬語を使い、相手に敬意を示すことが重要です。
なお、「陰ながら応援する」という表現は、家族など近しい関係の間柄では通常は使いません。なぜなら、周りからすると「お互いが距離をあけている」という誤解を与えてしまう可能性もあるからです。
家族など身近な人であれば、純粋に「応援しているよ」「頑張って」など直接的な表現にするのが無難です。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「陰ながら応援」=表立ってはいないけども、ひそかに応援すること。
「相手の心理」=①深く関わりたくない②邪魔したくない③礼儀として。
「類義語」=「陰で応援・そっと応援・こっそり応援・ひそかに応援」
「反対語」=「表立って応援・目立って応援・際立って応援・応援」
「英語訳」=「support ~ secretly」「support ~ in the shade」
「陰ながら応援する」という言い方は、日常会話、ビジネスシーンなど様々な場面で用いられます。そして、恋愛においては相手の心理が込められた表現でもあります。もしもこのセリフを投げかけられたら、ぜひ正しい理解をして頂ければと思います。