「角が立つ」という慣用句を聞いたことがあるでしょうか?普段の会話やビジネスなどで使われる表現で、「角が立つ言い方」のように用いられます。
ただ、具体的な使い方や由来などが気になる言葉でもあります。似たようなことわざである「智に働けば角が立つ」との違いも気になる所です。
そこで本記事では、「角が立つ」の意味や語源、類語・英語訳などを含め詳しく解説しました。
角が立つの意味・読み方
「角が立つ」は「かどがたつ」と読みます。「つのがたつ」とは読まないので注意して下さい。
意味は「事が荒立つこと・他人との関係が穏やかでなくなること」を表したものです。
主に人の発言が理屈っぽかったり相手に対してとげとげしい印象を与えたり際に使われます。
例えば、人に何かを伝える際に直接的にはっきりと言ってしまい、相手を傷つけてしまうようなことはよくあります。
このような場面では、「角が立つ言い方をした」などのような使い方をします。つまり、「事が荒立つような言い方をした」ということです。
一方で、相手の立場や心情などを考えて、間接的でやわらかい物の言い方をした場合などは「角が立つ言い方を避けた」「角が立たない言い方をした」などのように用います。
角が立つの語源・由来
「角が立つ」は、物質の角がとがって張っている様子からできた慣用句です。
正方形などのように、物質の角がとがっているのは、見た目からしてもとげとげしい印象を与えます。この事から、他人との人間関係が穏やかでなくなることを「角が立つ」と言うようになったわけです。
つまり、ここでの「角」は、尖っていてなおかつ突き出た部分を指しているということになります。
その他の慣用句をみても、例えば、性格が世慣れて穏やかになることを「角が取れる」と言ったりします。また、若い時に荒々しかった人が年を取るにつれて穏やかになることを「性格が丸くなる」と言ったりします。
この意味での慣用句も、「角が立つ」と同じ語源だと考えれば問題ありません。
角が立つの類義語
続いて、「角が立つ」の「類義語」を紹介します。
- 波が立つ
- 波風が立つ
- 事が荒立つ
- 問題になる
- 問題が波及する
- もつれる
- もめ事になる
- 不和になる
- トラブルになる
- 面倒なことになる
「角が立つ」と似た意味の言葉はいくつかありませうが、全く同じ意味の言葉(同義語)というのはありません。この中だと、「波風が立つ」は比較的意味も近くよく使われます。
「波風が立つ」とは「それまで平穏だったところにもめ事が起こること」を表した慣用句です。主に家庭や世の中において問題事が起こった際に使われます。
「角が立つ」はささいな物の言い方などの問題に対しても使われますが、「波風が立つ」はどちらかというともっと大きな問題に対して使われます。この点が両者の違いだと言えます。
なお、その他の類義語だと「智に働けば角が立つ」ということわざもあります。
「智に働けば角が立つ」とは「理性のみで発言したり行動したりすると、人間関係がギスギスするため穏やかに暮らせなくなる」という意味です。
「智」という字は「叡智(えいち)」「機智(きち)」などの熟語と同じ漢字で、ここでは理性や理屈と同じ意味で使われています。つまり、「理屈っぽい発言ばかりをしていると、相手からは嫌われれてしまう」ということです。
「角が立つ」単体でも、理屈っぽい発言をしている人を対象とすることはできますが、「角が立つ」ははっきりと指摘する人や単にとげとげしい物の言い方をするような人も対象とすることができます。
角が立つの対義語
逆に、「対義語」としては次の言葉が挙げられます。
- 角が立たない
- 波風が立たない
- 事を荒立てない
- 当たり障りのない
- 悪いようにはならない
- リスクの少ない
- 手堅い
- 堅実な
- 無難な
- 安全な
- 穏便な
反対語の場合は、「角が立つ」「波風が立つ」を否定した表現が主なものとなります。さらにそこから派生して、「安全な・無難な」などのように物事を手堅く荒立てないように進める様子を表す言葉も反対語に含まれます。
角が立つの英語訳
「角が立つ」は、英語だと「create bitter feelings」と言います。直訳すると、「辛辣な感情をうみだす」という意味です。
「bitter」は「苦い・苦痛な・激しい」などの訳がありますが、ここでは「辛辣な・つらい」という意味で使われています。
【例】⇒Her remarks just created bitter feelings.(彼女の発言は角が立っただけであった。)
その他には、次のような表現を使うことも可能です。
That would create hard feelings.(そう言っては角が立つだろう。)
If you decline his kind offer, you will offend him.(せっかくの彼の申し出を断ったら角が立つだろう。)
前者は「厳しい感情をうみだす」、後者は「相手を傷つける」という意味での一文です。
「offend」には「怒らせる・傷つける・感情をそこなう」などの意味があるため、「角が立つ」というニュアンスを伝えることができます。
角が立つの使い方・例文
最後に、「角が立つ」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 部下をきつく叱りたいところだが、傷つきやすい性格なので角が立つ言い方はやめておこう。
- ここで本音を打ち明けてしまうと角が立つと思うので、やっぱり彼には伝えてないでおくよ。
- 思ったことを口にするのはいいが、角が立つ言い方をするのはなるべく避けた方がよいだろう。
- 君は子供ではなくもう立派な社会人なのだから、そろそろ角が立つような発言は控えてくれ。
- 直接話をするとお互いに角が立つ言動をしてしまう可能性もあるので、間に誰かを入れるべきだ。
- 彼女は頭の回転が速く話も上手いが、角が立つ発言をすることがあるのが唯一の欠点である。
- 智に働けば角が立つと言うが、何でもかんでも正論を言って相手を論破すればいいわけではない。
「角が立つ」は、例文のように「相手の感情を刺激しないようにする」という意味合いで使われることが多いです。言い換えれば、発言や行動には前もって事前に注意するということです。
その他には、正直に言葉を発しやすい人を指摘したり注意したりするような使われ方をすることもあります。
いずれにせよ、人間関係において角が立つのは好ましい事ではありません。したがって、単に「角が立つ」と言った場合、基本この慣用句は否定的な意味として使われます。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「角が立つ」=事が荒立つ・他人との関係が穏やかでなくなる。
「語源・由来」=物質の角がとがって張っている様子から。
「類義語」=「波風が立つ・事が荒立つ・問題になる・もめ事になる・面倒なことになる」等。
「対義語」=角が立たない・波風が立たない・事を荒立てない・当たり障りのない」等。
「英語訳」=「create bitter feelings」「create hard feelings」「offend~」
「角が立つ」は、物の角が尖っているさまからできた慣用句です。普段の文章や会話でも使える表現ですので、これを機にぜひ使ってみてはどうでしょうか?