いやがうえにも 意味 例文 短文 類語 対義語 いやがおうでも

いやがうえにも」という言葉をご存知でしょうか?

高校国語の教科書に採用されている『水の東西』に出てくる表現でもあります。ただ、具体的な使い方や似たような語である「いやがおうにも」との違いが気になる人も多いと思われます。

そこで本記事では、「いやがうえにも」の意味や短文、漢字表記、類義語などを含め詳しく解説しました。

「いやがうえにも」の意味・漢字

 

最初に、「いやがうえにも」という語を辞典で引いてみます。

【いやが上にも】

読み方:いやがうえにも 別表記:弥が上にも

【意味】

いやが上にも(弥が上にも)は「さらに」「いっそう」「ますます」という意味で使われる言い回し。ただでさえ(それでなくとも)顕著だった傾向が、より一層はなはだしくなった、という状況を表現する意味合いを示す。

出典:実用日本語表現辞典

いやがうえにも」は、漢字だと「いやが上にも」もしくは「弥が上にも」と表記します。意味は「さらに・いっそう・ますます」などの状況を表したものです。

簡単に短文を紹介すると、次のようになります。

スペシャルゲストの登場に、会場はいやがうえにも盛り上がった。

この場合はつまり、会場がますます盛り上がりを見せたという意味です。それまでも盛り上がりを見せていたものの、ゲストの登場によりさらに雰囲気が盛り上がったことを伝える一文となっています。

このように、「いやがうえにも」という言葉は、ただでさえはっきりと表れている傾向がより一層程度を増すような時に使われます。

漢字の語源を確認しておくと、「弥」という字は元々「彌」という字で「弓」が「形」、「爾」は「緩める」という意味を持っていました。

この事から、「大きく広がっていく様子」を表すようになったのが「弥」という字です。転じて、現在では「弥」は「ますます」「いっそう」などの意味として使われるようになっています。

したがって、「弥が上にも」を文字通り解釈するなら、「元々すごかったが、ますます盛んになる」という意味になることが分かります。

『水の東西』での意味・用例

いやがうえにも 水の東西 意味

「いやがうえにも」は、有名な評論文である『水の東西』という作品に出てきます。以下、実際の引用部分です。

見ていると、単純な、緩やかなリズムが、無限にいつまでも繰り返される。緊張が高まり、それが一気にほどけ、しかし何事も起こらない徒労がまた一から始められる。ただ、曇った音響が時を刻んで、庭の静寂と時間の長さをいやがうえにも引き立てるだけである。水の流れなのか、時の流れなのか、「鹿おどし」は我々に流れるものを感じさせる。それをせき止め、刻むことによって、この仕掛けはかえって流れてやまないものの存在を強調しているといえる。

出典:山崎正和『水の東西』

ここでの「いやがうえにも」は、「さらに・いっそう」などの意味で使われています。

『水の東西』では、「日本における水」と「西洋における水」が対比して語られています。日本における水を象徴するものが「鹿(しし)おどし」です。一方で、西洋における水を象徴するのが「噴水」です。

「ししおどし」は、作中では「自然に流れるもの・形のないもの」という意味で語られていますが、「噴水」の方は「目に見える空間的な造形物」として語られています。

上記の一文は、このししおどしが自然に流れて音響を繰り返すことにより、庭の静寂と時間の長さを、よりいっそう引き立てていることを伝えているものとなっています。

つまり、「ただでさえ日本の庭は静かで時間が長く感じる様子であるのに、ししおどしがあることで、さらにその勢いを増している」という内容を伝えているわけです。

「いやがおうにも」は誤用

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「いやがうえにも」は、誤用が多い言葉です。まず、よく使われる「いやがおうにも」は誤りなので注意してください。

文化庁が出したデータによりますと、本来の正しい言い方である「いやがうえにも」を選択した人が34.9%、誤りの言い方である「いやがおうにも」を選択した人が42.2%という結果が出ています。

間違いが多い理由についてですが、これは似たような語である「いやがおうでも」と混同している人が多いからだと考えられます。

いやがおうでも」は漢字だと「否が応でも」と書き、こちらは正式に存在する言葉です。「いやがおうでも」とは「有無を言わせずに・無理にでも」などの意味を持つ副詞です。

「否」は「NO」、「応」は「YES」を表すので、「好む・好まないにかかわらず」という意味になります。したがって、使う場面としては、本人の意思に関係なく実際の行動を強いられてしまうような際に使うのが適しています。

【例文】

  • 東京で一人暮らしをすると、いやがおうでも出費は増えてしまう。
  • 会社に入れば、いやがおうでも上司の指示に従わなければいけない。
  • 今日は妻の誕生日なので、いやがおうでも早く帰宅しなければならない。

その他、別の誤用としては「嫌が上にも」「否が上にも」なども挙げられます。この二つに関しても間違いが多い表記なので注意する必要があります。以下、正しい表現と誤った表現のまとめです。

「〇」⇒「弥が上にも」「否が応でも

「×」⇒「嫌が上にも」「否が上にも」「否が応にも)」

「いやがうえにも」の類義語

 

「いやがうえにも」の「類義語・言い換え表現」は、以下の通りです。

  • さらに
  • いっそう
  • ますます
  • 尚のこと
  • なおさら
  • 前にも増して
  • 以前にも増して
  • よりいっそう
  • 一段と
  • もっと
  • これまで以上に

基本的には、「すでにそうであるのに、よりその傾向が強まるさま」を表した語となります。この中でも「さらに・いっそう・ますます」などはすでに説明したように「いやが上にも」と同じ意味です。したがって、これら三つは同義語だと考えて問題ありません。

「いやがうえにも」の対義語

 

「いやがうえにも」の対義語と呼べるような言葉は特にありません。

しいて挙げるならば、「まったく、(変わらない)」「少しも、(変わらない)」などは対義語に近い意味を持つ言葉です。

「いやがうえにも」は、「前よりも勢いや程度が増す様子」を表す言葉でした。そのため、「勢いや程度が変わらない様子」を表す言葉が反対語に近い意味を持っていると言えます。

「いやがうえにも」の英語訳

 

「いやがうえにも」は、英語だと「more and more」と言います。「more」は「~よりも」などの意味で、比較を表す際に使われる単語です。

【例文】⇒This test was more difficult than last time.(今回のテストは前回よりも難しかった。)

この「more」を二つ使い、「more and more」とすることで、「さらに・ますます」などの意味を持つ副詞として使うことができます。

【例文】⇒This test was more and more difficult when it was compared to last time.(今回のテストは前回よりもさらに難しかった。)

「いやがうえにも」に関しても「さらに・ますます」と同じ意味なので、「more and more」を使うことができます。

Our expectations for him were more and more higher.(私たちの彼への期待は、いやがうえにも高まった。)

The stadium became more and more exciting with the appearance of star players.(スター選手の登場に球場はいやがうえにも盛り上がった。)

「いやがうえにも」の使い方・例文

いやがうえにも 使い方 例文

最後に、「いやがうえにも」の使い方を例文で紹介しておきます。

  1. 決勝戦ということもあり、スタンドはいやがうえにも盛り上がることとなった。
  2. 好きな子の声援が耳に入れば、いやがうえにも士気が高まることになるだろう。
  3. 本番直前になり、彼女の緊張はいやがうえにも高まる状態へと変わっていった。
  4. 大物芸能人同士の熱愛が発覚し、テレビ局の報道はいやがうえにも過熱した。
  5. 新作映画の評判が大変良いと聞き、いやが上にも期待が高まるのであった。
  6. 両親からテストの結果を褒められたので、いやが上にも勉強を頑張ろうと決意した。
  7. 今日はワールドカップの試合なので、いやが上にも応援は盛り上がることになるだろう。

 

「いやがうえにも」は、人々の関心や意気込み、応援の盛り上がりなどの勢いが高まるようなときに使われます。その中でも特に、応援の盛り上がりを形容するようなシーンで使われることが多いです。

例えば、野球場での応援は、スター選手が登場するとますます熱気が高ぶります。また、サッカーの試合などでも通常の試合ではなくワールドカップともなると、よりいっそう応援が引き立つようになります。

このようなシーンにおいて、「いやがうえにも」を使うのが適しているということになります。

なお、実際に使う際には漢字表記で「弥が上にも」と書くことはあまり多くありません。ほとんどの場合はひらがなで書くか、「うえ」のみを漢字にした「いやが上にも」と書くかのどちらかです。

まとめ

 

以上、今回のまとめとなります。

いやがうえにも」=さらに・いっそう・ますます漢字だと「いやが上にも」「弥が上にも」。

誤用表現」=「嫌が上にも」「否が上にも」「否が応にも」。特に最後の「いやがおうにも」は多い誤り。

類義語」=「なおさら・前にも増して・よりいっそう・一段と・もっと」など。

対義語」=特にない。しいて挙げるならば、「全く・少しも」など。

英語訳」=「more and more」

「いやがうえにも」は、普段の文章の中でもよく使われる言葉です。ただ、間違えて「いやがおうにも」と書いてしまうことが多いので、誤用には注意するようにして下さい。