「犬も食わない」ということわざを聞いたことがあるでしょうか?
使い方としては、「犬も食わないケンカだ」などのように用いられます。ただ、なぜ動物の中でも犬なのか?といった疑問があります。
そこで本記事では、「犬も食わない」の意味や由来、英語訳などを含め詳しく解説しました。
犬も食わないの意味・読み方
最初に、この言葉を辞書で引いてみます。
【犬も食わない(いぬもくわない)】
⇒食えるものなら何でも食うはずの犬さえも食わない。ひどく嫌われることのたとえ。また、ばかばかしくて相手にする気になれないことのたとえ。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「犬も食わない」は、「いぬもくわない」と読みます。意味は「ひどく嫌われること・ばかばかしくて相手にされないこと」などを表したものです。
主に誰からも相手にされないような喧嘩を非難するような際に使われる慣用句です。特に、夫婦喧嘩に対してはよく使われます。
例えば、夫が妻の料理に文句を言ったり、妻が髪型を変えたことに夫が気づかなかったりすることで夫婦喧嘩が始まることはよくあります。ところが、こんな喧嘩は周りの人からしたらどうでもいいことですし、わざわざ仲裁しようとは思わないでしょう。
このようなばかばかしい夫婦喧嘩は、まさに「犬も食わないこと」だと言えます。つまり、「犬も食わない」とは周囲の人からみてまともに相手にするのがばからしい様子のことを表すわけです。
犬も食わないの語源・由来
「犬も食わない」は、何でも好んで食べてしまう犬が、一切食べない様子からできた言葉です。
古来から犬は人間にとって身近な動物でした。それがさらに顕著になり始めたのが江戸時代に入ってからだと言われています。
当時は庶民も犬を飼っていましたが、現在のようなドッグフードは当然ありませんでした。そのため、人間と同じような食べ物、具体的には米や魚、穀類といったものを食べていたのです。
そのため、「犬」=「何でも食べる動物」というイメージが世の中に広がっていきました。
ところが、そんな食いしん坊な犬が全く興味を示さないほどまずい食べ物があればどうでしょうか?当然、「誰からも相手にされない対象」であることは容易に想像できるでしょう。
この事から、「犬も食わない(もの)」=「ばかばかしいこと・ひどく嫌われること」などの意味に派生していったわけです。
犬も食わないの類義語
続いて、「犬も食わない」の類義語を紹介します。
類義語は「嫌う様子・見向きもしない様子」などを表したものとなります。その他には、「軽く見る」「軽蔑する」などの語で言い換えることも可能です。
「犬」を使ったことわざ
「犬」を使ったことわざは他にも多くあります。ここでは代表的な三つを紹介しておきましょう。
この中だと、「犬も歩けば棒に当たる」は特に有名なことわざです。元々は「災難にあう」の意味でしたが、現在では反対の意味(②)で使うことが多いです。
また、「犬の前の説教」は「馬の耳に念仏」「猫に小判」「豚に真珠」などの類義語となります。
犬も食わないの英語訳
「犬も食わない」は、英語だと次の三つの言い方があります。
①「avoided by everybody(みんなが避ける)」
②「disliked by everybody(みんなが嫌いである)」
③「not even a dog will eat(犬でさえ食べない)」
①の「avoid」は「避ける・近寄らない」という意味なので、「みんなに避けられている」という訳になります。また、②の「dislike」は「嫌いである」という意味なので、「みんなに嫌われている」という訳になります。
③に関しては、「even(~でさえ)」を使うことにより、「犬でさえ食べないだろう」という訳になります。
この中だと、最後の③が文章で使う際には分かりやすいでしょう。
They are having a quarrel that not even a dog will eat.(彼らは犬も食わないような喧嘩をしています。)
「quarrel」は「けんか」「仲たがい」という意味です。
犬も食わないの使い方・例文
最後に、「犬も食わない」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 夫婦喧嘩は犬も食わないと言うけれど、親子喧嘩も似たようなものだね。
- 彼らの喧嘩は犬も食わないものだと思っていたが、今回は深刻そうである。
- 犬も食わない喧嘩と言っていたが、原因はいったい何だったのだろう。
- 犬も食わない喧嘩だろうから、そのうち彼らは仲直りすると思います。
- 友人へ相談したら、犬も食わないことのように軽く扱われてしまった。
- 夏休みに風邪で寝込んでしまったが、夏の風邪は犬も食わないというのは本当だった。
「犬も食わない」は、すでに説明したように夫婦喧嘩に対して使うことが多いです。
もちろん、友人や家族間の仲にも使うことができますが、夫婦喧嘩に使う割合が高いです。夫婦の喧嘩に対して、くだらない・バカバカしいと感じた時にこの言葉を使うのが適しています。
また、場合によっては風邪などの症状に対して使うこともあります。最後の例文がその例です。
「夏の風邪は犬も食わない」とは「暑い夏に風邪を引くほど、ばかばかしい様子はない」という意味のことわざです。通常、風邪というのは冬などの寒い季節に引くものです。夏に風邪を引く人なんてあまり聞いたことがありません。
そのため、場合によっては相手からバカにされてしまうこともあるでしょう。そこで、「犬も食わないほどバカバカしい夏風邪」という意味で、このことわざを使うわけです。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「犬も食わない」=ひどく嫌われること・ばかばかしくて相手にされないこと。
「語源・由来」=何でも好んで食べてしまう犬が一切食べない様子から。
「類義語」=「忌避・敬遠・下目に見る・ないがしろにする」など
「英語約」=「avoided by everybody」「disliked by everybody」「not even a dog will eat」
「犬も食わない」は、犬を飼っていない人にとってはイメージしにくい言葉だったかもしれません。あまりよい意味では使わない言葉ですが、この機会に覚えておくとよいでしょう。