『生きることと食べることの意味』は、福岡伸一による評論文です。教科書・現代の国語にも収録されています。
ただ、本文を読むとその内容が分かりにくいと感じる箇所もあります。そこで今回は、『生きることと食べることの意味』のあらすじや要約、語句の意味などを解説しました。
『生きることと食べることの意味』のあらすじ
食べ物を単なるカロリー源であり、燃焼させて熱エネルギーにし、体温や運動エネルギーに変えるものだと考えている人もいるかもしれない。だが、このような考えは、実は生命現象の大事な側面を見失ってしまうことになる。
分子生物学者シェーンハイマーは、ある種のコペルニクス的な転回をもたらす発見をした。彼はネズミに餌を与え、餌の分子一つ一つに印をつけて、行方を追跡した。
その結果、食べた物の大半がネズミの体の隅々に散らばり、体の一部になることがわかった。動物の体は堅牢不変の構造ではなく、たえず分解と合成を繰り返し、体は新たに摂取した食べ物の分子と置き換わることを発見したのだ。
私たち生命の実態は、常に動いている。古いものが分解され、新しいものが合成される。生きるとは、その絶え間のない回転そのものである。その回転を維持するためにも、私たちは食べ続けなければならない。
『生きることと食べることの意味』の要約&本文解説
私たちの体内には、自動車のエンジンのようなものがあり、ガソリン(食べ物)を注ぎ込めば、体を走らせることができる、と考えている人がいるかもしれません。
しかし、筆者はそのような食べ物を単なるカロリー源、エネルギー源としてだけ見ることは、実は生命現象の非常に大事な側面を見失ってしまうのだと主張しています。
その事を説明するために、本文中ではシェーンハイマーという科学者による実験が紹介されています。
彼はネズミに餌を与え、その餌の分子がネズミの体のどこに行くかを調べました。当初は、ネズミは食べた餌を体内で燃やすことにより、生命維持をするためのエネルギーに変え、燃え滓は捨ててしまうのだろうと考えていました。
ところが、研究を進めるうちに、食べた物の大半がネズミの体の隅々に散らばっていき、やがて体の一部になっていくことが分かりました。
この事により、私たち動物の体は、食べた物と体の分子がたえず分解と合成をくりかえし、体はやがて新たに摂取した食べ物の分子とすっかり置き換わることが判明したのです。
このように、生命というのは常に動いており、古いものが分解され、新しいものが合成されていきます。そのため、生きるとは、その絶え間のない回転そのものであると言うことができます。
したがって、筆者は、私たちはその回転を維持するために食べ物を食べなければならない、と結論づけているわけです。
『生きることと食べることの意味』の意味調べノート
【御馳走(ごちそう)】⇒ぜいたくな料理。豪華な食事。
【本質的(ほんしつてき)】⇒物事の根本的な性質にかかわるさま。
【生物学(せいぶつがく)】⇒生物および生命現象を研究する学問。
【源(げん)】⇒物事の出てくるもと。
【燃焼(ねんしょう)】⇒燃えること。
【側面(そくめん)】⇒さまざまな性質・特質のうちの、ある面。
【開拓者(かいたくしゃ)】⇒新しい領域を切り開く人。
【コペルニクス】⇒ポーランドの天文学者(1473年~1543年)。地球とその他の惑星は太陽の周囲をめぐるという地動説を発表し、当時の定説だった地球中心宇宙説に反対し、近世世界観の樹立に貢献した。
【転回(てんかい)】⇒向きや方向がかわること。
【追跡(ついせき)】⇒物事の経過をたどって調べること。
【隅々(すみずみ)】⇒あらゆる方面。
【目の当たり(まのあたり)】⇒目の前。眼前。
【堅牢(けんろう)】⇒物がしっかりと、壊れにくくできていること。
【不変(ふへん)】⇒いつまでも変わらないこと。
【摂取(せっしゅ)】⇒取り入れて自分のものにすること。
【例外(れいがい)】⇒通例にあてはまらないこと。一般原則の適用を受けないこと。
【万物は流転する(ばんぶつはるてんする)】⇒この世にあるすべてのものは、絶え間なく変化してとどまることがないということ。
【哲学者(てつがくしゃ)】⇒哲学を研究する学者。「哲学」とは、世界や人生などの根本原理を追求する学問。
【挨拶(あいさつ)】⇒人に会ったり別れたりするとき、儀礼的に取り交わす言葉や動作。
【実態(じったい)】⇒実際の状態。本当のありさま。
【絶え間のない(たえまのない)】⇒中断することがないさま。途絶えることなく続くさま。
『生きることと食べることの意味』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①脂肪をネンショウさせる。
②荒野をカイタクする。
③方針を百八十度テンカイする。
④失敗の原因をツイセキする。
⑤栄養をセッシュする。
⑥万物はルテンする。
⑦アイサツを怠らない。
次の内、本文の内容を表したものとして適切でないものを選びなさい。
(ア)シェーンハイマーは、”食べること”について、ある種のコペルニクス的な転回をもたらす発見をした科学者である。
(イ)シェーンハイマーの実験では、ネズミが食べた餌は体の中の一部となり、その食べた分の体重が増えたことが分かった。
(ウ)シェーンハイマーの研究により、私たちの体の細胞は、一年もすれば、その間に食べた物の分子と置き換わっていることが分かった。
(エ)生きるとは、絶え間のない回転そのものであり、その回転を持続するために、私たちは食べ続けなければならない。
まとめ
以上、今回は『生きることと食べることの意味』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。