第四場面:雪の富士と月見草

 

吉田に一泊して、あくる日、

【あくる日(ひ)】⇒次の日。

【つんと】⇒愛想なくとりすましているさま。

【かん高い(かんだかい)】⇒声の調子が高く鋭い。

【かねがね】⇒以前から。かねて。

【しょげる】⇒がっかりして、元気がなくなる。しゅんとなる。

【月見草(つきみそう)】⇒アカバナ科の越年草。高さ約60センチ。葉は長楕円形で縁にぎざぎざがある。

【背戸(せど)】⇒家の裏口。

【ことさらに】⇒わざわざ。特別に。

【寒村(かんそん)】⇒貧しい村。さびれた村。

【留め置く(とめおく)】⇒他にやらないでそのまま置いておく。

【車掌(しゃしょう)】⇒バスに乗り、旅客・荷物などの車内の事務を取り扱う者。

【遊覧客(ゆうらんきゃく)】⇒遊覧をしに来た客。「遊覧」とは見物して回ること。

【格別(かくべつ)】⇒特別。

【呉(く)れない】⇒くれない。

【散文的な口調(さんぶんてきなくちょう)】⇒通常の文章を読んでいるような話し方。「散文」とは韻律や定型にとらわれない通常の文章を指す。

【物憂い(ものうい)】⇒つらい。

【被風(ひふ)】⇒着物の上に羽織る上着の一種。

【端正(たんせい)】⇒顔だちなどが美しく整っていること。

【しやんと】⇒しゃんと。姿勢または態度などがだらけていないで、きちんとしているさま。

【けふ】⇒今日。

【咏嘆(えいたん)】⇒感動。感嘆。

【日本髪(にほんがみ)】⇒日本に古くからある女性の髪形の総称。

【絹物(きぬもの)】⇒絹で作った衣服。

【まとう】⇒身につける。着る。

【芸者(げいしゃ)】⇒歌舞・音曲を行って酒宴の席に興を添えることを職業とする女性

【車窓(しゃそう)】⇒列車・電車・自動車などの窓。※ここでは「バスの窓」を表す。

【変哲もない(へんてつもない)】⇒特に取り立てて言うほどのこともない。平凡である。

【間抜け(まぬけ)】⇒見当はずれなこと。

【嘆声(たんせい)】⇒なげいたり感心したりしたときに発する声。ため息。

【ひとしきり】⇒しばらくの間。

【御隠居(ごいんきょ)】⇒隠居している人。「隠居」とは仕事をやめてのんびりと暮らすことを表す。

【憂悶(ゆうもん)】⇒思い悩み、苦しむこと。

【一瞥(いちべつ)】⇒ちらっと見ること。

【高尚(こうしょう)】⇒程度が高く上品なこと。けだかくてりっぱなこと。

【虚無(きょむ)】⇒価値や意味を認めないこと。

【共鳴(きょうめい)】⇒他人の考えや行動などに心から同感すること。

【路傍(ろぼう)】⇒道のほとり。みちばた。

【黄金色(こがねいろ)】⇒黄金のように黄色に光る色。

【花弁(かべん)】⇒花びら。

【相対峙(あいたいじ)】⇒互いに対峙すること。

【金剛力草(こんごうりきそう)】⇒夜に咲く月見草のこと。

【遅々として(ちちとして)】⇒進行が遅い状況を形容した表現。

【雁の腹雲(がんのはらぐも)】⇒雁の腹の羽毛のような雲。「雁」とはカモ科の鳥のこと。

【滴る(したたる)】⇒しずくになって垂れ落ちる。

【紅葉(こうよう)】⇒秋になって葉が紅色に変わること。

【凝視(ぎょうし)】⇒じっと見つめること。

【歓声(かんせい)】⇒喜びのあまり叫ぶ声。喜びに満ちた声。

【箒(ほうき)】⇒ほうき。

【不審(ふしん)】⇒疑わしく思うこと。

【眉(まゆ)をひそめる】⇒怪訝(けげん)であったり不愉快であったりして、眉間にしわを寄せること。

【窮する(きょうする)】⇒困りきる。

【曖昧(あいまい)】⇒態度や物事がはっきりしないこと。

【枯れ葉(かれは)】⇒枯れた木の葉や草の葉。

【水の精(みずのせい)】⇒水にまつわる精霊や妖精。

【幽か(かすか)】⇒やっと感じ取れる程度であるさま。

【運筆(うんぴつ)】⇒文章や絵をかくときの筆の動かし方。筆づかい。

【誇張(こちょう)】⇒実際よりも大げさに表現すること。

【身悶え(みもだえ)】⇒苦しみ、いらだちなどのため、からだをよじらせ動かすこと。

【鮮明(せんめい)】⇒あざやかではっきりしているさま。

【一挙動(いちきょどう)】⇒ひとつの動作のこと。

【眼前(がんぜん)】⇒目の前。

【妥協(だきょう)】⇒歩み寄ること。譲ること。

【閉口(へいこう)】⇒いやになること。

【ほていさま】⇒七福神のひとり。

第五場面:進まぬ仕事と遊女の団体

 

朝に、夕に、富士を見ながら、陰欝な日を送つてゐた。~

【陰欝(いんうつ)】⇒陰気でうっとうしいさま。心がふさいで晴れ晴れしないさま。

【遊女(ゆうじょ)】⇒売春婦。売春する女のこと。

【開放(かいほう)】⇒制限をなくして、自由に出入りさせること。

【分乗(ぶんじょう)】⇒一団の人々が二つ以上の乗り物に分かれて乗ること。

【伝書鳩(でんしょばと)】⇒遠隔地からの通信に利用するドバトのこと。

【てんてに】⇒めいめいに。それぞれに。各自。

【絵葉書(えはがき)】⇒裏面に写真・絵などのある葉書。

【佇む(たたずむ)】⇒しばらく立ち止まっている。じっとその場所にいる。

【傲然(ごうぜん)】⇒おごり高ぶって尊大に振る舞うさま。

【大親分(おおおやぶん)】⇒やくざやばくち打ちなどのボス。

【滴々(てきてき)】⇒水などがしたたり落ちるさま。ぽたぽた。

【大股(おおまた)】⇒歩幅の広いこと。

【一頓挫(いちとんざ)】⇒順調に運んできた物事の勢いが、途中で急にくじけてしまうこと。

【助力(じょりょく)】⇒手助け。

【了つた(しまった)】⇒しまった。

【虫のいい(むしのいい)】⇒都合のよい。ずうずうしい。

【厳粛(げんしゅく)】⇒おごそかで、心が引き締まるさま。

【世帯を持つ(しょたいをもつ)】⇒結婚して家庭をつくる。

【往復(おうふく)】⇒手紙などのやり取り。

【縁談(えんだん)】⇒結婚の話。

【先方(せんぽう)】⇒相手方 。

【次第(しだい)】⇒今まで経過してきた状態。なりゆき。

【洗ひざらひ(あらいざらい)】⇒残したり隠したりせず、すべてを出すさま。何から何まで全部。残らず。

【単身(たんしん)】⇒ただ一人。単独。

【悉皆(しっかい)】⇒全部。

【首(くび)をかしげる】⇒疑問に思う。

【ことごとしい】⇒大げさである。ものものしい。

【当惑(とうわく)】⇒どうしてよいのかわからず、とまどうこと。

【呆然(ぼうぜん)】⇒気抜けしてぼんやりしているさま。張りつめていた気持ちが一時にゆるんで、ぼんやりすること。

【孝行(こうこう)】⇒親に対するのと同じように、人を大切に扱うこと。

【きざ】⇒言動などが気どっていて嫌な感じをもたせること。

【拍子抜け(ひょうしぬけ)】⇒予想よりも反応や手応えがないこと。

【やくざな口調(くちょう)】⇒低劣で粗暴な話し方。

【愚問(ぐもん)】⇒愚かな質問。

第六場面:富士だけを写真に撮る私

 

甲府から帰つて来ると、やはり、呼吸ができないくらゐに~

【交る交る(かわるがわる)】⇒順番に代わり合って。交代に。

【薪(まき)】⇒燃料にするために適当な大きさに切って乾燥させた木。

【一心に努める(いっしんにつとめる)】⇒ある一つのことに集中して行動する。

【落書(らくがき)】⇒書くべきでないところに文字や絵などをいたずら書きすること。

【バット】⇒ゴールデンバットという銘柄のタバコ。

【金剛石(こんごうせき) 】⇒ダイヤモンドのこと。

【唱歌(しょうか)】⇒明治初期から1941年までに作られた学校教育用の歌。

【頰杖(ほおづえ)】⇒肘 (ひじ)を突いて手のひらでほおを支えること。

【いまいましい】⇒非常に腹立たしく感じる。

【とげとげしい】⇒態度や言葉づかいにとげがある。つっけんどんである。

【報酬(ほうしゅう)】⇒労働や物の使用などに対して支払われる金銭や物品。

【とたん】⇒あることが行われた、その瞬間。そのすぐあと。

【冬木立(ふゆこだち)】⇒冬の落葉した木々。

【泣(な)きべそをかく】⇒今にも泣きそうな顔つきになること。

【にがにがしい】⇒非常に不愉快である。

【一隅(いちぐう)】⇒一方のすみ。かたすみ。

【紋附(もんつき)】⇒紋のついた礼装用の和服。紋服。

【裾模様(すそもよう)】⇒和服の模様づけの一種で、裾に置かれる模様。女性の礼装用に使われる。

【金襴(きんらん)】⇒織物の一種。綾地に金糸で文様を織り出す。

【角隠し(つのかくし)】⇒婚礼の際、和装の花嫁が用いるかぶり物。

【礼装(れいそう)】⇒礼服を着用した服装。

【あしらい】⇒応対すること。もてなし。

【ロマンチック】⇒現実を離れ、情緒的で甘美なさま。空想的。

【観賞(かんしょう)】⇒物を見て、その美しさや趣などを味わい楽しむこと。

【おむこさん】⇒夫となった男性を指す表現。

【賛意(さんい)】⇒賛成の気持ち・意志。

【年甲斐もない(としがいもない)】⇒年齢にふさわしくなく愚かである。

【好転(こうてん)】⇒状況がよい方へ向かうこと。

【感奮(かんぷん)】⇒心に感じてふるいたつこと。

【全容(ぜんよう)】⇒全体の姿・形。

【蕭条(しょうじょう)】⇒ひっそりともの寂しいさま。

【辛抱(しんぼう)】⇒つらいことや苦しいことをがまんすること。

【外套(がいとう)】⇒防寒などのため、衣服の上に着るゆったりした上着。

【タイピスト】⇒タイプライターを打って、文書を印字するのを職業とする人。パソコンのない時代、字を打つために使った機械をタイプライターと言う。

【知的(ちてき)】⇒知性の感じられるさま。

【へどもど】⇒どうしていいのかわからなくて、うろたえまごつくさま。

【明るい(あかるい)】⇒その物事・方面によく通じている。経験が豊富である。

【皆無(かいむ)】⇒全然ないこと。

【山賊(さんぞく)】⇒山の中を本拠地にして通行人を襲う盗賊。

【はいから】⇒ハイカラ。西洋風を気どること。流行を追ったり、目新しいものを好んだりすること。

【俤(おもかげ)】⇒あるものを思い起こさせる顔つき・ようす。

【器用(きよう)】⇒要領よく、いろいろな物事を処理すること。

【平静を装う(へいせいをよそおう)】⇒内心は動揺しているが、それを外面に出さないようにし、普段どおり落ち着いている振りをするさま。

【わななき】⇒体や手足がふるえること。

【罌粟(けし)】⇒ケシ科の越年草。

【現像(げんぞう)】⇒撮影したフィルム・乾板などを薬品で処理して、映像をあらわし出すこと。

【安宿(やすやど)】⇒宿泊料の安い宿屋。

【欄干(らんかん)】⇒階段などの縁に人が落ちるのを防ぎ、また装飾ともするために柵状に作り付けたもの。

【酸漿(ほおづき)】⇒ナス科の多年草。小さくて赤い可憐な花。

まとめ

 

以上、今回は『富嶽百景』に登場する言葉をわかりやすくまとめました。言葉の意味が分かれば、本作のあらすじや現代語訳なども理解しやすくなるはずです。ぜひ定期テストなどの対策にしてみてください。