「ほとぼりが冷める」という表現をご存知でしょうか?何か世間を賑わすニュースなどがあったときによく使われる言い方です。
この「ほとぼり」ですが、そもそも一体何を指しているのかといった疑問があります。また、冷めるまでの期間がどのくらいなのかといったこともあります。
そこで本記事では、「ほとぼりが冷める」の意味や語源、使い方、類語などを詳しく解説しました。
ほとぼりが冷めるの意味・期間
「ほとぼりが冷める」とは、「問題になっていたことが、時間と共に風化する」という意味です。
「ほとぼり」とは、簡単に言うと「余熱(残っている熱)」を表します。この余熱が冷めることから、何かの問題が薄れていく様子を表すということです。
例えば、芸能人の不倫のニュースなどは、月日が経つと人々の関心は薄れていきます。ずっと世間の関心が続くということはありません。
また、世間を賑わせた政治家の問題発言などもしばらくすると人々は次第に忘れていきます。
つまり、世の中で問題となっている関心事のほとんどが、時間が経てば自然と薄れていきます。この事を「ほとぼりが冷める」と言うわけです。
ほとぼりが冷める具体的な期間というのは特に定まっていません。仮にちょっとしたニュースや時事ネタなどであれば、人々の関心は二~三日もすれば薄れるでしょう。
ところが、世間を震撼させるような凶悪なニュースなどが報じられた場合は、ほとぼりが冷めるまでに相当な時間がかかるはずです。場合によっては半年以上、長ければ一年ということもあり得ます。
すなわち、人々の関心が薄れる期間は問題の大きさによっても上下するということです。問題の規模が大きければ大きいほど、冷めるまでの期間は長くなります。逆に、取るに足らないささいな問題であればあるほど、冷めるまでの期間は短くなります。
ほとぼりが冷めるの語源・漢字
「ほとぼり」は漢字だと、「熱り」と書きます。先述したように、元々この言葉は「余熱」を意味する言葉として使われていました。
念のため、「ほとぼり」を辞書で引いてみます。
ほとぼり【熱り/余=熱】
①さめきらずに残っている熱。余熱。「かまどに―が残る」
②高ぶった感情や興奮などのなごり。「いまだ―のさめやらぬ面持ち」
③事件などがおさまったのち、しばらく残っている世間の関心。「―がさめるまで謹慎する」
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「ほとぼり」には三つ意味があり、元は①の意味として「かまどにほとぼりが残る」のように使われていました。
ところが、次第にこの「余熱」のことを人々の感情や興奮などに例えて用いるようになりました。そして、さらに派生して「事件などに対して残っている世間の関心」という意味でも使われるようになったということです。
現在でも、熱がある時には「顔がほてっている」「顔がほてってきた」などのように言います。これは「ほてる」という言葉の由来が「熱り」であることの証拠だと言えます。
なお、「ほとぼり」という言葉がいつの時代に使われ出したかは現在の所分かっていません。ただ、日本書紀にはすでにその用例が確認されています。したがって、奈良時代頃にはすでにあった言葉なのではと推測されています。
はっきりと使われるようになったのは江戸時代からであり、江戸時代には「火の通り」と書き、「ほとおり」という言葉が登場しています。
「ほとおり」とは、火事が多かった時代に火事で余熱を残した状態であった通り(道)のことです。この「ほとおり」が濁り、「ほとぼり」となり現在の「余熱」を表す言葉になったと言われています。
ほとぼりが冷めるの類義語
「ほとぼりが冷める」は、次のような類義語で言い換えることができます。
- 落ち着く
- 忘れられる
- 熱気が収まる
- 関心が薄れる
- 一段落する
- 平静を取り戻す
- 元の状態に戻る
- 立ち直る
- 正常化する
- 始末がつく
- 終息する
- 鎮静化する
類義語は、何かの事態が収まったり元の状態に戻ったりするものとなります。人々の感情に焦点を当てた言葉であれば、「落ち着く・忘れられる・関心が薄れる」などが適しています。
ただ、「ほとぼりが冷める」は一度盛り上がった問題が熱が冷めるように薄れるという意味を持ちます。したがって、この中では、「熱」という言葉が入った「熱気が治まる」が最も近い表現だと言えます。
その他には、「終息する」「鎮静化する」などの語で言い換えることも可能です。
前者は「コロナウイルスが終息する」のように拡散したウイルスや病原菌などに対して使われます。対して、後者の方は「紛争が鎮静化する」のように人々の争いごとに対して使われます。
ほとぼりが冷めるの対義語
逆に、対義語としては次の言葉が挙げられます。
- ほとぼりが冷めない
- 落ち着かない
- 冷めきらない
- 関心が続く
- 熱気が治まらない
- 元の状態に戻らない
- 立ち直らない
- 鎮静化しない
- 終息しない
反対語の場合は基本的に類義語を否定した表現となります。後ろに、「~ない」を付けた言い方で、事態が治まらない様子を伝えます。この中では、「ほとぼりが冷めない」が最もシンプルな言い方でよく使われている表現です。
ほとぼりが冷めるの英語訳
「ほとぼりが冷める」は、英語だと次のように言います。
「the storm blow over(嵐が収まる)」
「things calm down(物事が落ち着く」
「storm」は「嵐」、「blow over」は「(風や嵐などが)吹きやむ・(悪い事態が)収まる」などの意味を持つ熟語です。両者を合わせることで、「嵐が収まる」⇒「ほとぼりが冷める」と訳すことができます。
また、「things」は「物事」、「calm down」は「落ち着く」という意味の熟語です。こちらも合わせることで、「物事が落ち着く」⇒「ほとぼりが冷める」と訳せます。
例文だと、それぞれ以下のような言い方です。
You should refrain from comment till the storm blows over.(ほとぼりが冷めるまで、あなたは発言を避けるべきだ。)
I’ll apologize to her when things calm down.(ほとぼりが冷めたら彼女に謝るつもりです。)
その他には、「it cools down(物事が落ち着く)」「the excitement cools down(興奮が収まる)」などの表現も可能です。
ほとぼりが冷めるの使い方・例文
最後に、「ほとぼりが冷める」の使い方を例文で紹介しておきます。
- スキャンダルを起こした彼女だが、最近テレビで見ないね。ほとぼりが冷めるまではしばらく自粛するのだろう。
- A大臣は今回の問題発言を反省しているらしい。ほとぼりが冷めるまでは謹慎するつもりのようだ。
- 君が不祥事を起こしてからまだ2週間しか経っていない。ほとぼりが冷めるまでは大人しくしておきなさい。
- 彼はしたたかでずる賢い性格だから、ほとぼりが冷める頃を見計らってしれっと復帰するに違いない。
- 彼女があそこまで怒りを表しているのは初めてみた。ほとぼりが冷めるまでは距離を置いた方がいい。
- 彼とは喧嘩別れになってしまいましたが、ほとぼりが冷める頃になったらまた連絡を取る予定です。
「ほとぼりが冷める」は、「世間の関心が薄れる」という意味で使うのが一般的です。ただ、場合によっては「怒りや興奮が収まる」という意味で使われる場合もあります。(例文5・例文6)
この意味の場合は、怒りや興奮によってお互いが喧嘩をしてしまったような時に使われます。特に、男女の恋愛関係などに対してよく用いられ「ほとぼりが冷めるまで待つ」などの言い方をします。
「ほとぼり」というのは、「高ぶった感情や興奮のなごり」という意味もあるため、このような使い方をすることもあるのです。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「ほとぼりが冷める」=問題になっていたことが、時間と共に風化する。
「語源・由来」=漢字で「熱り」と書くことから。「ほとぼり」は「余熱」を表す。
「類義語」=「落ち着く・忘れられる・熱気が収まる・関心が薄れる・鎮静化する」など。
「対義語」=「ほとぼりが冷めない・落ち着かない・冷めきらない・関心が続く」など。
「英語訳」=「the storm blow over」「things calm down」
「ほとぼり」は元は「ほとおり」と言い、「熱気」や「余熱」を表していました。ところが、次第にその意味が広がり、事件などに対する世間の関心や男女の恋愛関係における怒りなどにも使われるようになりました。語源を理解したからには、ぜひ正しい使い方をして頂ければと思います。