言語が見せる世界 テスト 解説 わかりやすく あらすじ 要約

『言語が見せる世界』は、哲学者である野矢茂樹による文章です。教科書・論理国語にも採用されています。

ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくい箇所も多いです。そこで今回は、『言語が見せる世界』のあらすじや要約、テスト問題などを解説しました。

『言語が見せる世界』のあらすじ

 

本文は、内容から6つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①街で行き交う人々を見るとき、一人一人の個性へ関心が向かなければ、一般的な相貌のもとに彼らを見ている。つまり、概念のレベルで彼らを見ていることになる。どの概念のもとに相貌を知覚するかは、その対象に対する知覚主体の関心の度合いにより異なる。

②概念を規定するものとしては、外延や内包によって内実を捉える「古典的概念観」と、プロトタイプ(典型例)を把握する認知意味論的な考え方がある。何を典型例とするかにより、概念内容は異なり、また同じ言葉を同じ外延に対して使っても、時代によってプロトタイプが異なるために、概念は変化する。

③古典的概念観のもとでは、属性は意味には関わってこない。だが、プロトタイプという考え方に従うならば、概念の内に典型的なさまざまな意味が入り込んでくることになる。だが、どのような事実でも概念の内に入り込むわけではない。どのような事実が概念に含まれるのかという問いは、「プロトタイプ」とは何なのかを問うことになる。

④プロトタイプとは、現実に存在するものではなく、概念的に構成された抽象的なものである。もっと簡単に言えば、鳥のプロトタイプとは現実に存在する鳥ではなく、我々の通念上の鳥なのだ。その通念を「典型的な物語」と呼ぶとすると、ある概念を理解するとは、その概念のもとに開ける典型的な物語を理解することだと言える。

⑤相貌とは、あるものをある概念のもとに知覚することである。よって、相貌を知覚するとは、ある概念のもとに開ける典型的な物語を理解することである。相貌とは、言語が我々に見せる世界なのだ。

⑥だが、現実は典型的な物語とは違い、際限なく豊かなディティールを持つ。また、現実のものごとは、典型から逸脱するような性質や振る舞いを示す。私はまず、言語が見せる相貌の世界に立ち、世界の実在性に突き動かされ、新たな物語へと進んでいく。

『言語が見せる世界』の要約&本文解説

 

200字要約相貌を知覚する見方には、外延や内包によって捉えていく「古典的概念観」と「プロトタイプ」と呼ばれる典型例を把握する概念理解がある。プロトタイプの通念を「典型的な物語」と呼ぶなら、「相貌を見る」とは、ある概念のもとに開ける典型的な物語を理解することである。だが、現実は際限なく豊かなディティールを持ち、しばしば典型な物語から逸脱している。典型的な物語の世界は、あくまでスタート地点にほからないのだ。(197文字)

本文を読む上で、まず「プロトタイプ」という言葉を理解することが重要となります。

「プロトタイプ」は、本文中だと「現在に存在するものではなく、いわば概念的に構成された抽象的なものである。」と書かれています。また、教科書の注釈だと「原型・基本型・標準的なもの」などと記されています。

例えば、「鳥」であれば「空を飛ぶ生き物」「羽を持つ生き物」「くちばしでエサを捕まえる生き物」などのような私たちが一般に持つ標準的なイメージがあるかと思います。

このような標準的なイメージのことを「プロトタイプ」と呼ぶのです。

そして筆者は、プロトタイプに関わる私たちが持つ一般的な考えを「典型的な物語」と呼び、ある概念を理解することは、その概念のもとに開ける典型的な物語を理解することなのだと主張しています。

どういうことか例を挙げましょう。例えば、「犬を散歩させている人がいる。」という文があったとします。

この場合、私たちは、ただ普通の人が普通の犬を普通に散歩させている普通の物語を思い描きます。この時に思い描く「犬」というのは、「四本足で、毛が生えていて、ワンと吠える生き物」のような、個性のない標準的な犬です。

ところが、「盲導犬と歩いている人がいる。」という文であれば、そこに「訓練を受けた白い犬が盲人の歩行のサポートを行っている」という一つの物語を読み込むことができます。

このように、「犬」という言葉で理解するときと、「盲導犬」という言葉で理解するときでは、私たちは頭の中に思い描くイメージが明らかに異なるのです。

これはまさに、本文のタイトルにもなっている「言語が(我々に)見せる世界」だと言えます。

ある物語が私たちの脳に影響を与えて、「プロトタイプ」だけの世界を見せるのか、それともディテール(細部)のしっかりした実在性のある世界を見せるのか、そのきっかけこそが「言語」だと筆者は考えているのです。

全体の構成としては、まず第一段落で「相貌を見る」ということについて読者に話題が提示されています。

次に、第二段落~第四段落で、「プロトタイプ」を重視する概念の捉え方について、「古典的概念観」と比較しながら考察がされています。

そして、第五段落で「相貌を見るとは何か」という問題について、筆者の結論が述べられています。最後の第六段落は、第五段落で述べた結論に対する説明がされた上で締めくくられています。

『言語が見せる世界』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

①質素なフクソウ

②物事をハアクする。

キョクタンな考え方。

④無駄をハイジョする。

チンプな映画をみる。

⑥任務をイツダツする行為。

解答①服装 ②把握 ③極端 ④排除 ⑤陳腐 ⑥逸脱
問題2『私は彼らをなんらかの一般的な相貌のもとに見ている。』とあるが、「なんらかの一般的な相貌のもと」と同じ意味の表現を本文中から6文字で抜き出しなさい。
解答概念のレベル
問題3『こうした考え方は、もう一つの非常に重要な帰結を持っている。』とあるが、ここでの「考え方」とはどのような考え方を意味するか?
解答例ある概念を持っていることの核心をその概念のプロトタイプを把握していることに見るような、プロトタイプを重視する考え方。
問題4『我々はそこに物語を見ている。』とあるが、どういうことか?
解答例人が相貌を知覚するときは、言葉を用いて語り出される典型的な物語をそこにこめて見ているということ。
問題5『私が「実在性」ということで~』とあるが、ここでの「実在性」とは何を意味するか?
解答例言葉によって概念化することができないような、複雑で多様な現実のありよう。
問題6『世界を語り尽くすことはできない。』とあるが、この一文はどういう意味か?
解答例現実は常に、典型的な物語をはみ出すものであり、概念が開く典型的な物語は、無限のディテールも、意表を突く驚きも欠如しているため、現実を言語で表そうとすると、必ずそこからこぼれ落ちるものが出てくるということ。

まとめ

 

今回は、『言語が見せる世界』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。