『ファッションの現象学』は、教科書・論理国語で学習する文章です。そのため、定期テストなどにも出題されています。
ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、『ファッションの現象学』のあらすじや要約、テスト問題などを分かりやすく解説しました。
『ファッションの現象学』のあらすじ
①ファッション(流行)とは、スタイルの共時的模倣である。帰属しているグループの仲間の模倣をし、他のグループや過去のスタイルから自分たちを差異化する。さらに、ファッションは帰属しているグループ内で自分なりの個性を示す差異を作る。その差異が他者から模倣されると、新しいスタイルを創出したと評価される。
②ファッションは、差異のための差異を生み出すという特徴があり、過去のファッションに死を与える。その背後には、根拠はなく、必然性もない。この事が、死と虚無を予感させるが、死と虚無から目をそらせたいがために、人はファッションを軽薄なものとして遠ざけたいと考えるようになる。
③ファッションとは、深みの拒否としての表面であり、現在のものを過去のものにし、何かに終焉をもたらす。それは生と死の素早い交代を感じさせるものである。ファッションは、変化のための変化を志向し、不変不朽の価値や目的を否定する。さらに、世界そのものが無根拠であることを私たちに理解させる。
④ファッションは、身体的には変身であり、自己のリメイクである。ファッションは、自分を取り巻く人間的・社会的関係を変え、ひとつの固定的な役割から自己を解放する。なぜファッションによって変身を表現するかというと、新しい人間関係のなかに生きる新しい自分を創出したいという願望があるからだ。
『ファッションの現象学』の要約&本文解説
本文は、行空きにより4つの段落から構成されています。まず、第一段落では「ファッションとは何か」という定義が筆者の考えにより述べられています。
筆者は、ファッションとは「スタイルの共時的模倣」であり、「両価的」なものであると述べています。
例えば、ファッションに興味のある人は、同じ時代に流行っているスタイルをそろってまねします。また、彼らは帰属しているグループの仲間への模倣を目指しますが、同時にグループ内で全く同じ真似をするわけではなく、微妙に自分だけの個性を示したりします。
このように、筆者は「ファッション」=「共時的模倣」「両価的」なものだと捉えているわけです。
「共時的」とは「物事を同時代の横の関係で見ること(同時的)」、「模倣」は「まねること」、「両価的」とは「一つの事に対して逆の感情を同時に持つこと」という意味です。
次の第二段落では、「なぜファッションは軽薄にみられるのか?」という理由の部分が説明されています。
筆者は、それは、ファッションが死と虚無を予感させるからだと分析しています。
ファッションは常に新しいものが次々と生み出されるため、すでに流行ったものは古いと判断されて、次々と捨てられる(死んでいくこと)になります。
また、捨てられるものに理由などはなく、目的や価値、意味なども一切ないため、そこには一種の虚しさのようなものがあります。
こういった死と虚無から目をそらさせたいために、人々はファッションを軽薄なものとして遠ざけているのではと筆者は考えているのです。
第三段落では、ファッションが生と死を感じさせること、さらには世界を否定し、世界そのものが無根拠であることを理解させるものであることが説明されています。
ここでは、第二段落の説明を受けて、ファッションは意味も目的もなく、不変不朽の価値を否定するものだということが改めて述べられています。
最後の第四段落では、今までの内容とは異なり、個人の身体とファッションの関係が説明されています。
筆者は最終的に、「ファッション」とは、自分を取り巻く人間的・社会的関係を変えるためのものであり、新しい人間関係のなかに生きる新しい自分を創出したいという願望の表れであると結論付けています。
人が新しい服を着たり、新しい髪形にしたりするのは、現在の自分からの「逸脱」です。そして、新しい形態の身体を獲得することで、人は自分の混ざりたい集団や人間関係になじみ、新しい自分になることができます。
ファッションの根底には、このような「新しい人間関係の中に新しい自分を作り出したい」という人間の変身願望があると筆者は考えているわけです。
『ファッションの現象学』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①命令にフクジュウする。
②会場にチョウシュウが集まる。
③相手にケイハクな印象を与える。
④このユウギは簡単で覚えやすい。
⑤貧困からカイホウされる。
まとめ
今回は、『ファッションの現象学』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。なお、本文中の重要語句については以下の記事でまとめています。