『デジタル社会』は、教科書・現代の国語に収録されている文章です。そのため、定期テストなどにも出題されています。
ただ、本文の内容が分かりにくいと感じる人も多いと思われます。そこで今回は、『デジタル社会』のあらすじや要約、語句の意味などを簡単に解説しました。
『デジタル社会』のあらすじ
デジタル社会の性格を根底から規定しているのは、情報のデジタル化、つまり情報の「脱」物質化である。従来の情報は、石、紙に刻むなどして物質的な入れ物を必要としていた。だが、マルチ・メディア技術、すなわち情報の電子テキスト化は、すべてを0と1のデジタル情報に還元するようになった。
情報がデジタル化されるということは、あらゆる情報が破棄されずに蓄積されるということでもある。これを別の視点から捉えるなら、今まで経験したことがないほど強力な監視社会が成立するということでもある。現代の監視社会におけるもっとも重要な変化は、現在形の監視から、蓄積された情報に遡る監視が可能になった点である。私のあらゆる情報について、何らかの意図でそれらを寄せ集めれば、私についての驚くほど膨大で詳細な情報が瞬時に組み上がるのである。
『デジタル社会』の要約&本文解説
私たちの社会は、情報のデジタル化により、0と1のデジタル情報に還元するような仕組みになりました。例えば、文字や写真、音楽などはすべてデジタルの情報として保存できるようになっています。
従来の情報は、石や巻物、紙に刻むなどして物質的な入れ物を必要としていましたが、今では容れ物すら不要になったということです。
ところが、情報がデジタル化された一方で、今の社会は強力な監視社会になったとも筆者は述べています。
例えば、何気なくWebサイトを閲覧するだけで、訪問者の個人情報をサイト側が勝手に管理していたということが行われています。また、悪意ある市民ハッカーが権力の中枢的な情報にアクセスするようなことも日常的に行われています。
そして、もっとも重要な変化は、現在形の監視から、蓄積された情報に遡る監視が可能になった点だと筆者は述べています。つまり、私たちのあらゆる行動が、現在だけでなく過去の分まですべて監視することができるようになったということです。
今までの監視は現在形でしたが、これからは蓄積された過去の情報までさかのぼり、いつどんな時でも膨大で詳細な情報を瞬時に集められるような社会になった、ということが最終的な筆者の結論となります。
『デジタル社会』の意味調べノート
【デジタル】⇒連続するものを段階的に区切り、数字や記号で表現すること。
【根底(こんてい)】⇒物事のおおもととなるところ。根本。
【規定(きてい)】⇒定めること。
【解放(かいほう)】⇒束縛を解いて自由にすること。
【従来(じゅうらい)】⇒これまで。以前から今まで。
【羊皮紙(ようひし)】⇒羊・ヤギなどの皮をなめして、滑石で磨いて作った筆写用材料。
【必然的(ひつぜんてき)】⇒必ずそうなるさま。
【差異(さい)】⇒違い。差。
【還元(かんげん)】⇒元に戻すこと。
【本質的(ほんしつてき)】⇒物事の本質にかかわるさま。根本的。
【無頓着(むとんちゃく)】⇒少しも気にかけないこと。
【受容(じゅよう)】⇒受け入れて、とりこむこと。
【総量(そうりょう)】⇒全体の分量。
【形態(けいたい)】⇒かたちやありさま。
【~たらざるをえない】⇒~になることを避けられなかった。
【集積(しゅうせき)】⇒集めて積み上げること。
【過度(かど)】⇒程度が過ぎること。
【有用性(ゆうようせい)】⇒何らかの役に立つ性質。
【熟練(じゅくれん)】⇒よく慣れていて、上手なこと。
【抽出(ちゅうしゅつ)】⇒取り出すこと。
【淘汰(とうた)】⇒不必要なもの、不適当なものを除き去ること。
【破棄(はき)】⇒破り捨てること。
【監視社会(かんししゃかい)】⇒一定の権力を持つ個人や組織により、個人の行動が常に監視されている社会。
【冒頭(ぼうとう)】⇒物事のはじめの部分。
【閲覧(えつらん)】⇒調べながら読むこと。
【匿名(とくめい)】⇒自分の名前を隠して知らせないこと。
【浸透(しんとう)】⇒思想・風潮・雰囲気などが次第に広い範囲に行きわたること。
【言及(げんきゅう)】⇒話がある事柄まで及ぶこと。
【囚人(しゅうじん)】⇒捕まえられて獄などにつながれている人。
【一望(いちぼう)】⇒広い景色などを一目で見渡すこと。
【看守(かんしゅ)】⇒刑務所などで、囚人の監督・警備などに従事する者。
【従順(じゅうじゅん)】⇒すなおで人に逆らわないこと。おとなしくて人の言うことをよく聞くこと。
【変容(へんよう)】⇒姿や形が変わること。
【象徴(しょうちょう)】⇒形のない抽象的なものを、形のある具体的なもので表すこと。
【夢想(むそう)】⇒空想すること。
【終焉(しゅうえん)】⇒物事が終わること。
【ポスト】⇒~のあと。~の次。
【中枢(ちゅうすう)】⇒中心となる大切なところ。重要な部分。
【やすやすと】⇒簡単に。
【無垢(むく)】⇒けがれがなく純真なこと。うぶなこと。
【遡る(さかのぼる)】⇒物事の過去や根本にたちかえる。
【ここかしこ】⇒あちこち。
【堆積(たいせき)】⇒積み重ねること。
【遍在(へんざい)】⇒広くあちこちにゆきわたって存在すること。
【沈殿(ちんでん)】⇒沈んでたまること。
【膨大(ぼうだい)】⇒きわめて数量の多いさま。
『デジタル社会』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①人質をカイホウする。
②利益をカンゲンする。
③ジュクレンした技術。
④カンシの目が光る。
⑤土砂がタイセキする。
次の内、本文の内容を表したものとして適切でないものを選びなさい。
(ア)情報のデジタル化、つまり情報の「脱」物質化により、情報は歴史上初めてその質料性から解放されることになった。
(イ)情報発信の総量は、メディア形態の技術的制約によって決定され、マスメディアあるいは書物文化における著者・情報発信者は、構造上少数たらざるを得なかった。
(ウ)『監獄の誕生』のパノプティコンは、囚人を一望できるように設計された円形の監獄であり、看守は施設の中央塔から囚人を常に見ることができる。
(エ)社会学者ボガードは、現代のデジタル情報技術は、観察者と被観察者の区分を無効にし、<見えない監視者>の位置に特権的に立つ者も、常に監視される側にまわりうる「超パノプティコン」の時代だとした。
まとめ
以上、今回は『デジタル社会』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。