『コミュニティ空間としての都市』は、広井良典による評論文です。教科書・論理国語にも掲載されています。
ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくい箇所もあります。そこで今回は、『コミュニティ空間としての都市』のあらすじや要約、テスト問題などを解説しました。
『コミュニティ空間としての都市』のあらすじ
①高齢化と一体になった人口減少社会とは、「一人暮らし」世帯が大幅に増える時代でもある。最近の調査だと、一人暮らしの高齢者が男女とも急増しており、今後もさらに増加は顕著になっていくだろう。
②「社会的孤立度」の国際比較調査では、先進諸国の中で日本が最も「社会的孤立度」が高い国になっている。調査結果には、個人主義的な傾向の強い国の方が社会的孤立度が低く、家族主義的な傾向の強い国の方が社会的孤立度が高いという傾向が示された。一種の農村型コミュニティーを築いた戦後の日本社会は、機能不全に陥っており、個人と個人がゆるくつながるような「都市型コミュニティー」の確立が課題となっている。
③現在の日本の都市や地域においては、「居場所」づくりが社会全体の課題となっている。これは団塊世代の高齢者だけではなく、子供や若者にとっても同様である。現在の日本は、社会全体として新たな「居場所」を模索している状態であり、「居場所」という視点を意識したまちづくりや都市、地域政策が重要になっている。
④現在始まろうとしている「地域密着人口」の増加という構造変化は、未知なる新事態への突入というよりは、”なつかしい未来”への移行と言える。そこで問われているのは、高度成長期の日本社会のありようからの、ゆるやかな転換である。
『コミュニティ空間としての都市』の要約&本文解説
本文は、その内容から四つの段落に分けることができます
まず第一段落では、最近の日本は一人暮らしの高齢者が急増しており、今後もその数はさらに顕著になるだろうということが述べられています。ここでは、筆者による問題提起がされているのがポイントです。
次の第二段落では、第一段落で述べた問題が具体的なデータや調査によって示されています。現在の日本は、先進諸国の中で最も「社会的孤立度」が高い国となっており、一種の「農村型コミュニティ」を築いた戦後の日本社会は、もはや機能不全に陥っているということが問題視されています。
そのため、今後の日本社会にとっては、個人と個人がゆるくつながるような「都市型コミュニティ」の確立が課題であると筆者は述べています。
第三段落では、冒頭の問題提起に対して筆者の解決案が示されています。
現在の日本は社会全体として新たな「居場所」を模索している状態であるため、筆者は、「居場所」という視点を意識したまちづくりや都市・地域政策が重要になっていると述べています。
第四段落では、筆者の最終的な考えがまとめられています。
筆者は、現在始まろうとしている「地域密着人口」の増加という構造変化は、「カイシャ人間」中心の時代から「地域人間」中心の時代への移行であり、そこで問われているのは、高度成長期の日本社会のありようからの、ゆるゆかな転換であると結論付けています。
全体を通した筆者の主張は、最後の第四段落に集約されていると言えます。
『コミュニティ空間としての都市』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①増加がケンチョになる。
②コドクな生活をおくる。
③危険をカイヒする。
④ショウギを指す。
⑤物質をユウゴウさせる。
次の内、本文の内容を表したものとして適切でないものを選びなさい。
(ア)ミシガン大学等の調査では、先進諸国の中で日本は最も「社会的孤立度」が高い国になっている。
(イ)集団の中に個人が埋没しがちな関係性である「農村型コミュニティ」の確立が、日本社会にとっての大きな課題となっている。
(ウ)高度成長期以降の日本では、とくに男性にとっての最大の居場所は、ほかでもなく「カイシャ」であった。
(エ)「地域密着人口」の増加という構造変化は、未知なる新事態への突入というよりは、”なつかしい未来”への移行と言える。
まとめ
今回は、『コミュニティ空間としての都市』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。なお、本文中の重要語句については以下の記事でまとめています。