コミュニケーションの文化 平田オリザ 要約 解説 意味調べノート

『コミュニケーションの文化』は、平田オリザによって書かれた文章です。教科書・論理国語にも掲載されています。

ただ、実際に文章を読むと筆者の主張が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、本文のあらすじや要約、意味調べなどを解説しました。

『コミュニケーションの文化』のあらすじ

 

本文は、6つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①ワークショップという名の演劇講座を始めて、二十年近くになる。高校の演劇部のほか、大学、高齢者、障害者、海外の大学などでも教えている。

②講座の一つに、「列車の中で他人に声をかける」というスキットがある。これを高校生にやらせると、うまく発話できない。どうしてこれが難しいのかと聞くと、「私たちは、初めて会った人と話したことがないから。」と答えが返ってきた。

③社会人向けの講座も多く持つようになると、社会人も他人に話しかけるのが苦手な人が多いことに気付いた。日本国内でも、列車などで乗り合わせた人に話しかける人は一割程度である。半分以上が「自分からは話しかけない」人々で、残りの二、三割が「場合による」と答えた。一般的に言えることは、やはり「相手による」という点である。

④同じ質問をすると、オーストラリアやアメリカでは、「話しかける」が五割を超える。イギリスでは、約三割の学生が「話しかける」に手をあげた。ただし、オーストラリアの人でもイギリスの上流階級の教育を受けると、むやみに他人に話しかけなくなるという。

⑤エレベーターで他人と乗り合わせた場合、アメリカでは無言でいるということはまずない。だが、たいていの日本人は無言で階数の表示を見上げる。これは文化や風土の違いなので、良し悪しでも優劣でもない。

⑥それぞれの国や民族には、それぞれのコミュニケーションの文化があり、それぞれが尊く、美点がある。と同時に、当然、他国の文化にも学ぶべき点がある。私たちが培ってきたコミュニケーションの文化の何を残し、何を変えていかざるを得ないかを、真剣に考える必要がある。国際化の問題も、その切り分けの一つとして考えたほうがいい。今後、国際社会に出て行かなければならない日本の若者は、日本人の奥ゆかしく美しいと感じるコミュニケーションが、国際社会においては少数派だという認識は必要だ。

『コミュニケーションの文化』の要約&本文解説

 

100字要約日本では、初めて会った人に話しかける人の数は一割程度だが、アメリカなどでは五割を超える。各国には異なるコミュニケーション文化があり、日本人も国際化の中で変えざるを得ないところを真剣に考える必要がある。(100文字)

この文章で筆者が伝えたいことは、「私たちは日本独自のコミュニケーション文化を大切にしながらも、国際社会で生きるためには他国の文化も学び、柔軟に対応する必要がある」という点です。

筆者は20年近く演劇のワークショップを続ける中で、高校生や社会人に「列車で知らない人に声をかける」練習をさせたとき、多くの人がうまくできないことに気付きました。

その理由は、日本人が普段から初対面の人と自然に会話する機会をほとんど持っていないからです。実際の調査でも、日本では「他人に話しかける」と答える人はわずか一割程度で、大多数が「自分からは話しかけない」と答えています。

一方で、オーストラリアやアメリカでは半数以上が「話しかける」と答えており、日常の中で初対面の人と会話することが普通になっています。エレベーターの例でも、日本人は沈黙して階数表示を見上げますが、アメリカでは無言でいることはほとんどなく、何かしら会話が交わされるそうです。

ここから分かるのは、国ごとに人との距離の取り方や会話の仕方が大きく異なるということです。そして、それは優劣ではなく文化の違いに過ぎません。

筆者は最後に、こうした違いを踏まえて「日本の若者は、自分たちの文化が国際社会では少数派である」という認識を持つべきだと述べています。

日本的な「奥ゆかしさ」や「相手に踏み込みすぎない配慮」は美点として残すべきですが、国際的な場面では沈黙や消極性が「不親切」や「意思疎通の不足」と受け取られる危険もあります。

そのため、何を守り、何を変えるのかを自覚的に考えることが求められているのです。つまり筆者は、日本の文化を否定するのではなく、「国際化に対応するための新しいバランス」を模索する姿勢を若者に促しているのです。

『コミュニケーションの文化』の意味調べノート

 

【変哲もない(へんてつもない)】⇒特に変わった点がなく、平凡である。

【存外(ぞんがい)】⇒思ったよりも。意外に。

【尋問(じんもん)】⇒問いただして事実を明らかにしようとすること。

【おしなべて】⇒全体的に。概して。

【規範(きはん)】⇒行動や判断の基準となるもの。

【志向(しこう)】⇒ある方向や目標を目指して心が向かうこと。

【子弟(してい)】⇒自分の子どもや弟。または弟子や後進の人々。

【むやみに】⇒深く考えずに行動するさま。やたらに。

【偏見(へんけん)】⇒十分な根拠がないのにかたよった見方をすること。

【かの地(かのち)】⇒あの場所。その土地。

【開拓(かいたく)】⇒新しい土地や分野を切り開くこと。

【風土(ふうど)】⇒その土地の気候や自然、またそれによって形づくられた生活文化。

【翻って(ひるがえって)】⇒反対に。逆に。

【野暮(やぼ)】⇒洗練されず、気がきかないこと。人情の機微に通じないこと。

【優劣(ゆうれつ)】⇒すぐれていることと劣っていること。

【培う(つちかう)】⇒養い育てる。努力して身につける。

『コミュニケーションの文化』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

ナットクできる理由を聞く。

ソウサク料理を楽しんだ。

フユウ層向けの住宅が多い。

④新しい市場をカイタクする。

⑤状況をハアクして行動した。

解答①納得 ②創作 ③富裕 ④開拓 ⑤把握
問題2「これを高校生などにやらせると存外うまくいかない」とあるが、なぜか?本文中からそのまま抜き出しなさい。
解答初めて会った人と話したことがないから。
問題3「しかしそういうマナーがあるのも事実のようだ。」とあるが、「そういうマナー」とはどういうマナーか?
解答人から紹介されない限り、むやみに他人と話してはならないというマナー。
問題4「多民族国家の宿命」とは、どういうことか?
解答さまざまな民族が暮らす国では、自分が相手に対して悪意を持っていないことを、早い段階で声や形にして表さなければいけないということ。
問題5

次のうち、本文の内容を最も正しく表しているものを選びなさい。

(ア)日本人は日常的に初対面の人に話しかける習慣があるため、文化の違いを意識する必要はない。

(イ)日本人は列車やエレベーターで他人に話しかけることが少ないが、それは文化の違いであり優劣ではない。

(ウ)欧米の人々は日本人と同じように、初対面の相手にはほとんど話しかけない傾向がある。

(エ)国際社会では日本人のコミュニケーション文化が優れているため、他国の文化を学ぶ必要はない。

解答(イ)

まとめ

 

今回は、『コミュニケーションの文化』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。